FOXでの20年間でターニングポイントになった作品、そして今後について思うこと。

平山さんは現在、20世紀フォックスの営業本部と、FOXサーチライトのシニアマネージャーという肩書きになっているんですが、そこに至るまでのお話を今回は訊きたいと思います。

職歴でいうと映画の仕事しかしてないんです。

本当は大学に残ろうと思っていたんですけど……。

そうだ！平山さんは、確か京都大学で心理学を専攻していて、大学院まで行こうと思っていたって言っていましたよね。

そう思っていたんですけど、決定的に合わないなと思って諦めたんです。

すごく頭のいい方なんですよね。

何が合わなかったんですか？

心理学でも、僕がやっていたのは人を治す方なんですね。

臨床心理学っていうのをやっていてメンタル面で問題を抱えているたちをどうやって癒すか、カウンセリングしていくってことをやりたかったんですが、自分には決定的に資質がないって気がついちゃったんです。

そういう仕事に向いているのは、どういう人だと思ったんですか？

人の悩み苦しみに寄り添ってあげられる人じゃないですかね？

だけどそれって物凄く献身的な力がいるじゃないですか。

どこかで自分を捨てなきゃいけないし、それは自分にはできないなと思ったんですよ。

自分は他にやりたいことがあったんでしょうね。

そのやりたいことが、映画だったってことですか？

いや、それはたまたまです。

エンターテインメントが基本的に好きなんですよ。

だから就職しなきゃいけないという時に、はたと気がついたんです。

大学時代に何に一番時間を割いていたかというと、けっこう映画を観ていたなと思ったんです。

京都にも東京のフィルムセンターみたいなところがあって、古い日本映画のストックを上映しているのを暇があるといつも観に行っていたんです。

そういう記憶もあって、なぜかマスコミと映画会社は受けたんですよ。

それで拾ってくれたのが映画会社だったわけです。

それで松竹に受かったわけですね。

最初はどんな仕事をしたんですか。

スタートは映画興行部です。

関西の松竹直営館の劇場に1年ほど勤務していました。

1年経ったら東京の方へ転勤しないかって話がきて、入社した翌年のゴールデンウィークに本社の映画興行部で番組編成をするようになるんです。

それがたぶん、僕のその後の全ての基礎になっていますね。

番組編成って何をやるんですか？

洋画のセレクト、ブッキングです。

だから全ての洋画の配給会社に行って、自分のところの番組をどうやるか決めるんです。

その頃は、どういう洋画がありました？

僕が入ってすぐの時は、ピカデリー1の系列は『アポロ13』とかUIPの作品が多かったですね。

ピカデリー2は、ハーヴェイ・ワインスタインらが設立したミラマックスの作品を、松竹富士という松竹系の配給会社がよく扱っていて。

シネコンが出来始めて、映画界も変わり始めた時期ですね。

それで1997年にブエナビスタが、これまで東宝東和と松竹富士に預けていた日本の配給を自社で始めることになったんです。

営業も全部やるということで、そのタイミングでブエナビスタに声をかけてもらったんですよ。

こっちで営業やらないかって？

ええ、その時に悩んだんですけど、悩むんだったら新しい方をやった方がいいだろうと思っちゃうタイプなので行ったわけです。

結果的には1年しかいなかったんですが。

えっ、どうしてですか？

嫌になったとかじゃないですよ（笑）。

なぜだか20世紀フォックスから声がかかっちゃったわけですよ。

というのも、僕がブエナビスタに行った翌年にフォックスも、自社で全国配給する決断をしたわけです。

それで人を探していたんです。

優秀だったってことですよ。

いや、年齢の問題もあったと思うんです。

当時はまだ20代だったから声をかけやすかったんだと思いますよ。

今は全然かかりません（笑）。

それはわかりませんよ〜（笑）。

だけど、そういう時期に居合わせたから今があるんでしょうね。

フォックスのすごいラインナップは、やっぱり魅力だったわけですよ。

なおかつ宣伝部には古澤（利夫）さんがいたから、古澤さんの仕事が見られるっていうのもありました。

いい作品がいっぱいありましたもんね。

フォックスに入ってから何年ですか？

もう20年です。

だからあっという間といえば、あっという間ですけど。