Mar 10, 2017 column

3月11日に想う『魔法少女まどか☆マギカ』の新聞広告が刻んだ記憶

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その年の4月21日(木)の読売新聞朝刊に掲載された広告を見たとき、僕はなぜか涙が止まらなくなった。 そこにあったのは、『魔法少女まどか☆マギカ』の最終回放送の告知広告だった。深夜アニメ番組の最終回放送のアナウンスが大きな全面広告となっていた。

『魔法少女まどか☆マギカ』は2011年の1月期に放送がスタートした深夜アニメだ。 放送前から「『化物語』などの新房昭之監督」「シャフトが制作」「『ひだまりスケッチ』の蒼樹うめがキャラクターデザイン」「脚本はニトロプラスで幾多の人気ゲームのシナリオを手がけ注目をされてきた虚淵玄」「その人気クリエイターたちが手がける魔法少女物」と大きな話題を集めていた作品だ。 この作品は放送開始後、当初の話題性や注目とは別のベクトルでの話題性や注目を集めていった。「良い意味で裏切られた」という表現があるが、まさにそうだ。“可愛らしいキャラクターでの魔法少女物”という記号から多くの人が想像していたものとはかけ離れたダークファンタジー。回を重ねるごとに明らかになっていく真実。死はすぐ隣に存在し、少女たちの願いは歪な形でしか叶えられない。彼女らは人間であること自体を捨てざるを得ず、しかも先にあるのは絶望と破滅だ。予想が出来ない展開は話題を呼び、視聴者は釘付けになった。 物語はクライマックスに入り、東京圏での放送では鍵となっていたキャラクターの秘密があきらかにならんとしたその日だった。

2011年(平成23年)3月11日(金曜日)午後2時46分 この国に住む誰もが忘れられない日だ。

被害の大きさがもたらしたものは、ありとあらゆることが前代未聞だった。災害によって失われた人命の数も失われた町も誰も経験をしたことが無かった規模であったし、震災によって発生した福島第一原発事故がさらに追い打ちをかけた。被災地以外でも小さなことから大きなことまで、様々な影響が出た。 テレビは全て報道特別番組に切り替わり、その状況は一ヶ月近く続いた。あれほどの長期間にわたり報道特別番組を続けたことは、1953年の日本のテレビ放送開始以来、初めての経験だった。 当たり前だが、アニメもバラエティ番組も画面から消えた。CMすらも消えた。 『魔法少女まどか☆マギカ』も震災前日の放送だった大阪の毎日放送(MBS)では第10話。1日以上遅れの放送だったTBSやCBCでは第9話まで放送されたところで休止となった。

誰もが何かを経験し、何かに向き合い、何かを考えることになる日々がすぎる。

そして1ヶ月以上たった4月21日(木)。前記の最終回放送を伝える全面広告が掲載されたのだ。5人のキャラクターが並んだビジュアルに、大きく「完結編 本日放送」とあった。 この日にラスト3話(10話・11話・12話)の一挙放送があることはあらかじめ発表されていたが、まさか全面広告まで行うとは思わなかった。アニメの、それも深夜アニメの対応としては異例であり、驚いたアニメファンは多かった。