Dr.ヘル、そしてミケーネ帝国との戦いから10年。訪れた平和な日々の中で生きる彼らの前に、蘇ったDr.ヘルの軍団が襲いかかり新生光子力研究所は陥落。光子力研究所の地下から発掘された謎の魔神像・INFINTYがもつ、世界を全て破壊できる力はDr.ヘルの手に渡ってしまう。あまりに強大な敵の前に為す術が無く、量産型マジンガーでも太刀打ちできない。服従かそれとも…絶望の中で選択を突きつけられる人類。 そこに立ち向かうマジンガーZ!燃える発進シークエンス、ジェットスクランダーの射出、飛び出すロケットパンチ!!もちろんコメディリリーフであるボスとボスボロットの活躍も健在だ。INFINTYとは何なのか。その力は何なのか。Dr.ヘルはなぜ蘇り、何が目的なのか…?!
「見ていて涙が止まらなかった」とは知人の弁だが、頭から終わりまでまさに『マジンガーZ』だ。いや、あの最終回において、敗北と絶望の中でも立ち上がり戦おうとしたマジンガーの魂がそこにはあった。この作品は、あのとき敗れたマジンガーZのリベンジマッチのような作品でもある。随所にちりばめられている旧作ガジェットや、『東映まんがまつり』で上映された『マジンガーZ対暗黒大将軍』の名場面を彷彿とさせるシーンなどもあり、震えが止まる暇が無い。
しかし、今作が素晴らしく打ち震えたのはノスタルジーや、スーパーロボット物の王道復古という点だけではない。王道部分に震わされたのはもちろんなのだが、僕はドラマ部分にこそ理由があったように思う。
本作において兜甲児と剣鉄也が過ごしてきた10年の人生は対比となっている。
かつての戦いの後に軍属となり、炎ジュンと結婚し、まもなく父になろうとしている鉄也。軍属という身になったことは、彼が世界中に幾多あるそれぞれの“正義”の中から、どれかを選んだということの証でもある。彼は人生を選び成長をしてきた大人だ。
対して兜甲児は戦いを離れ、弓さやかと共に新たな光子力研究所で科学者として活動をしているが、彼女との間は全く進展を見せておらず時間が止まったままだ。彼は人生の選択に踏み切れていない。
かつて祖父から「神にも悪魔にもなれる力」であるマジンガーZを託された兜甲児。その時、どちらになることを選んだのか、そしてどのように10年を生きてきたのか。これからをどう生きていくのか。 甲児が蘇ったDr.ヘルとの闘いの中で突きつけられるこの命題は、そのまま40数年を経てきた観客である僕らへの問いかけにすら感じられた。それはそのまま「どんな大人になりたいと願い、魂の何を見失わずに来たのか」。そして「これからどう生きていくのか」という問いかけだ。