Oct 29, 2022 interview

S.S.ラージャマウリ監督が語る 『RRR』のアクションもダンスも、全ては感情を伝えるためにある

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舞台は1920年、英国植民地時代のインド。英国軍にさらわれた幼い少女を救うため、立ち上がるビーム(NTR Jr.)。大義のため英国政府の警察となるラーマ(ラーム・チャラン)。熱い思いを胸に秘めた男たちが“運命”に導かれて出会い、唯一無二の親友となる。しかし、ある事件をきっかけに、それぞれの“宿命”に切り裂かれる2人はやがて究極の選択を迫られることに‥‥。

全世界に“バーフバリ旋風”を巻き起こして数々の興行新記録を打ち立て、インド映画の歴史を変えた伝説の2部作『バーフバリ 伝説誕生』(2015年)と『バーフバリ 王の凱旋』(2017年)。そのS.S.ラージャマウリ監督の最新作、インド映画界のスーパースター、NTR Jr.とラーム・チャランをダブル主演に迎えてインド映画史上最高の製作費7,200万ドル超をかけた究極のアクション・エンタテインメント『RRR』が、ついに日本公開。

予告編制作会社バカ・ザ・バッカ代表の池ノ辺直子が映画大好きな業界の人たちと語り合う『映画は愛よ!』、今回は、プロモーションのために来日したS.S.ラージャマウリ監督に、本作品の見どころ、映画への想いなどを伺いました。

ふたりのスーパーヒーローの友情と宿命の物語

池ノ辺 本当に素晴らしい映画でした。『アベンジャーズ』のような迫力、『トップガン』のような感動。スケールの大きさにも圧倒されて、最後までワクワクドキドキが止まりませんでした。

ラージャマウリ ありがとうございます。

池ノ辺 この作品の構想はどこから来たのでしょうか。

ラージャマウリ 私はひとつ作品を撮り終えたら、それは一切忘れて、新鮮な気持ちで、自分をワクワクさせてくれるようなストーリーを考えます。それで、ふたりのスターを中心とした作品を撮りたいと思いました。

例えば、実在の伝説的なヒーローが、もしも出会っていたら、そして友情を育んだりあるいは敵対したり、それぞれの宿命に翻弄される。そんなさまざまな交流があったら面白いんじゃないか。そして実在のふたりの映画界のスーパースターが、そのふたりのヒーローを演じたらどうだろうか。そんなアイデアが浮かんだところから始まりました。

池ノ辺 ストーリーを組み立てていく上で、何か発想の源になったようなものはあるんですか。

ラージャマウリ まず一つには、インドの叙事詩「マハーバーラタ」があります。叙事詩の登場人物の中でも特に魅力的なドゥルヨーダナとカルナというふたりの友情、お互いへの信頼と敬意。この素晴らしい物語が、今回の作品の源になっています。さらに、子供の頃から触れてきた、インドだけでなく世界のさまざまな物語、映画、そこに登場するヒーローたちの影響も、もちろんあります。ふたりのすごいヒーローが出会って、友情が生まれて、というような想像を巡らすのはワクワクすることでした。

池ノ辺 この映画は、まさに日本人の好む仁義とか人情、そうしたものも感じられました。インドと日本の精神性には、似たところもあるんでしょうか。

ラージャマウリ インドの物語でも、人情というのは欠かせないものです。ただ、例えば『バーフバリ』シリーズが日本でも受け入れられたからと言って、私自身が、日本人の皆さんの好むものを理解できているかというと、そうは言えないでしょう。

それでも、これからもっと私の映画が公開されたり、何度も日本に来たりしているうちに、やがては日本的な心情も理解できるようになるのかなという思いもあります。魂の深い部分で日本とインドの人々が繋がっていたら素晴らしいですよね。