Jan 18, 2024 interview

古川琴音インタビュー 怖さでどんどん自分が消耗してやつれていった『みなに幸あれ』

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2018年のデビュー以来、その類まれなる存在感で多くの人を惹きつける俳優・古川琴音。そんな彼女が初めて挑戦したジャンルがホラーであり、主演作『みなに幸あれ』が1月19日より全国順次公開される。主演でありながらハッキリとした役名は無く【孫】。久しぶりに祖父母の暮らす田舎に行った主人公が、家に中に「何か」の気配を感じ始める。しかもよく見ると祖父母の様子がおかしい。それに気づいた時、人間の存在を揺るがす闇を知ることになるのだ。

この衝撃の映画を作り出したのは「第1回日本ホラー映画大賞」(主催:KADOKAWA)で大賞を獲得した下津優太。本作の原型となる短編で受賞し、審査委員長である清水崇監督プロデュースにより、『みなに幸あれ』で商業映画監督デビューとなる。今回は、本作の主演、古川琴音さんに撮影時の話を聞きつつ、彼女が多くの監督に愛される理由を探ります。

―― もともとホラーはお好きだったのですか。

好きです‥‥、たぶん。ホラーを観たいと思ったきっかけが、怖いもの見たさなので基本的には嫌いなんですけど、自分の中で嫌いと好きをグルグルと繰り返している感じです(笑)。でも定点カメラで撮影された『パラノーマル・アクティビティ』(2009)などは好きなんです。

―― ホラー映画は、特に俳優たちの台詞のない表現力が試される作品だと私は思っています。

そうですよね。下津監督にも「怖がる人の顔を見て、観客は怖がるから」と演出の時にずっと言われていました。

―― 実際にホラー映画に関わってみて、難しいと感じた部分はどこですか。

こんなにも体力を使うとは思いませんでした(笑)。怖がる側の感情が「泣く、叫ぶ、逃げる、怖がる、驚く」なので全部体力が必要な感情なんです。だいたいシーンの流れ通りの順撮りで撮影してもらっていたのですが、どんどん自分が消耗してやつれていく感じがありました。

下津監督が、ちゃんと怖がることが出来る環境を作って下さっていたんです。例えばロケを古民家で撮影するとかもそうです。あと私が山の中の家に行って布を取るというシーンがあるのですが、その布の奥に何があるのかを教えてもらえていなかったんです。ただスタッフさん達は皆さん知っているので、私の反応を凄く楽しみにしていて「凄いものを用意したから」とワクワクしている感じでした(笑)。それを見た時に、何がそこにあるのかを理解する前に思わず声が出たんです。その声は用意していては出ない反応なので、ちゃんと怖がれる環境にしていただいていたからこそと思っています。

―― あるシーンは、祖父母の濃密な関係をテーブルの下で息を殺しながら見てしまうなど『パラサイト 半地下の家族』(2019)のパロディのようでした。そこは“笑っていいのか?笑っていいんだよね”と思いながら観ていました。

海外の方々は結構大笑いしながら、熱狂的に観て下さったそうです。やはりブラックユーモアなんだと思います。

―― 登場する祖母役の方は、監督が探し出した素人の方なんですよね。よく俳優さんは「相手の演技を見て受けの芝居をする」とおっしゃいますが、共演されてどうでしたか。

確かに間を掴むのが、難しい瞬間はありました。というのもプロの方々の中でやっていると、皆で一緒に準備をし合うというのが暗黙の了解で、呼吸も自然と合っていきます。でもプロでない方だとそういうのがないので、絶妙な間で台詞をおっしゃったりするので、それが映画の世界観にハマって本当に怖いんです。「え、今」みたいな感じで何を考えているのか本当にわからないんです。難しさもありましたが発見の方が多かったです。セリフを言う時も“何処を見ているの?”って感じがして、更に不気味さを醸し出していました。そのお陰で私も演技の引出しを増やしてもらった感じです。