Mar 29, 2019 column

目が離せない、短編アニメが生み出す新時代

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「短編アニメ」という括りを聞いて、どういう作品を連想されるだろう。どれくらいの長さの作品を短編とするのか?ということもあるので、仮に「30分以下の作品」としてみよう。アニメにそれほどのめり込んでいない人であればNHKの『みんなのうた』かもしれないし、アニメファンであれば近年多い深夜の510分枠アニメかもしれない。放送以外では学生のアニメサークルなどで短編アニメを自主制作するところも多い。

すでに、例年この時期のおなじみとなってきてきている『あにめたまご』の完成披露上映会が行われた。『あにめたまご』とは文化庁が外部団体に委託をし行っている若手アニメーター育成プロジェクト。2010年度の『PROJECT A』から始まり、11年度~14年度は『アニメミライ』。15年度からは『あにめたまご』として毎年行われている。毎回、委託団体によって選考された4つの制作会社が、それぞれ30分ほどの短編アニメ作品を制作する事業だ。

現在のアニメは多作品、多制作会社、多スタッフであるため1つのスタジオで作業を完成させているところが少ない。演出はここだが原画はあそこ、動画はあっち…ということもあり、これによってベテランから若手への指導や技術継承が難しくなっている。そこで、この事業では同じスタジオでの制作を通し、継承・指導を行うことを主としている。

若手アニメーターの育成ということが主目的とはいえ、あくまで見る側としての視点では「30分の短編アニメ集」になる。事業スタート当初は(良くも悪くも)公的事業によって制作された作品らしく、寓話であったり児童向けといった感じの一般向け的な作品が多かったのだが、大きな変化が生まれたのは『アニメミライ2013』からだ。

この回の委託制作作品であった『デス・ビリヤード』を原作に、15年に連続テレビアニメ『デス・パレード』が誕生し放送されることに繋がった。同回では『リトルウィッチアカデミア』も大きな注目を集めた。魔法学校に入った女の子のドタバタ活劇とアクションを見せたこの作品の面白さは、それまでこの事業に興味を向けていなかったアニメファンの間でも話題となり、その後にクラウドファンディングによる続編制作が企画された際には記録的な速さで目標額を達成。劇場公開された60分弱の中編『リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード』の制作・公開へと続く。さらにそこから17年には物語をリブートする形で2クールのTVシリーズ版『リトルウィッチアカデミア』が放送となる。『デス・ビリヤード』『リトルウィッチアカデミア』共に、それまでは同事業の発表で完結していた委託作品が商業作品へと拡大をすることとなった。

今年も注目作品はあるのだが、とはいえ完成作品の発表方式が安定していないのが困りもので、例年通りであるなら、一部地方局で放送があるかもしれないのだがこれも不明だ。ペイチャンネルの「アニマックス」では毎年放送されているのだが、これも調整中とのこと。正直、もう少し多くの人の目につきやすい発表形式が望まれる。

かつて短編アニメはかなりマニアックな分野だった。一般的にもっとも目に付きやすい短編アニメはNHK『みんなのうた』だろう。MVのような映像表現としてのアニメーションで、どちらかといえばアート的だ。日本のアートアニメーションクリエイターの作品がテレビで見られる貴重な場で、後から振り返ると意外な人も新人時代に手がけていたりする。たとえば名作として名高い『月のワルツ』は、TVアニメ『宇宙よりも遠い場所』のいしづかあつこ監督のデビュー作だ。

とはいえそれ以外の短編アニメは商業媒体となるとかなり限られる。大友克洋原作、自身の監督作も含めた『迷宮物語』『MEMORIES』『SHORT PEACE』といったものが劇場公開などをされてきたが、これはやはり「大友克洋」というネームバリューと実績によるところは大きい。それ以外で短編アニメは自主上映的な形式か、短編作品を中心に取り上げるアニメ団体の上映会であるとか、そういう場でしか目に付くことがなかった。

それが変化してきている。

最も目につく最大の変化の1つは、いまやアニメファンにはおなじみの深夜5~10分ほどの短編アニメ番組の増加。あれらは5分枠アニメという形式でのコミックなどの宣伝媒体としての意味があったりと、短編アニメである“意義”よりも“理由”が大きいので本記事ではちょっと別とさせて貰うが、とはいえ『ヤマノススメ』に代表されるような予想を上回る広がりと継続を見せるヒット作も誕生している。「別とする」とはしたが思わぬ作品に出会える場となっているのは確かだ。

ここまでに記したような、それ自体で完結をするショートフィルム的な意味合いの短編アニメの変化の1つは企業CMでのショートアニメ作品の増加で、最近でも丸井グループ『猫がくれたまぁるいしあわせ』に続き、この3月から新作『そばへ』をyoutube「マルイノアニメ公式チャンネル」で公開。タイヤメーカーのDUNLOPもサンライズ制作によるショートアニメ『ROAD TO YOU -星降る丘の約束-』を同社サイトで昨秋より公開している。他にもショートアニメCMをウェブ公開している企業はあるが、これらが従来の「アニメを使ったCM」と異なるのは、企業CMであることを前面に出さず、それ自体が1本の短編作品と呼べるドラマ性やクオリティを持っているところだ。この流れを大きく作ったのは新海誠が手がけた大成建設やZ会、そして企業CMの域を超えた作品として話題となった野村不動産グループの『だれかのまなざし』あたりの影響なのではないかと思う。

もう1つの変化は、短編作品にまつわるプロジェクトが増えてきたこと。ざっくりした言い方をすれば「パイロット版」としての意味と「クリエイターの可能性の模索と紹介」としての意味といった役割の変化で、この効果への注目と評価が高まってきたのではないかと感じる。

庵野秀明監督のスタジオカラーとドワンゴがウェブ上で展開していた短編アニメプロジェクト『日本アニメ(ーター)見本市』は13分ほどで、様々な監督やスタジオやアニメーターが参加しての、様々な作品が目白押しの企画だった。手描きアニメ、CG作品。ショートショート的なストーリーの面白さ、表現手法の面白さ、動かすことそのものの面白さと多岐にわたり、このプロジェクトからは後にNHKで前後編の長編となった『龍の歯医者』が生まれている。また、雨宮哲監督による『電光超人グリッドマン boys invent great hero』は、(直接的な企画の繋がりはわからないが)後の同監督による『SSSS.GRIDMAN』の原点とも言える。

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