May 25, 2019 column

アメリカにおけるゴジラ大進撃の歩み、モンスター・バースの展望

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さらなる広がりを見せる“モンスター・バース”、ゴジラ対キングコングの勝者は?

レジェンダリー・ピクチャーズの設立者であるトーマス・タルは、もともとは金融界で成功したビジネスマンだったが、映画・アメコミ・ゲームそして怪獣をこよなく愛する男としても知られている。『ダークナイト』『パシフィック・リム』などといった映画のラインナップには、タルのそういった嗜好が表れている。

注目すべきなのは、レジェンダリー・ピクチャーズが『キングコング:髑髏島の巨神』(17年)によって、アメリカが誇るモンスターのキングコングも復活させた点だ。レジェンダリー・ピクチャーズとワーナー・ブラザースは、『GODZILLA ゴジラ』『キングコング:髑髏島の巨神』『キング・オブ・モンスターズ』を共通の世界観を持った作品“モンスター・バース”として製作している。つまり、ゴジラが存在する世界にはキングコングも存在するというわけだ。

『キング・オブ・モンスターズ』では、ゴジラ、キングギドラ、モスラ、ラドンなどの怪獣同士の激しい戦いが描かれるが、その後にゴジラを待っているのは、2020年公開予定の『ゴジラVSコング(仮題)』でのキングコングとの頂上決戦だ。なお、同作には小栗旬の出演が決定している。『キング・オブ・モンスターズ』の中にもキングコングとゴジラの激突を予感させる描写が含まれていて、期待が高まる。

1962年には日本で『キングコング対ゴジラ』が製作されていて、すでにゴジラとキングコングは戦っている。同作品は非常に痛快な娯楽作だったが、ここでのゴジラとキングコングの対決は双方が海に落ちて終わるという、両者リングアウト引き分けのような結末となっている。

ゴジラは日本を代表する怪獣で、東宝の看板も背負っている。一方のキングコングもアメリカを代表するモンスターであり、そもそもゴジラの生みの親である特技監督・円谷英二にも多大な影響を与えた偉大な存在だ。日米の映画ファンの反応を考えると、どちらかが勝利してどちらかが敗北する結末は簡単にはつけづらい。となると、また『キングコング対ゴジラ』のような引き分けに……?

だが、『ゴジラVSコング(仮題)』の監督アダム・ウィンガードはその難しい課題にチャレンジするつもりのようで、「映画を観た観客には“勝者がいた”と感じながら劇場を出てほしい」と海外のエンタメサイトの取材で話している。「オリジナルの映画(『キングコング対ゴジラ』)はとても面白かったが、決着がつかなかったのが少し残念だった。人々はいまだにゴジラとキングコングのどちらが勝ったのか議論している」ともウィンガードは語っているので、誰が見てもどちらが勝ったのかはっきり分かる決着をつけるつもりのようだ。

『キングコング対ゴジラ』は引き分けという意見が大半だが、ゴジラとキングコングが海中に沈んだ後で姿を見せるのがキングコングだけなので、勝ったのはキングコングという見方もある。そうなると、「今度はゴジラに花を持たせるのではないか?」とも推測できるが、果たして……?

どういった結果になるにせよ、インタビューなどでゴジラ映画への思い入れを熱く語っているウィンガードなので、対決をドラマチックで面白いものにしてくれると願いたい。その勝敗の行方も含めて、モンスター・バースの今後の展開に対する期待が非常に高まる。まずは、『キング・オブ・モンスターズ』でのゴジラの激闘をしっかりと見届けよう。

文/武富元太郎

作品情報
『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』

『GODZILLA ゴジラ』から5年後の世界を舞台に、復活した神話時代のモスラ、ラドン、キングギドラらの怪獣たちとゴジラの戦い、それによって引き起こされる世界の破滅を阻止しようとする未確認生物特務機関モナークの活躍を描く。単なる伝説にすぎないと思われていた古来の圧倒的な力を持つ生物たちが再び目覚め、世界の覇権をかけて争いを始めた時、全人類の存在すらもが危ぶまれてゆく――。
監督・脚本:マイケル・ドハティ
脚本:ザック・シールズ
出演:カイル・チャンドラー、ヴェラ・ファーミガ、ミリー・ボビー・ブラウン、サリー・ホーキンス、渡辺謙、チャン・ツィイー ほか
配給:東宝
2019年5月31日(金)公開
© 2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.
公式サイト:https://godzilla-movie.jp/