レディー・ガガ、そしてインド映画主題歌「ナートゥ・ナートゥ」が鳴り響いた第95回アカデミー賞
今年のアカデミー賞は前年よりも視聴率が向上。スキャンダルもなく、司会者のジョークも好評で平穏に幕を閉じた。今年は赤いカーテンにシャンペン色のカーペットで、雨予報に対応したアカデミー賞会場。訪れた出席者の中で報道陣が最も注目したのが、ヴェルサーチの黒のドレスで登場したレディー・ガガ。授賞式に出席しないという発表を当日の朝に返上。歌曲賞にノミネートされ、堂々たる姿で登場した歌姫に場内は騒然。レディー・ガガの横でカメラマンが転倒し、それに気づいたレディー・ガガが戻って手をさしだす映像はソーシャルメディアで何度も発信され、ガガの思いやりのある行動に声援が送られていた。
レディー・ガガは『トップガン マーヴェリック』(2022) の歌曲「Hold My Hand」で、3度目のアカデミー賞歌曲賞ノミネート。舞台にはオートクチュールのドレスから一転、Tシャツとジーンズ姿で登場。「この歌がとてもパーソナルなもので、誰にでもヒーローが必要な時があるわ」と、観客に語りかけながら心情あふれるパフォーマンスを披露した。ガガの2度目のノミネートは『アリー/ スター誕生』(2018) の「Shallow」で、その際に初歌曲賞受賞。最初にノミネートされたのはドキュメンタリー映画『ハンティング・グラウンド』(2015) の主題歌「Til It Happens To You」で、その曲を共作したのが、今年、同部門でノミネートされていたダイアン・ウォーレンである。
今年14回目のノミネートでアカデミー賞名誉賞を受賞したウォーレンは知る人ぞ知る歌曲のクィーン。80年代から大作映画の主題歌など、ヒット曲は1000曲以上。アレサ・フランクリン,エルトン・ジョン,セリーヌ・ディオン,グロリア・エステファン、エアロスミスなど、トップアーティストが彼女の曲を歌ってきた。アカデミー賞ではソフィア・カーソンが映画『私たちの声』(2022) の主題歌「Applause」を歌い、ダイアン・ウォーレンが白いスーツでピアノを弾いて観客を魅了。映画『私たちの声』は世界中から選りすぐられた7人の女性監督による7つの短編で織りなすオムニバス映画。日本の女性を描いた短編は杏 主演、呉美保監督の『私の一週間』。
今年で95回目を迎えたアカデミー賞。その放送が最初にTV放送されるようになったのは1953年で、カラーテレビで放送されたのが1966年。それぞれの年にノミネートされた映画作品の歌や踊りが楽しいことがテレビ番組としての面白さだった。今年は歌曲賞にノミネートされていたリアーナ、『ラストエンペラー』(1987) のスコアでお馴染みのデヴィッド・バーン他、歌唱パフォーマンスはどれも華があり、授賞式オープニングも、トップガンの映像から司会者がパラシュートで舞い降りてきて、エンディングでインド映画『RRR』の歌曲「ナートゥ・ナートゥ」の高速ダンサーとともに幕裏に導かれるという演出。
去年、秋から始まった映画『RRR』の宣伝活動はアカデミー賞ギリギリまで、そのペースを崩すことなく力が入っていて、あるアメリカ人女性は映画を28回観るほど夢中になったというくらい人気があった。アカデミー賞に向けての前哨戦期間は長く、トロント映画祭あたりから約半年の期間に浮上しては消えていく作品も多い中、去る1月のクリティクス・チョイス・アワードで外国語映画賞と歌曲賞の両方を受賞した映画『RRR』は想像を絶するアクションと高速ダンス、そして英国植民地時代に抵抗する友情物語で多くの人を虜にしたのである。受賞スピーチでは、作曲したM.M.キーラヴァーニがアメリカのシンガーソングライター、カーペンターズが好きだったことに触れ、楽曲「トップ・オブ・ザ・ワールド」を口ずさみ、まさに世界の頂点に立つことができました!とインド映画界の勢いを担ぐスピーチで場を沸かせていた。