Mar 14, 2024 interview

山口まゆ×松林麗監督インタビュー グレーゾーンのところで生きている人の存在もしっかり描いた『ブルーイマジン』

A A
SHARE

俳優であり、最近は『蒲田前奏曲』で製作も務めた松林うららさん。彼女が再び立ち上がり、自ら【松林 麗】名で自ら監督を務め完成させた映画『ブルーイマジン』が3月16日に公開されます。それは完全オリジナル脚本であり、性暴力を受けたことを言えずに思い悩む主人公と、彼女のように心に傷を負った女性達を救済しようと自ら立ち上がる勇気の先の希望を描いた作品です。「声に出しづらい」世の中にメスを入れつつ、傷つけられた心を抱き締めるような本作はどうやって作られたのか。主演を務めた山口まゆさんと松林麗監督にお話を伺います。

――そもそも映画界の性加害を軸に様々なハラスメントと立ち向かう映画を自分の手で監督しようと思った理由はなんですか。

松林:以前から#Me too運動などのテーマに興味を持っていましたし、自分自身も加害を受けた身として「これは映画化しなければ」と次第に強く思っていったのが理由です。ただ映画化するにあたって、性被害を受けた人だけでなく、グレーゾーンのところで生きている人の存在もしっかり描かなければと思ったし、フィリピンからやってきた女性が受けるDVや男性も被害に合うことなど、権力を持った人が犯す暴力を描くことも大事だと思いました。

――山口さんは、松林監督が製作、監督を務めた性暴力やDV被害に遭う女性たちを救う物語に参加されていかがでしたか。

山口:ちょうど1年前の今日(2月14日)がクランクインの日だったんです。作品のテーマもあり、演じる役柄もあって凄く悩んでいた1年前でしたが、完成した作品を観て、とても繊細だけれども背中を押せるような、前を向いて行けるような作品になって良かったと思いました。

松林:本当に真摯に役に向き合って頂きました。私はまゆさんのこの笑顔を見たかったんです。現場では辛いシーンもあったので悩むこともあったと思います。皆さんには劇中の中で、まゆさんの美しい笑顔も見て頂きたいです。

――ずっとお2人は映画作りで向き合っていたわけですが、その時から今に至るまでのお互いの印象を教えて下さい。

山口:最初にお会いした時から「大丈夫ですか?この作品、どうですか?」と凄く気遣いの心を松林監督から感じていました。私が迷いながら演じていたこともありますが、現場中でも常に“気遣いをしてくださる方”という印象を持っています。

松林:恐れ多いです(笑)。私は俳優からキャリアをスタートしたので、やはりキャスト(俳優)に寄り添うということが大事だと思っています。まゆさんは、杉野希妃さんとご一緒されている映画『雪女』(2016)の頃から観ていました。子役からこの業界にいらっしゃるので、役についてディスカッションすることもしやすかったんです。本当に真面目に取り組んで下さって、まゆさん自身も私に寄り添って下さったと思っています。それにまゆさんは透明感がもの凄くありますよね。ポスターやチラシにもなっている海のシーンでは、彼女からキャラクターの提案を沢山して頂き、本当にありがたかったです。

――どんな提案が山口さんからあったんですか。

松林:【のえる (斉藤乃愛) 】が持っているトラウマとして手を拳でグッとしちゃうというのが映画では象徴的に映し出されていますが、茅ヶ崎の海で撮影したシーンでは、その手を自分で「ほどいてあげる」という行為が映し出されます。あの部分はファンタジックなシーンになっていて、「手と手を取り合う」というテーマも含まれています。それともうひとつ、【のえる】自身が過去の自分と対峙して自分自身を許してあげるという意味も含まれます。ここが、まゆさんからの「指をほどく」というアイデアで取り入れたものです。本当は【抱き合う】【ハグする】という感じの予定だったのですが、手を「ほどいてあげる」ことで、凄く素敵なシーンになりました。

山口:そのシーンは私が役作りをしている段階で、自分のトラウマと向き合っている方のお話を聞く機会があって。その方が「トラウマが蘇ると自然と身体が硬直して、気づくと手を硬く握っているから、固まってしまわないように1本1本の指を、自分自身に大丈夫。大丈夫だよと優しく言い聞かせながら緩めていく」と仰っていたのがすごく印象的だったので、監督に提案させていただきました。

――それを聞いてあのシーンを思い出すと胸が熱くなりました。そうやって一緒に映画を作って行ったんですね。ちなみにお互いを動物に例えるなら何ですか(笑)

松林:難しいですね。でもね、まゆさんは【鹿】かな、と思うんです。

山口:【鹿】?何故ですか?

松林:【鹿】は崇高なる動物ですよね。まゆさんは目が凄く綺麗だから【子鹿】さん。バンビちゃんみたい、凄く可愛い。

山口:初めて言われました。バンビですか、嬉しいです。昔は【うり坊(イノシシの子ども)】に似ていると言われていました(笑)。

松林:【うり坊】?私のイメージは子鹿ちゃんです(笑)。本当は映画の中でまゆちゃんに鹿のお面を付けてもらいたかったんです。実はデモのシーンを作りたくて、皆に動物の仮面を付けてもらうという脚本がありました。そのシーンをと撮ることは出来ませんでしたが、だからその時に、まゆちゃんは“【鹿】かな?”と思っていたんです。

山口:これからは【鹿】推しでいきます(笑)。私の松林さんのイメージは【カピバラ】です。空気ごと柔らかくする力があると思うんです。

松林:本当に?【カピバラ】は温泉に入っているイメージですよね(笑)

山口:ゆったりと時が流れているイメージがあります。