Mar 21, 2024 interview

若葉竜也インタビュー 生物としての人間を表現したかった『ペナルティループ』

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――人生の中で刺激を受けた人は誰ですか。

彼らです。ずっと学生時代から一緒に居る彼らです。彼らが居なかったら多分俳優もやっていないですし、間違った道をドンドン進んでいたと思います。道をちゃんと正してくれたのが彼らだと思っています。彼らには感謝しかないです。

――彼らはずっと若葉さんを見続けているのですね。

そうですね、でも一番のアンチだと思います(笑)。面白くなかったら正々堂々と「全然面白くなかった」と言われるんです。何が面白くなかったのかも明確に言われます。「だって矛盾してるよ、こことか」ってある映画を見て言われて(笑)。普段、俳優って直接的にはネガティブなことを言われないと思うんですよ。SNSとかで言われることは多いと思いますが、面と向かって何の忖度もなしに言われるのはやっぱりショックです。でも、正しいというか‥‥、言われることが多いですね。だから彼らは一番のアンチでもあります。

―― 一番まっすぐに若葉さんを見ているのですね。

本当に当たり前のことなんですけどね。「あれ、誰に向けて喋っているの?」とか(笑)「あれは前振りとして説明しないといけないから誰に向けてでもない」と言うんだけど「あそこで冷めるんだよな。普通に客に向けて喋りだしたと思った」とか「寝起きなのに何であんな髪型してるの?」とか(笑)当たり前のことじゃないですか。でもそこって「しょうがないよね、娯楽だから」と僕らが目をつぶって来たところで、本当は見つめ直さないといけない部分かもしれないですよね。

――今、若葉さんが大事にしている言葉はありますか。今年一年でもいいです。

ないです(笑)。そんな大それた話は出来ないです。言葉なんて日々変わりますよ。“そんなクソみたいなこと考えていたんだ” と次の日、ふと思ったりもするくらいで(笑)。夜中にポエムを書いちゃうのと一緒ですよ。言葉には惑わされないようにしています。そんなのを掲げるのは祈りに近いと思っていて、何時でも裏切られると思っています。なので、ないですね(笑)。

――核心をついたコメントだっ(笑)

「映画で人を救えないと思う」と言いながら「映画館がひとりでも逃げ込める場所であれば」という若葉竜也さん。いつもストレートな物言いで、嘘がない発言にハッとさせられながら、事実を見つめながら妥協せずに生きる大切さに気付かされるのです。本作『ペナルティループ』は、逆に事実を見ようとせずに生きてきた男の滑稽さを描きながら、私達も主人公【岩森淳】になっていないか、と問う作品だったのです。それをSF仕立てで描く荒木伸二監督。確かに不気味で面白い方です。

取材・文 / 伊藤さとり
撮影 / 奥野和彦

作品情報
映画『ペナルティループ』

岩森淳が朝6時に目覚めると、時計からいつもの声が聞こえてくる。岩森は身支度をして家を出て、最愛の恋人・砂原唯を殺めた溝口登を殺害し、疲労困憊で眠りにつく。翌朝目覚めると周囲の様子は昨日のままで、溝口もなぜか生きている。そしてまた今日も、岩森は復讐を繰り返していく。

脚本・監督:荒木伸二  

出演:若葉竜也、伊勢谷友介、山下リオ、ジン・デヨン

配給:キノフィルムズ

© 2023『ペナルティループ』FILM PARTNERS

2024年3月22日(金) 新宿武蔵野館、池袋シネマ・ロサほか全国公開

公式サイト penalty-loop 

伊藤 さとり

映画パーソナリティ
年間500本以上は映画を見る映画コメンテーター。ハリウッドスターから日本の演技派俳優まで、記者会見や舞台挨拶MCも担当。 全国のTSUTAYA店内で流れるwave−C3「シネマmag」DJであり、自身が企画の映画番組、俳優や監督を招いての対談番組を多数持つ。また映画界、スターに詳しいこと、映画を心理的に定評があり、NTV「ZIP!」映画紹介枠、CX「めざまし土曜日」映画紹介枠 に解説で呼ばれることも多々。TOKYO-FM、JFN、TBSラジオの映画コーナー、映画番組特番DJ。雑誌「ブルータス」「Pen」「anan」「AERA」にて映画寄稿日刊スポーツ映画大賞審査員、日本映画プロフェッショナル大賞審査員。心理カウンセリングも学んだことから「ぴあ」などで恋愛心理分析や映画心理テストも作成。著書「2分で距離を知事メル魔法の話術」(ワニブックス)。
2022年12月16日には最新刊「映画のセリフでこころをチャージ 愛の告白100選」(KADOKAWA)が発売 。 https://www.kadokawa.co.jp/product/302210001185/
伊藤さとり公式HP: https://itosatori.net