Aug 13, 2026 column

次世代ホラー映像作家はデジタルネイティブ!この夏『バックルームズ』『オブセッション 災愛』がハリウッドを変えた理由 (vol.93)

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ホラー界の新時代はセカンドウェーブで稼ぐ!

興行的に、より成績を伸ばしているのが、ユニバーサル傘下のフォーカス・フィーチャーズによる『オブセッション 災愛』。製作費は約75万ドル (約1.2億円) で、去る5月15日に全米公開。初登場3位で約1720万ドル (約28億円)) の興収を記録しただけでなく、異例の推移でその後も伸び続けた。この映画の主人公ベアは、好きでたまらない女性ニッキーに告白したいが、勇気が出ない。そこで、願いをかなえてくれるという「ワン・ウィッシュ・ウィロー」に遊びのつもりで気持ちを託す。しかし、そのおまじないの呪縛が彼女を様変わりさせ、好きになってくれるどころか、とんでもないモンスターと化して彼を離さない。ニッキーの変貌ぶりは、子供が駄々をこねるようなわがままや欲求の延長にある。彼を束縛する感情をコントロールできず、異常に興奮したり激しく怒り出したりする仕草は怖いが、リアリティがありすぎてかなり笑える。この点が、映画をホラーを超えたエンタメ作品としてぐいぐいと押し上げ、興行成績を伸ばした。ニッキーを演じた新人女優インディ・ナヴァレッテの評価も格段に上がっている。

この映画と『バックルームズ』が違うのは、すでにインターネットで盛り上がったIPを基に映画を開発したのではなく、YouTubeで多くのフォロワーを獲得していた監督兼俳優の新鋭クリエイター、カリー・バーカーのオリジナル脚本で作られた点だ。彼は「that’s a bad idea」というYouTubeチャンネルでコメディーやホラー作品を発信してきた。すでに長編『Milk & Serial』を制作していたバーカー監督だが、この映画はホラー映画をリードするブラムハウス・アトミック・モンスターがプロデュース。現在、世界興収は4億5900万ドル (約752億円) に達し、公開から約3カ月を経てもなお、話題を呼んでいる。

若手クリエイターたちが作るデジタルコンテンツにハリウッド業界が注目し、今年6月には、CAA(クリエイティヴ・アーティスツ・エージェンシー)と米未公開株投資会社TPG傘下のインテグレーテッド・メディア・カンパニーが、2億5000万ドル (約409億円) 規模の持ち株会社「コンパウンド・クリエイティブ・ホールディングス」を設立。成長が見込める世界中のクリエイター企業を買収・運営・育成するため、活動を開始している。

トップYouTuber、たとえばMrBeastを例に挙げてみたい。ミスター・ビーストは、世界で最もチャンネル登録者数が多いといわれているスーパークリエイター。2012年初頭に動画投稿を始め、現在では、大規模な慈善活動や、100日間サバイバルした人に賞金を贈る企画など、極限の精神力や忍耐力を試すサバイバルゲームで、Netflixの『イカゲーム』をリアリティー番組にしたような感覚を生み出し、フォロワーを増やした。メジャースタジオ並みのスポンサーが付き、社員が19人だった時代から、現在は400人を抱え、大規模なセットを使用した動画を発信している。クリエイターエコノミーを再定義したこのトップクリエイターは、現在、Prime Videoでリアリティーショー『ビースト・ゲーム』を配信し、その番組から派生した商品開発など、事業主として止まるところを知らない。今年は、クリエイターエコノミーは成立するのかと半信半疑だった段階を過ぎ、デジタルエコノミーのどの部分に投資するのか、つまりタレントなのか、チャンネルなのか、それを率いる運営会社なのか、というレベルに議論が進んでいる。世界中、とくにハリウッドの映像業界は、これからの映画制作の基盤を模索し、サバイバルに必死である。

文 / 宮国訪香子

作品情報
映画『バックルームズ』

ある日、自らの店の地下から異次元へと迷い込んでしまった男・クラーク。ルールすら存在しない不条理な世界で、彼は怪異に直面していく。なぜ、この空間は存在するのか。そして、ここで一体何が起きているのか‥‥。

監督:ケイン・パーソンズ

出演:キウェテル・イジョフォー、レナーテ・レインスヴェ、マーク・デュプラス、フィン・ベネット他

配給:ハピネットファントム・スタジオ

© 2026 Backrooms Rights LLC, PC Films, LLC. All Rights Reserved.

2026年9月4日(金) TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開

公式サイト backrooms

映画『オブセッション 災愛』

想い続けた彼女の心を掴むため、青年は禁じられた願いに手を伸ばす。「ワン・ウィッシュ・ウィロー」 ──その願いの代償、膨張する“愛”に襲われ、想像を絶する惨劇に呑み込まれていく。

監督・脚本・編集:カリー・バーカー

出演:マイケル・ジョンストン、インディ・ナヴァレッテ、クーパー・トムリンソン、メーガン・ローレス

配給:パルコ、ユニバーサル映画

© 2026 Focus Features LLC. 

公開中

公式サイト obsaiai

宮国訪香子

L.A.在住映画ライター・プロデューサー
TVドキュメンタリー番組制作助手を経て渡米。 ニューヨーク大学大学院シネマ・スタディーズ修士課程卒業後、ロサンゼルスで映画エンタメTV番組制作、米独立系映画製作のコーディネーター、プロデューサー、日米宣伝チームのアドバイザー、現在は北米最大規模のアカデミー賞前哨戦、クリティクス・チョイス・アワードの米放送映画批評家協会会員。趣味は俳句とワインと山登り。