Feb 13, 2017 interview

人間のダークサイドを描くことほど楽しいものはない!? 作家・貫井徳郎と石川監督が生み出した愚行エンターテインメント!

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『愚行録』発表時、“イヤミス”という言葉はなかった

 

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──日本にも見えない階級があることを、2006年に刊行された『愚行録』ははっきりと暴き出した。ミステリーという枠を越えた面白さを感じましたし、人間の嫌な面をえぐりながらも楽しんで観ることができました。

貫井 お陰さまで、『愚行録』を書いた直後は嫌う人が多かったんです(苦笑)。当時は“イヤミス”という言葉がまだありませんでした。『愚行録』を嫌った人たちは、「見たくない部分を見せられてしまった」ということだったんだと思います。でも、作家としては、そういう反響があったことこそが「しめしめ」でした。まぁ、僕がそうやって喜んでいることも、そういった人たちは気にいらないみたいですね(笑)。

石川 嫌な世界を描いていますが、これはエンターテインメントだなと僕は思いました。人によってはコメディに感じると思います。こんなに滑稽な世界はありませんから。

貫井 いい時代になったということでしょうね。僕が『愚行録』を書いていた頃は「後味のいい小説でなければ、小説にあらず」という風潮でしたから。後味が悪い小説=できの悪い小説だと受け止められていましたから。そういう人たちにとっては、『愚行録』は最悪にできの悪い小説なんです。でも今は後味の悪い小説も楽しんでくれる時代になって、本当によかったなと思いますね。

石川 時代によって、作品の評価は変わりますよね。でも、僕はすごく面白く読んだ。

貫井 ありがとうございます。

石川 貫井さんが言われたように『愚行録』を嫌う人もいるでしょう。僕は映画とは別にテレビでドキュメンタリー作品も撮っているんですが、『愚行録』を嫌う人たちを取材してみたくなりますね(笑)。

貫井 『愚行録』を嫌う人たちは、自分の中に『愚行録』に出てくるキャラクターたちと同じ部分があるから嫌うわけですよね。だから、今では『愚行録』が嫌いだとは迂闊に言えなくなっている(笑)。

 

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──石川監督、“『愚行録』を嫌う人たちの愚行録”をスピンオフドキュメンタリーとしてぜひ!

石川 面白いかもしれませんね。でも、取材相手からメッチャ嫌われることになりそう(笑)。

 

貫井ワールドの原点は、永井豪の伝説的コミックだった!

 

──貫井さんは小学生のときにコミック版『デビルマン』を読んで、大変な衝撃を受けたそうですね。そういった読書体験は作家としての作風にも影響がありますか?

貫井 ものすごく大きいと思います。僕は小学4年のときに『デビルマン』を読んだんですが、アニメ版の勧善懲悪的なストーリーとはまるで違う展開に驚きましたし、悪魔であるデーモン族よりも人間のほうが悪魔的だったという価値観の逆転は子どもだった僕にはトラウマ級の衝撃でした。『デビルマン』を読んで以来、ミステリー小説のどんでん返しが好きになったんです。どんでん返しは価値観の逆転と親和性が高いですし、作家になってから意識的にやっているところがありますね。

石川 僕はアニメ版の『デビルマン』しか見ていませんが、今の貫井さんの話を聞いて、すごくコミック版が気になってきた(笑)。

貫井 じゃあ、ちょっとネタバレになっちゃったかもしれませんね(笑)。でも、今読んでも面白いはずですよ。すごく振り切った話なんです。よく1970年代に、しかも「少年マガジン」というメジャーな雑誌で連載したことにも驚きます。『デビルマン』を読んで以来、振り切った話に魅了されるし、手加減して書いちゃダメなんだと意識するようになったんです。

 

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石川 『愚行録』も振り切った話ですよね。僕は『愚行録』はエンターテイメントのつもりで映画にしましたが、エンターテイメントって振り切っていないとつまらないと思うんです。『愚行録』の原作は振り切っているからこそ面白いんであって、映画化する際は中途半端なものにはしない覚悟でいました。

──石川監督はトラウマ的な体験はありますか?

石川 僕の場合は映画になるんですが、幼いころ初めて観た洋画が『ブルース・ブラザーズ』(80年)だったんです。刑務所から出所したジョン・ベルーシとダン・エイクロイドが自分たちの育った孤児院に帰ってくるんですが、院長に追い返されてしまうんですね。この冒頭のシーンを観て、「これは怖い話なんだ」と勘違いしてしまった(笑)。大人になってから見直したら、ミュージカルコメディだと分かったんですが、子どもの頃は自分の帰る家がないという状況に恐怖を感じてしまいましたね。思い込みって、怖いなと思います(笑)。

 

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