Jan 26, 2017 interview

園子温監督&冨手麻妙に聞く『アンチポルノ』の世界。冨手がヌードになれた理由とは?

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虚構と現実、自身の永遠のテーマが反映された作品

──自分の人生は、すべて幻想なのかもしれないという不安感は『奇妙なサーカス』『夢の中へ』(ともに05年)、『リアル鬼ごっこ』と園作品では度々描かれています。園監督にとって、幻想性・虚構性をテーマにした作品はどういった位置づけにあるのでしょうか?

 自分の妄想として、常にまとわりついているものです。目の前の世界はすべてカラクリじゃないのか、噓じゃないのか、虚構と現実の狭間なんてどこにもないような気がずっとしていて度々映画にしてきたけど、それの決定版を撮りたいなと思ったんです。最初に国会議事堂が出てきますが、この国でもっとも虚構の存在として国会を出したわけです。国会議事堂はある意味、ポルノにも見える。自分にとってはポルノなんですよ。虚構の極み。僕にはいやらしい建物に見えてしまう。ポルノ映画を撮るなら、この世でいちばんポルノらしいものを出そうと。パトカーのサイレン音が流れるのは、「このいかれた建物を早くしょっぴけ」という意味からです。

──園監督の潜在意識を反映しているんでしょうか?

 そうですね。この映画全体がそうです。自分の人生を虚構のように感じますが、まぁ現実なんだろうなという想いも頭の片隅にあって、そういうのが撮影本番の「よ〜い、スタート!」の掛け声で権力構造が変わり、それまで頭をペコペコ下げていたキャラクターが急に威張り出すという。立場がどんどん変わるというのは映画の現場では当たり前のことですが、現実社会でもありえることで、あるいは大きな歴史の流れの中でも起きうることだと思います。バカバカしくて虚構じみた世界なんだけれど、きっとそれは現実なんだろうという意識が自分の中の唯一のリアリズムだったりもする。まぁ、僕の中にある永遠のテーマのひとつですね。

 

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──マネージャーの典子(筒井真理子)とシーンごとに上下関係が激しく変わっていく難しい役だったと思いますが……。

冨手 撮影現場では、とにかく必死でしたね。筒井真理子さんは女優として長いキャリアをお持ちの方ですが、撮影中は筒井さんに対して同等の立場でいようというか、「絶対に負けたくない」という気持ちでやっていました。作品として完成したものを観ると、筒井さんは女優として本当に素晴しかったです。「撮影中、あんな気持ちでやっていてすみません」と後から思いました(笑)。スクリーンに映った自分をどう感じたか? 正直、現場で自分がどんなふうに台詞を言ったかとか、まったく覚えていなかったので、「あっ、こんな顔でこんな台詞を言っていたんだ」と新鮮でした。普段お風呂に入っているときに鏡に写っている自分の顔や体とはまったく違って見えましたね。フフフ。

 

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 僕も気持ちが高揚してて、四つん這いになって這いずり回るシーンは本当にクドいくらいに撮りました。気づいたら、彼女の足が血まみれになっていました。

冨手 あはは。

 そのくらい女優をいたわらない気持ちが全面に出てしまった映画かもしれない。

冨手 そうですね。天井から大量に絵の具が降ってくるシーンは、すごい勢いで顔の穴という穴に入ってきました(笑)。

 「大声で笑え」とね。

冨手 はい。しかも、「目を開けて踊れ」って言うんですよ(笑)。必死でついていくしかなかったですね。

 口の中にいっぱい入ったね。

冨手 入りましたね。全身に入ってきました(笑)。

 

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