Jan 24, 2017 interview

第2回:『沈黙 サイレンス』の予告編を見ただけで涙が出るという声がいっぱいあって。

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池ノ辺

最初の試写を見たときの感想は?

加茂

俺はもう、殉教してもいいと思ったね(笑)。

すごい作品をつかんじゃったなと。

間違いなく、僕もいい年なんで自分の映画人生の集大成となる作品です。

栗原

なおかつ、映画史に残る作品となっていて、おそらく、後世にわたって、ずっと残っていく1本だと思います。

スコセッシの映画としては、『タクシードライバー』や『グッド・フェローズ』みたいな今までのギャング映画とはタイプは違うかもしれないけど、僕は本当に傑作だと思う。

これだけ多くの日本人のキャストが出ていて、日本人から見ても、全然変な日本に仕上がっていない。

原作は50年前に書かれた遠藤周作さんの「沈黙」。

舞台は500年前の江戸初期。

それを、巨匠スコセッシの手によりハリウッドで映画化され、今世界に発信されようとしている。

そんな瞬間、なかなかないですよ。

やっぱり日本人にとって、特別な作品になるし、なって欲しいし、ならなければいけない。

加茂

僕も本当にそう思う。日本人にとっては特別な作品ですね。キリスト禁教や隠れキリスタンや踏み絵については日本史の教科書にも出ているし、遠藤周作の本も昔から読まれた大ベストセラーですし、そのとき、弱き者たちに対して、人や神はどう救うのか、すごく突きつけてくる。ただ、エンタメ作品ではないので好きか嫌いの両極になるかと思った。

池ノ辺

でも、あえてスコセッシ監督は表現したわけですよね。

加茂

よいしょするわけじゃないんだけど、僕はバカ・ザ・バッカさんが作ってくれた日本版予告編が素晴らしいと思ったね。

ぐっときました。

宣伝にあたって、実は社内では、喧々諤々あったんです。

KADOKAWAは邦画の製作も宣伝もノウハウがあるから、情報量で勝負するやり方もよくわかっているけど、『沈黙‐サイレンス‐』に限っては、題材が題材だから、ただ露出が多いというコマーシャルな方向ではなかなか伝わらない。

でも、大勢の人に見ていただきたいから、宣伝展開も大きくはやっていかなければいけない。

そんなとき、この日本版予告編をみたら、ガチで勝負していて、変に媚びたり、装飾したコマーシャルなものを作っていなかった。それが、結局すごくよかったな。

社内の空気も一変しました。

池ノ辺さん、アザース!

栗原

僕もよいしょするつもりはないですけど(笑)、ものすごくいい予告編ですよ。

ツイッターを見ていたら、予告編を見ただけで涙が出るという声がいっぱいあって。

「映画館で予告編はながら見で見ているんだけど、『沈黙 サイレンス』の時だけは、観客が静まり返って食い入るように見ている」と書かれていたものもありました。

池ノ辺

それは嬉しいですね。

加茂

いや、ほんと、素晴らしかった。

まあ、僕はオフライン見たときに、「うわ、これすごいな」と思ったけどね(笑)。

最後に遠藤周作記念館にある有名な遠藤先生の言葉を入れれば100%だねと。

栗原

作品の完成が遅れて、宣伝期間が本当に短くなったんですけど、あの予告編で、一気に巻くし返しています。

池ノ辺

宣伝の追い込みですね。

加茂

お陰様で、宣伝の追い込みが関係しているのか、原作本がここにきて、めちゃくちゃ売れてきたんですよ。

池ノ辺

おお、予習する人が多いのかしら?

加茂

原作はKADOKAWAじゃなく、新潮社さんなんですけど、この年末年始で、重版が何回かあって、先日さらに4万部の重版が決まり累計200万部を突破したんです。

これって有名な角川映画のコピー「読んでから見るか、見てから読むか」をまさしく実践しています!(笑)

栗原

50年前の原作ですよ。

池ノ辺

わあ、すごい!

この勢いがこれからの興行成績に、つながってるんですね。

(文:金原由佳 / 写真:岡本英理)


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『沈黙 サイレンス』

アカデミー賞受賞監督のマーティン・スコセッシ監督が「どうしても自分の手で映画化したい」と願って28年、遂に遠藤周作の小説「沈黙」を映画化。江戸初期の日本を舞台に、キリシタン弾圧とイエズス会宣教師たちへの迫害通して、人間にとって大切なもの、そして人間の弱さとは何かを描き出したヒューマンドラマ。キリシタン弾圧を推し進める井上筑後守を演じたイッセー尾形さんが、LA映画批評家協会賞の助演男優賞の次点に選ばれた。主人公ロドリゴ役を「アメイジング・スパイダーマン」のアンドリュー・ガーフィールドが演じた。そのほかキチジロー役の窪塚洋介をはじめ、浅野忠信、塚本晋也、小松菜奈ら日本人キャストが出演。

監督:マーティン・スコセッシ 脚本:ジェイ・コックス、マーティン・スコセッシ 出演:アンドリュー・ガーフィールド、アダム・ドライバー、浅野忠信、窪塚洋介、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、笈田ヨシ ほか

全国公開中

http://chinmoku.jp/

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PROFILE

■加茂克也(かも・かつや)

株式会社KADOKAWA 映像事業局 邦画・洋画ディビジョン マネージャー 1959年生まれ。大学在学中、サッカー選手契約(読売クラブ1969 現東京ヴェルディ)戦力外通告後、ワーナーランバート、ネスレジャパンを経て2002年パラマウント ホーム エンタテインメントに入社。 2007年角川エンタテイメントに入社後、角川映画、角川書店を経て現在に至る。

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、『ボディーガード』『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ』『マディソン郡の橋』『トップガン』『羊たちの沈黙』『博士と彼女のセオリー』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ノマドランド』『ザ・メニュー』『哀れなるものたち』ほか1100本以上。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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