Dec 28, 2017 column

アニメ業界における映像配信のフロントライン、今そこで起こっていることとは?

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中国の会社による製作としては、日本にも拠点を置く絵梦(えもん)アニメーションが「ハオライナーズ」のブランドで展開している作品は、この数年コンスタントにほぼ毎シーズン1,2作を放送している。中国の大手動画サイト「ビリビリ」からの事業出資を受けているアニメーション制作会社だが、中国で人気の原作作品だけではなく、日本のゲームやコミックを原作に日本のアニメスタジオで制作した作品もある。純中国製アニメの製作輸出ではなく、日中で展開の出来る作品をコンセプトとしている。 2017年に放送された同社の作品では4月期の『喧嘩番長 乙女 -Girl Beats Boys-』(10分枠)は日本のスパイク・チュンソフトによる同名のゲームが原作。7月期の『セントールの悩み』は村山慶による日本の人気コミックが原作でアニメ制作も日本。一方、10月期の『EVIL OR LIVE』は原作も制作も中国だ。

ハオライナーズ作品以外でも秋期に地上波放送された『GRAMOROUS HEROS』(10分枠)、『やわらか戦車』『英国一家、日本を食べる』などのラレコが手がけた『兄に付ける薬はない!』(5分枠)、WOWOWで放送された『ROBOMASTERS』もそうだった。『ROBOMASTERS』は中国の工科大学を舞台にロボットバトル(日本での『ロボコン』)を題材とした作品だが、製作のDJIは中国の大手ドローンメーカー。ドローンメーカーが製作でドローンが題材の作品を作ったわけだ。中国経済の好景気については過去10年以上さんざん伝えられてきていることだが、僕はカルチャー事業に乗り出せるかどうかが本当に景気が良いのかどうかの1つの象徴だと思っている。それゆえこういう部分に「経済に勢いがあるってこういうことなんだなー…」とつくづく思わされた。 こういった作品が増えたことに今年は「家電に続き、日本のアニメ産業も中国に買われる!」というような論調も目にした。家電業界で起こったような日本の技術者が根こそぎ海外に引っこ抜かれたのと同じようなことが起こるのでは?という懸念だ。 が、それはどうなのだろう?

当然ながらこういった中国製作アニメの基本にあるのは巨大な中国市場を意識してのことだが、その中国市場を形成しているのはざっくりいえば配信事業だ。中国のアニメはTV放送やソフトの時代はもう終わっている。それを考えたとき、このキーワードは「中国が出資・製作が増えた」のではなく「(世界中の)配信事業者による出資・製作が活発化した」というのが正確だろう。 前期のように映像ソフトの販売を最大のリクープ手段としていた国内における従来のスキームは限界だ。いや、国内“だけ”で賄うことが限界なのかもしれない。幸い「アニメ産業レポート」の統計を見ても国内のソフト販売が下がり続けるのに対し、海外販売は伸び続けている。これからを考えたときに出資の方式が時代の流れで変わってきただけなのだろう。TVにおいては独自放送枠まで持ち作品を放送しているハオライナーズが目立つが、実際、アメリカの配信事業・クランチロールが製作に参加しているアニメ作品もかなり増えた。

7月からNHKで放送されたアメコミのスタン・リー原作の『THE REFLECTION』(ザ・リフレクション)は日米合作となっているが、その製作委員会にはクランチロールだけでなく前記の中国・絵梦アニメーションも名を連ねている。 10月期のアニメ『URAHARA』は原宿の「kawaii!」カルチャーと、女の子たちが侵略者とポップなバトルを絡めた作品だったが、原作はクランチロールで連載されているイラストノベル。クランチロールは製作にも加わっているので、この時点で海外配信も前提にされていることが窺える。さかのぼれば今年一大事件と言えるほどに人気となった『けものフレンズ』もアニメ版の製作委員会には日本のドコモ・アニメストアだけでなく、クランチロールも入っている。 配信は一斉に早いスパンで発信が出来ることが強味だ。前期の『ROBOMASTERS』は公式サイトの放送と配信案内を見ると、WOWOWもプラットフォームの1つでしかなく、すごい数のサービスで一斉に配信もスタートした。中には放送の前に配信が先行する作品も現れた。こうなるとTVで放送することの意味そのものが変わってきている。もしかしたらTV放送で先行させる価値そのものが薄らぎ始めているのかもしれない。 民放地上波番組なども配信が行われるようにはなってきたが、多くはまだ局独自か、局が提携するサービスでの配信にとどまっている。いや、配信が出来ればまだいい方で、制作側は配信にも乗せたいが様々な理由でそれがかなわない番組も多い。サービスをまたぎ配信を行っているアニメ市場とは大きな差が出来ている。日本でこの分野のフロントラインにいるのは確実にアニメと映画だ。2017年はそれがはっきりした年でもある。