最大の強敵キングギドラとゴジラの激闘の歴史
モスラとラドン、ゴジラという、それぞれに単独主演作があるスター怪獣がチームを組んで『三大怪獣 地球最大の決戦』(64年)で戦ったのが、キングギドラである。主役を張れる3大怪獣がチームを組んでようやく戦えた強力な敵がキングギドラだったのだ。
簡単にキングギドラについて紹介すると、(作品によって設定に違いはあるが)、“地球を侵略する宇宙人のために戦う金色の宇宙超怪獣”というのが、基本的な立ち位置である。三つ首の元ネタはソビエト映画『豪勇イリヤ 巨竜と魔王征服』(56年)の巨竜とも、円谷英二が特撮を担当した『日本誕生』(59年)の八岐大蛇とも言われている。
『キング・オブ・モンスターズ』のキングギドラはCGで描かれるが、日本のゴジラ映画では着ぐるみなどの造形物で表現された。最大の特徴である3本の首はそれぞれピアノ線で吊って操って演技させている(これを「操演」と呼ぶ)。CGとなった『キング・オブ・モンスターズ』のキングギドラの3本首は、操演では難しい動きも見せているので、そこにも注目していただきたい。
『三大怪獣 地球最大の決戦』以降も、たびたびキングギドラとゴジラは戦い、キングギドラは「ゴジラにとって最大の強敵」と呼ばれるようになった。そんなライバルである、ゴジラとキングギドラの激闘の歴史を振り返ってみよう。
初登場となる『三大怪獣 地球最大の決戦』では、キングギドラとゴジラ、幼虫モスラ、ラドンの連合軍が激突。3体が同時にぶつかって互角というところからもキングギドラの強さがうかがえる。ラドンの背中に乗せられたモスラの攻撃という援護を受けながらゴジラがキングギドラを投げ飛ばす。3対1の戦いならではの連携プレイが新鮮だ。
翌年の『怪獣大戦争』(65年)では、ゴジラとラドンのタッグがキングギドラと戦う。最初の戦いの場は、木星の衛星のX星。宇宙が舞台で重力が軽いため、ゴジラは軽快な跳び技も使ってキングギドラを攻撃。ゴジラは跳び技だけでなく、当時流行していた『おそ松くん』のイヤミの「シェー」のポーズでのジャンプまで披露している。舞台を地球に移しての再戦では、ラドンに持ち上げられたゴジラの体当たりという合体攻撃でキングギドラを攻撃する。
11体も怪獣が登場する怪獣オールスター映画『怪獣総進撃』(68年)で、ただ1体で悪役を務めたのがキングギドラ。ゴジラたち10体を相手にして一歩も引かないでいられるのは、やはりキングギドラだけだろう。ただ、さすがのキングギドラも10体の怪獣が相手だと分が悪かったのか、最後には「そこまでやらなくても……」と思うほどボコボコにされてしまう。ちなみに、『GODZILLA ゴジラ』のギャレス・エドワーズ監督は、本作をお気に入りのゴジラ映画として挙げている。
キングギドラ同様、悪役怪獣として人気の高いガイガンが初登場する『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』(72年)では、キングギドラはガイガンのパートナーを務めてゴジラ&アンギラス組と対戦。特撮ファンの間で、怪獣同士の肉弾戦を「怪獣プロレス」と呼ぶことがあるが、ここで繰り広げられるのはまさに怪獣プロレスのタッグマッチ。キングギドラと戦うゴジラが、背後から襲ってきたガイガンを避けて、キングギドラとガイガンを正面衝突させるという展開は、いかにもプロレス的だ。