――そうなのですね。それに重力も感じないといけないですよね。あれも“さすが”と思いました。
近藤 車に乗るシーンとかありましたよね。リハーサルの時に実際に乗ってもらって練習をしたので、本番では“今はここにいて、それからこうなって、こうなる”みたいなことをちゃんと覚えておくようにしていました。
――なかなかない体験ですね。お話を聞いていると、結構アナログな部分もあるということですね。
毎熊 アナログの方がむしろ多いです。物が動くとかも全部、本当にベテランスタッフの方がテグスで引っ張ってやっているんです。その感じがやっぱり出ていていいですよね、アナログ感が。
近藤 本来はクッションの中の機械の仕掛けで座面が凹むようになっているのですが、機械の不調で凹まないことがあったりして。クッションに【ひかり】が座っているはずなのに凹んでないな、と思いながらそのまま演技を続けていたりして、面白かったです。

――ロードムービーの中で色々な癖のある人と出会います。友近さん演じる【喫茶店の店員:水野】だったり、寺島進さん演じる【タクシー運転手:倉田】だったり、宇野祥平さん演じる【警察官:権田原】だったり、個性あふれる俳優さん達が出演されています。共演されていかがでしたか、思い出に残っているエピソードなども教えてください。
近藤 寺島進さんは本当に優しい方でした。出演されてきた映画の印象から“怖めの方かな‥‥”と思っていたんですが、実際にお会いしたらすごく優しい方で。タクシーの中で長い期間、3人で一緒にいたので、最後には3人娘のおじいちゃんみたいな感じになっていました。三女【ひかり】役の(鈴木)凜子ちゃん、次女【音々】役の(矢山)花ちゃんが寺島さんをどんどん遊びに誘っていたので、私もその輪に入っていく感じでしたね。
毎熊 あれは本当に印象的でした。僕はずっとリハーサルから娘役の3人と一緒にいるので、そこにタクシー運転手として寺島さんが入ってきて、また空気感が変わった時に車内では結構ラフな会話のやりとりがありました。前の席には僕と寺島さん、どちらかというと顔が怖い大人達が座って、後ろに3人が座っていて。(鈴木)凜子ちゃんがやたらと気軽に話しかけていてね。軽い感じで「寺島さんってさ」みたいに話すんですよ (笑)、決して僕には言えない軽い感じで。(矢山)花ちゃんですら「寺島さん、おはようございます」(真面目な声で) と自然にそうなるのに。
近藤 そうなります! そうなっていました (笑)。
毎熊 「え? 何で? 何で? 」という感じで(鈴木)凜子ちゃんが寺島さんに聞くんですよ。そうしたら寺島さんも「いや~、俺も分からないな~」と答えていて、それを聞いているのは面白かったです。



――アドリブなどもあったのですか。
毎熊 アドリブはほぼないんじゃないかな‥‥、ないと思います。
――確かに、透明人間役の凜子ちゃんの台詞もありますからね。好きなシーンを1つ挙げるとしたらどこですか。
近藤 お茶をこぼしそうになるシーンです。
――友近さんパートですね。
近藤 あのシーンは好きですね。もともと友近さんが好きだったので、顔がスローモーションでウワ~ッてなるところとか“面白いな”と思いながらずっとニヤニヤしていました。
毎熊 好きなシーンは、いっぱいあるからな~、何だろう。意外と東京のシーンかもしれません。ずっとロードムービーで、完全な順撮りではないですけれども、東京に着いた辺りは後半の撮影でした。僕は東京に住んでいるので東京はよく分かるんですが、初めて地方から東京に出てきた時に思った「東京だ!」みたいな気持ちをちょっと思い出しました。それに家のシーンとか4人でいるところは、4人だけの世界で完結しているんですが、本当に東京や新宿とかで透明人間の【ひかり】とはぐれてしまったら、想像していたよりも“もう見つけられないかも、終わった”とすごく思えたんです。
――自分の子どもが小さい頃によく迷子になったので、あのシーンを観て思い出して涙があふれました。近藤さんは俳優業を始めて、「こういう俳優になりたい」「こうなったらいいな」という目標みたいなものは、今の時点でありますか。
近藤 “ふと思い出すシーンに私がいたらいいな”と最近は思っています。私はドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(主演:松たか子)がすごく好きなんです。その中でブロッコリーでたたき合うというシーンがあるんですけど、私はブロッコリーを見ると必ずそのシーンを思い出すんです。そんなふうにふと生活の中でパッと思い出すシーンに自分も居たらいいなと思っています。
毎熊 すごくいい言葉ですね。


