──ウィンリィを演じる上で大切にしていたことがあれば教えてください。
最初に台本を読んだときも感じたことなのですが、ハガレンって決して明るくてハッピーだけのお話ではないじゃないですか。もちろんコメディっぽいシーンはありますけど、基本的にはエド&アル兄弟の抱えている試練やバックボーンはシリアスなダーク・ファンタジー寄りの作品ですし。だからこそ、ウィンリィの役割というのはこの兄弟を明るく支えること、いつも笑顔でいてみんなを照らす存在になることかな、と。原作を読んでいたときも、私自身ウィンリィの明るさに救われた経験もあったので、今作での私の役目もそこかな、と。思い入れのあるキャラクターだけに、ウィンリィのことは私が一番わかっているという自負もあったので、原作のイメージを変えず、でも実在の人間が演じるので不自然にならないバランスには気をつけていたつもりです。
──イメージは壊したくないけど、リアリティも必要、という絶妙なバランスが求められていましたもんね。
そこはきっと、山田さんもすごく気を使われていた部分だと思います。でも山田さんも原作ファンなので、お互いの中にエドとウィンリィに対するイメージが出来上がっているから、二人でお芝居をするときもいかにあの空気感を出すのか、という感じで進んでいったイメージです。特に話し合いなどはせず、テンポ感や会話の中の空気は自然と阿吽の呼吸が出来ていたのではないかな、と。
──そうですよね、きっとあの衣装を身につけてロケ地に立ったら自然とウィンリィやエドに入り込めそうですもんね。
そういう力をお借りできたことも大きいですけど、やっぱり山田さんも私もハガレンが大大大好きなので(笑)。お互いの中に共通認識があったことが大きかったのかな、と勝手に思っているんですけどね。スタッフさんもハガレンファンの方が多くて、原作への愛を端々から感じる現場でした。
“真理の扉”の描き方には良い意味で驚きを隠せませんでした
──大泉洋さん始め、錚々たるメンバーがハガレンのキャラクターを演じていますが、映画版で特に好きなキャラはいますか?
大泉さん演じるタッカーも、國村隼さんのドクターマルコーも、松雪泰子さんや本郷奏多くん演じるホムンクルスも、どれもマンガから抜け出してきたような迫力と再現性だったので選べない……でも、そこはウィンリィとして、やっぱりエドで!
──さすがの回答をありがとうございます(笑)。原作ファンだからこそ感じた映画ならではの表現方法や解釈というのはありました?
ほとんど原作に忠実で、たしかにセリフの言い回しなどは不自然に聞こえない程度に改変されている部分もあるんですけど、想像と違った!と思うようなことはありませんでしたね。あ、“真理の扉”のシーンは、こんな風に解釈するんだ、と良い意味で驚かされました。原作を読んでいても“真理の扉”はとても重要なタイミングで登場するだけに、いちファンとしてどんな風に表現するのかなと楽しみにしていたのですが、実際に目にしてみると曽利監督の想像力と表現力の素晴らしさに感激しました。
──実写化されたハガレンの魅力、改めてどんなところだと思われます?
善悪はともかく、登場人物それぞれが大切なものを持っているんです。その大切なものを奪われ取り返そうとしたり、大切な人を救いたい気持ちを人一倍強く持って試練に立ち向かっていく人々の姿、そして、それぞれの出す答えに注目いただきたいです。あとはやっぱりエドとアルの深い兄弟愛にはきっと心を動かされるはずなので、ぜひ注目して観ていただけたらと思います。
──本田さんは以前からハガレンの中に出てくる好きなセリフとして“一は全 全は一”という言葉を挙げてらっしゃいましたが、今作にもその思いは貫かれていましたね。
はい。一番最初に読んだときは、妙にインパクトのある言葉ではあるけど、年齢のせいもあって意味はわからなかったんですね。で、歳を重ねてから読んでみて、こういうことだったのか、と理解できるようになって。私の中で“一は全、全は一、全ては繋がっている”と自分なりに解釈できるようになった経験があるので、とても印象に残っているんです。原作は全27巻と長いので、映画1本に全てのエピソードを収めるのは難しくはあるのですが、それでも名シーンがたくさん盛り込まれているので、原作を読んでいて印象に残っているエピソードはこの映画に詰まっています。
──本田さんのお墨付きということで(笑)。
はい、僭越ながら太鼓判を押させていただきます!
──それでは最後に、読者へオススメの本を一冊レコメンドしていただけますでしょうか。
ハガレン以外で最近買ったのは、「進撃の巨人」「約束のネバーランド」「キングダム」の最新刊なんですけど、1冊ですもんね……。そうしたら「メイドインアビス」で。本屋さんで書店員さんの書いたポップなどを読むのが大好きで、色々と見ていたら偶然目に留まったのがこの作品なんです。何気なく読み始めたら見事に引き込まれてしまいました。まだ4巻くらいまでしか読んでないのですが、まだまだ謎がたくさん残っていて展開が気になりまくっています。ストーリーは割とシリアスなのに、絵はほんわかしていて、そのギャップも好きです。
取材・文/加藤蛍
撮影/佐野円香
本田 翼
1992年生まれ、東京都出身。中学生時代にモデルデビューし、2010年から現在に至るまで雑誌「non-no」のモデルを務める。2012年に女優デビューを果たし、以降様々な映画やドラマ、CMなどで活躍中。主な出演作にドラマ「恋仲」、「わにとかげぎす」、映画「アオハライド」、「少女」などがある。日本テレビ系で放送中のドラマ「奥様は、取り扱い注意」に佐藤京子役にて出演中。
映画『鋼の錬金術師』
あらゆる物質を分解して再構築する「錬金術」。幼い兄弟エドワードとアルフォンスは亡くなった母を生き返らせたいという思いから、錬金術における最大の禁忌である人体錬成に挑むが失敗し、その代償としてエドは左脚を、アルフォンスは身体全てを失い鎧に魂を定着させた姿になってしまう。数年後、不屈の精神で立ち上がり、国家錬金術師の資格を得たエドは、奪われた身体を取り戻すため、絶大な力を持つという「賢者の石」を探す旅に出る。そして兄弟は再び“人間の命とは何か”という命題と向き合うこととなる。
原作:荒川 弘「鋼の錬金術師」(「ガンガンコミックス」スクウェア・エニックス刊)
監督:曽利文彦
出演:山田涼介 本田 翼 ディーン・フジオカ 蓮佛美沙子 本郷奏多/國村隼 石丸謙二郎 原田夏希 内山信二 夏菜 大泉 洋(特別出演)佐藤隆太/小日向文世/松雪泰子
脚本:曽利文彦 宮本武史
音楽:北里玲二
主題歌:MISIA「君のそばにいるよ」(アリオラジャパン)
配給:ワーナー・ブラザース映画
2017年12月1日(金)全国ロードショー
©2017 荒川弘/SQUARE ENIX ©2017映画「鋼の錬金術師」製作委員会
公式サイト:http://hagarenmovie.jp
「鋼の錬金術師」全27巻 荒川弘/スクウェア・エニックス
2001年~10年にかけて「月刊少年ガンガン」で連載されていた作品。幼い頃に亡くなった母にもう一度会いたいという一心で錬金術において最大のタブーである人体錬成を行ったエドワード・エルリックとアルフォンス・エルリック兄弟。しかし錬成は失敗し、兄は左脚を、弟は全身を失ってしまう。エドワードは自分の右腕を失うことと引き換えにアルフォンスの魂を錬成して、鎧に定着させることに成功し、なんとか一命を取り留める。大切なものを失った絶望の中、兄弟は「元の身体に戻る」という決意を胸に、その方法を探すべく旅に出る。
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「メイドインアビス」つくしあきひと/竹書房
秘境の大穴・アビス。深く巨大なその縦穴には、奇妙奇怪な生物たちが生息し、今の人類では作りえない貴重な遺物が眠っている。アビスの不可思議に満ちた姿は人々を魅了し、冒険へと駆り立てた。そうして幾度も大穴に挑戦する冒険者たちは、次第に“探窟家”と呼ばれるようになっていった。アビスの縁に築かれた街・オースに暮らす孤児のリコは、いつか母のような偉大な探窟家になり、アビスの謎を解き明かすことを夢見ていた。そんなある日、リコはアビスを探窟中に、少年の姿をしたロボットを拾い…?
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