Nov 14, 2017

コラム

歴史あるニッポン放送の24時間番組『ミュージックソン』の話2

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 毎年、クリスマスイブから24時間、ニッポン放送をメインに、全国のラジオ局(現在は全11局)で「ラジオ・チャリティー・ミュージックソン」という番組が実施されている。ぼくはこれまで何度か、色々な形でかかわってきた。そのことを書いている。

 この、通称・ミュージックソンがどんなものかも知らず、初めてニッポン放送の現場を見て驚いたのは、「あ、全社員が参加してるんだ」ということ。
 ふだん作家が接するのは、ほとんどが制作畑の方(ディレクター、プロデューサー、アナウンサーさんなど)だ。が、ラジオ局というのは所帯が小さい。24時間放送となると、制作の人間だけでは回らない。かつて現場経験がある今はエライ方。あるいは制作経験がある他の部局の方。さらには、まったく現場経験がない方も、電話受けやその他さまざまな担当に駆り出されていたのだった。

〇「生ドラマ企画」
 これはいつのことだか憶えていない。たぶん、ぼくが作家になって二、三年の頃だ。当時のプロデューサー・ドン上野さんに「なにか企画を出せ」と言われ、
「その日電話でもらったエピソードを元に、ラジオドラマを作って、その日に生ドラマとして放送するのはどうでしょう?」
 と提案した。

 ドン上野は、生ドラマの演出で定評があった。が、もちろんそれは、事前に脚本があって、SE(効果音)やM(音楽)も準備されていて、声優さんやスタッフたちもリハーサルを重ねて…のことだ。
 が、ぼくの提案は、「脚本もその日に作る」というもの。長時間ドラマは無理だが、イメージでは15分~20分程度。それでも、十分無茶な企画だ。
 当時ぼくは、「夜のドラマハウス」やその他の番組で、ドラマや朗読用ショートショートを量産していた。たぶん、人生で一番「ドラマ脳・物語脳」が活性化していた時期だろう。だから、「キーワードさえあれば、ショートドラマならすぐに書いてみせる!」などと、生意気なことを思っていたのだ。今となっては恥ずかしい…。
 こんな無茶で面白い提案を、ドン上野が採用しないわけがない。

 なにしろ、当日電話でもらったエピソードを元にドラマを作るという、事前準備ゼロ・100%ガチ企画なのだ。内容はもちろん、出演者が何人必要なのかすら、わからない。ドン上野は、
「まずメインになる男女一組。これは若い人だろう。それから年配の男女の声も、一組用意しとこうか。あと、もう二、三人、ちょっと別の声の人も…」
 ここがラジオドラマの利点で、顔が見えないので、どんな役でもできる。プロの声優さんだから、声を変えれば、メインとは別に他のチョイ役だってできる。脚本を見ながら演じるので、セリフを憶える必要もない。
 こうしてドン上野が「見つくろって集めた」数名の達者な声優さんが、夜になってスタンバイ。深夜放送予定のドラマに向けて、「俺たちゃ何をやればいいんだ?」とわからないまま、控室でブラブラしていたのが面白かった。

 一方、電話受けチームからは、その日リスナーから募集したエピソードがどんどんあがってくる。テーマはたしか、今年あった出来事とか…なにかそういうものだったのではないか? 
 作家スタンバイはぼくと、同じく「夜ドラ」作家の向井勉さん。二人とディレクターで、電話受けカードを見ながら、
「う~ん、どれがドラマにできるかな?」
「このエピソードはどう?」
 なんて選ぶ。
 が、いくらなんでも電話受けカードの文面だけで、ドラマは書けない。選んだ候補の方にこちらから電話して、詳しく話を聞いた。
「よし、これでいこう!」
 それから、ぼくと向井さんは会議室にこもり、アイデアを膨らませ、ストーリーを作る。…のだが、最初は余裕があって雑談なんかしていたくせに、脚本はなかなか書けない。しだいにオンエアの時間が迫ってくると、焦り始めた。
(しまった! こんな無茶な企画、提案するんじゃなかった…)

(※今回、続きます)

 

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藤井青銅

藤井青銅(ふじいせいどう)
23歳の時「第一回・星新一ショートショートコンテスト」入賞。これを機に作家・脚本家・放送作家となる。

書いたラジオドラマは数百本。腹話術師・いっこく堂の脚本・演出・プロデュースを行い、衝撃的デビューを飾る。最近は、落語家・柳家花緑に47都道府県のご当地新作落語を提供中。 著書「ラジオな日々」「ラジオにもほどがある」「誰もいそがない町」「笑う20世紀」「あなたに似た街」「【悲報】本能寺で何かあったらしい……光秀ブログ炎上中! 歴史Web2.0」…など多数。

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