Apr 17, 2018

コラム

選んだ結婚相手がこのコラムにも登場した、あの男とは!

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 アルバイトを探していたのは、ニッポン放送の『ザ・ボイス そこまで言うか!』という報道情報番組だった。ここでSはコピーとりやコンビニ買い出しなどのアルバイト業務につく。その時はじめて、目の前で仕事をしている放送作家という存在を目にしたのだ。
「へえ、世の中にはこんな仕事があるのか…」
 と思った。小学生から大学受験の時まで聞いていたラジオ番組の楽しさがよみがえり、その裏方は面白そうに見えた。
「これだったら、私にもできるかも!」
 とも思った。生意気にも。
 アルバイトの期限は一ヶ月。それが終われば、今度こそ無職として世間に放り出される。どうやって食べていけばいいのか? また気のいい大道芸人にでも出会えば食っていけるかもしれないが、そううまくいくわけがない。
 そこで彼女はバイトを頑張って、自らをアピール。一ヶ月後、放送作家見習いとして使ってもらうことに成功したのだ。

 ところが、見ているのとやってみるのとは大違い。
 なにしろ報道情報番組だ。毎日、新聞全紙を読まなければならない。さらに、各局のニュース番組やネットのニュースサイトもチェックする。先輩作家やディレクターに、ニュースの見方、情報の確認の仕方をイチから教わる。自分がこれまでいかに世の中のことを知らなかったかを思い知らされ、ガクゼンとした。
 しかも、知るだけでは駄目。次にそれを、要点をわかりやすくまとめて文章にする作業が待っている。ここが放送作家の放送作家たるゆえんで、
「あ、これは大変な仕事だ!」
 と思った。少し前に「私にもできるかも」なんて思ったことを、反省した。

 この番組で揉まれながら、彼女は他にバラエティ番組のサブ作家なども経験する。放送作家というのは、元々そういう雑食性の職業なのだ。
 そして2015年。かつての名番組『夜のドラマハウス』が復活し、『らじどらッ!~夜のドラマハウス~』がスタートした時、ぼくの所へ来た。ぼくは『夜ドラ』の経験者として、新人作家のまとめ役をやっていたからだ。この時、初めて彼女に出会った。
 名前を、大塚ウテナという。
 彼女が書いた脚本を読むと、独自な世界観を持っていて、
(ああ、演劇少女だなあ)
 と思った。そりゃ文学部演劇専攻なんだから当然だが、そんなこと当時のぼくは知らなかったし…。
 今の時代、レギュラーでラジオドラマが書けるチャンスなんて、そうそうない。彼女は毎回脚本を書き、それから半年間、ぼくは彼女に簡単なアドバイスなどをした。

 こうしてしだいに、彼女は放送作家として生活できるようになった。現在は、駆け出し当時鍛えられたスキルを活かして、BS日テレの報道情報番組などを担当。一方でコント集団『えいえい とー!』なるものを立ち上げ、作・演出としても活躍している。
 (おそらくは)演劇に入れ込んだせいで就職できなかったけれど、演劇仲間の縁でバイトにありつき、そこから放送作家になったのだから、結果「演劇」には感謝すべきなのだろう。

 そんな大塚ウテナちゃんが、去年結婚した。まさに公私共に充実…を絵に描いたような状態だ。よかったね。
 しかしその結婚相手を聞いてぼくは驚いた。相手は同じ放送作家の、チェ・ひろし。あのAVのモザイクかけから放送作家になった男だったのだ。
 いやあ、まったく「類は友を呼ぶ」というか、「破れ鍋にとじ蓋」というか、いやそれじゃ失礼か…などと思いつつ、ピッタリのことわざがあることに気がついた。そう、「似た者夫婦」だ。

 

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藤井青銅

藤井青銅(ふじいせいどう)
23歳の時「第一回・星新一ショートショートコンテスト」入賞。これを機に作家・脚本家・放送作家となる。

書いたラジオドラマは数百本。腹話術師・いっこく堂の脚本・演出・プロデュースを行い、衝撃的デビューを飾る。最近は、落語家・柳家花緑に47都道府県のご当地新作落語を提供中。 著書「ラジオな日々」「ラジオにもほどがある」「誰もいそがない町」「笑う20世紀」「あなたに似た街」「【悲報】本能寺で何かあったらしい……光秀ブログ炎上中! 歴史Web2.0」…など多数。

藤井青銅著「ラジオにもほどがある」(小学館刊)
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