May 19, 2022 interview

吉岡里帆インタビュー 個性をまるごと愛する大切さに気付いた『ハケンアニメ!』

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―― 【瞳】が中村倫也さん演じる【王子千晴】のアニメに刺激を受けたように、これまでに演技で強烈な刺激を受けた役者はいますか。

満島ひかりさんと共演させて頂いた時は、存在が登場人物そのもので驚きました。例えば、マラソンや登山だと走りが早い人に自分もついて行こうと一生懸命になり、速度が上がるってことありますよね。それと同じような体験を満島ひかりさんから頂きました。本当に格好良くて、チャーミングで共演している人の腕をグイッと引っ張って下さるような力強さも感じて、「かっこいい」と当時、心の中で感じたことを凄く覚えています。忘れられないです。 

―― きっと吉岡さんは、共演する人と刺激し合い、どんどん変わっていくんですね。

共演する人によってもちろん変わります。毎回、相手役の方に心を順応させながら一緒にお芝居を作っていくので、共演する方によって生まれるものは変わりますね。

―― そう考えると、映画『ハケンアニメ!』を撮影した後に、劇団新感線の舞台『狐晴明九尾狩』で中村倫也さんと共演されたのですね。

そうなんです。逆でなくて良かったと凄く思います。『ハケンアニメ!』のときは【王子】は瞳にとって憧れで、ある種の畏怖を感じるような近付くことが出来ない人というキャラクターなんです。だから中村倫也さんとは初対面で「初めまして」の状態でお芝居が出来たことは、凄く良かったです。

―― 『ハケンアニメ!』撮影時と舞台『狐晴明九尾狩』の時とでは、中村倫也さんの印象は変わりましたか?

「こんなに三枚目なんだ!」とビックリしました(笑)。『ハケンアニメ!』の撮影の時も節々に三枚目の中村さんを感じてはいたのですが、本編のお芝居を大事にしていたので、そこまで撮影の合間に沢山お話ししていなかったんです。だから『ハケンアニメ!』のときは一緒にお芝居をした時間の方が強く印象に残っています。かたや新感線の舞台は長いので、稽古期間に頂いたもの、交わした冗談などが、凄くエッセンスとして舞台の面白味に繋がっているのだと思います。

―― 2021年は、ドラマや映画以外にも舞台や『漁港の肉子ちゃん』で声優など、バラエティに富んだお仕事をされていたのですね。自分を表現する仕事を色々とやってみて、いかがでしたか。

放出するばかりではないことに年々気付くというか‥‥、頂いているものの方が多いということにキャリアを重ねていくことで、気付きました。20代前半の頃は、“ワーッ!”とがむしゃらに走っているから、まるでずっと放出し続けているような感覚になったりもしていたんです。今は日々、仕事から肉付けしていってもらっている感じがしています。頂いたものをエネルギーにして歩いている、そんな感じがしています。

―― 実は今回の『ハケンアニメ!』で共演させていただいた時に、私は撮影現場で吉岡さんが居ると最初、気付きませんでした。

本当ですか(笑)。

―― 舞台挨拶で会う時とオーラが違うというか、状況によって、オーラを色々と変えることが出来る女優さんなんだと思います。本当に凄いです。

ありがとうございます、嬉しいです。一番の褒め言葉かもしれないです。

―― 自分の中にスイッチがあるのですか。

もしかすると“自分を出し過ぎない”ということなのかも。やっぱり仕事自体は「自分、自分」というより“人とどう作っていくのか”が大事なので。自分の根底の想いよりも、皆と作っていくキャラクターや作品を重点的に考える。そこに重きをおいているからかもしれません。

吉岡里帆さんがインタビューで語っていた『サウンドバック 奏の石』第一話上映会のシーン。実は司会者役で出演していたのですが、吉岡さんと共演までさせてもらった私が感じたのは、舞台挨拶でよくご一緒するキラキラした吉岡里帆さんはその場所には明らかに居なかったという驚きでした。つまり、初めて自身の作品の舞台挨拶に緊張を隠せない新人監督がそこに居たということ。その演技への没入感のお陰から映画の後半は感動の嵐が心に吹き荒れ、涙が止まらなかった『ハケンアニメ!』。きっと私と同じように多くの人の心を震わすことでしょう。

文 / 伊藤さとり
写真 / 奥野和彦


作品情報
映画『ハケンアニメ!』

連続アニメ『サウンドバック 奏の石』で夢の監督デビューが決定した斎藤瞳。だが、気合いが空振りして制作現場には早くも暗雲が‥‥。瞳を大抜擢してくれたはずのプロデューサー・行城理は、ビジネス最優先で瞳にとって最大のストレスメーカー。「なんで分かってくれないの!」、だけど日本中に最高のアニメを届けたい!そんなワケで目下大奮闘中。最大のライバルは『運命戦線リデルライト』。瞳も憧れる天才・王子千晴監督の復帰作。王子復活に賭けるのはその才能に惚れ抜いたプロデューサーの有科香屋子。しかし、彼女も王子の超ワガママ、気まぐれに振り回され「お前、ほんっとーに、ふざけんな!」と、大大悪戦苦闘中だった。瞳は一筋縄じゃいかないスタッフや声優たちも巻き込んで、熱い“想い”をぶつけ合いながら “ハケン=覇権” を争う戦いを繰り広げる。

監督:吉野耕平

出演:吉岡里帆、中村倫也、工藤阿須加、小野花梨、高野麻里佳、六角精児、柄本 佑、尾野真千子

原作:辻村深月「ハケンアニメ!」(マガジンハウス刊)

配給:東映

©️2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会

2022年5月20日(金) 全国公開

公式サイト haken-anime.jp

伊藤 さとり

映画パーソナリティ
年間500本以上は映画を見る映画コメンテーター。ハリウッドスターから日本の演技派俳優まで、記者会見や舞台挨拶MCも担当。 全国のTSUTAYA店内で流れるwave−C3「シネマmag」DJであり、自身が企画の映画番組、俳優や監督を招いての対談番組を多数持つ。また映画界、スターに詳しいこと、映画を心理的に定評があり、NTV「ZIP!」映画紹介枠、CX「めざまし土曜日」映画紹介枠 に解説で呼ばれることも多々。TOKYO-FM、JFN、TBSラジオの映画コーナー、映画番組特番DJ。雑誌「ブルータス」「Pen」「anan」「AERA」にて映画寄稿日刊スポーツ映画大賞審査員、日本映画プロフェッショナル大賞審査員。心理カウンセリングも学んだことから「ぴあ」などで恋愛心理分析や映画心理テストも作成。著書「2分で距離を知事メル魔法の話術」(ワニブックス)。
2022年12月16日には最新刊「映画のセリフでこころをチャージ 愛の告白100選」(KADOKAWA)が発売 。 https://www.kadokawa.co.jp/product/302210001185/
伊藤さとり公式HP: https://itosatori.net