Mar 21, 2024 interview

若葉竜也インタビュー 生物としての人間を表現したかった『ペナルティループ』

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――コロナ禍を経て、社会に対する考え方や役者を続けるうえでの意識など変わりましたか。

変わりました。やっぱり変わりましたし、それは今も継続しています。ある種の苛立ちみたいなものが増えました。ウソみたいな事ばかり起きるというか、ちょっと触れたら破裂するような時代に突入したと思っています。そこで今、自分が出来る事は限りなく少ないので、無力感みたいなものにも襲われます。でもやらなければいけないことが少なくなった分、明確になった気はしています。

――何をしようと思っているのですか。

それは内緒です(笑)。でも、この時代をちゃんと見つめたいと思っています。ヘラヘラ笑ってうやむやにせずにちゃんと見つめたうえで。それは映画をやっているからではなく、2024年という時代を生きる一個人として粛々とこの時代を見つめたいし、ちゃんと実感しながら生きていきたいと思っています。

――私は映画のフィルターを通して自分なりに“何か出来るのではないか?”と思いながら喋っていたり、記事を書いたりしています。この危うさに気づいて欲しくて。若葉さんのような演じる側でもそのような作品が増えているような気がしていますが、どのように感じていますか。

僕は、ほとんど意味がないと思っているタイプなんです。それは色々な考え方があっていいと思うし、否定しませんけど。例えば自分が被災した場所に居て、寝る所や寒さなどに耐えないといけない、そんな今まで当たり前にあった環境が整っていない状況になった時、僕は「映画を観たい」とはいっさい思わないです。映画で救われる気もしないし、そんなことよりも生きることが重要だと僕は思ってしまう。僕は “映画で人を救いたい”と思っていないんです。でも、“映画を観た誰かひとりでもいいから突き刺され”と思いながら作っています。映画館に誰かひとりでも逃げ込めればと。

――セーフティーゾーンではありませんが、この映画もそうですが【岩森】は過去に囚われて生きている。彼にとってはそこが居心地良い場所なんですよね。若葉さんにとって居場所や居心地がいい、大事な場所はどこですか。

居場所というよりも、僕はやはり地元の友達と居る時間が一番大切です。最優先にしたいと思う時間、プライベートですね。仕事よりも、身の回りに居る人たちを最優先にしたいと思っています。彼らは気づかせてくれるんです。映画のことをひとつ話すにしても、映画のプロ達との話よりも、よっぽど冷静だし、面白い回答が返ってくる。一番実になると思っています。映画のプロの人たちはある種、“そんなのわかっているよ”ということしか言わないというか、“それが出来たら最高だと思っているよ”というか(笑)。

僕がドキッとすることを言ってくれるのは、映画を観ている日常に生きている人たちなんです。彼らとの時間で気づかされたし、今の人格形成があるのも彼らのおかげだと思っています。大切な何かを何時もチューニングしてもらえているような気持ちになります。