Jun 17, 2026 column

日本映画の人気はホンモノ!? 世界最大の日本映画祭「ニッポン・コネクション」で見えた“熱狂”の理由

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ピュア”な映画作りがどこまで世界に登りつめられるか

本映画祭の会期中に、一つ大変興味深いセミナーが開催された。昨年のニッポン・コネクションでも招待ゲストとして参加されていた、アメリカ出身のプロデューサー、エリック・ニアリ氏が自身の国際共同製作の経験を基に、監督やプロデューサーらとのオープン・ディスカッションを実施。そこでニヤリ氏から大変興味深い考察があった。

エリック・ニアリ氏

ニヤリ氏曰く「昨今、一緒に映画作りをしている監督たちは皆、海外の様々なプロジェクト・マーケットに企画段階から参加し、出資を募り、企画を精査し、数年単位で映画を仕上げている。そうして出来上がった映画を世界の映画祭に出すのに、また数年かかることもあるので、日本の公開時期が決まった製作委員会形式でできている映画は、結果的には世界進出しにくい」と。また、ニヤリ氏が何度も強調していたことが「“pure  (ピュア) ”である」ということの価値であった。ニヤリ氏はまた「“pure  (ピュア) ”な映画」という意味を、大きく2つの差異として比べて説明。一つはカンヌ、ベネチア、ベルリンのような海外の主要映画祭に入るために海外資本や海外セールス・カンパニーらと座組みされている映画や、製作委員会形式で複数の企業から構成された企画とは異なること。もう一つは、出資者が損得関係なくこの映画の企画に賛同したいと思って資金が調達できている映画であること。その出資者達はある映画の企画に投資することによって「自らの新しい名刺を作る」ことができ、それが彼らの“pure  (ピュア) ”な喜びであり、最終的な利益将に繋がっていくのである。単純に映画の売上から利益を得ようとしているだけの出資者だけではない、より長期的なビジョンを見据えた投資家を見つけることによって、より純、いわゆる“pure”度の高い映画が出来上がる、とニアリ氏は述べた。

どれだけ純“pure”度が高い日本映画が求められているのかが、観客動員や受賞結果に顕著に表れた今年のニッポン・コネクション。お客様と映画人達の需要と供給が見事にマッチした作品セレクションであり、だからこそ映画祭としての規模が拡大していることが見事に証明された年であった。

文 / 高松美由紀
写真提供:©︎Oleksandra Tkach / NC26

今年は上映映画館が増えて、観客動員数アップ
第26回 ニッポン・コネクション2026

2000年に設立され、NPO法人ニッポン・コネクションの、主にボランティアで活動するチームによって運営されている。日本映画に関する世界最大のプラットフォームであり、毎年初夏にドイツのフランクフルト市内の複数の会場で開催。過去には、桃井かおり、豊田利晃、若松孝二、塚本晋也、緒方明 、平沢剛、荒井晴彦 、篠崎誠、河崎実、山下敦弘、廣木隆一、佐藤信介、堤幸彦、熊切和嘉、安藤サクラ、武正晴、西川美和、緒方明、田口トモロヲ、山村浩二、行定勲、渋川清彦、阪本順治、役所広司らといった映画人たちが本映画祭に参加。

開催:ドイツ・フランクフルト

映画祭:2026/06/02 ~ 2026/06/07

公式サイト https://nipponconnection.com/

作品情報
映画『箱の中の羊』

息子を亡くして2年、建築家の音々と工務店の二代目社長を務める健介の甲本夫婦は、息子・翔の姿をしたヒューマノイドを迎え入れることになる。彼が到着した日、「おかえり」と駆け寄り喜びを隠さない音々と、戸惑いを隠せない硬い表情の健介。「パパだよね」と問いかけられた健介は、「おじさんでええよ」と答えるのだった。少しずつ動き始める家族の時間。静かに広がっていく波紋。ほどなく予期せぬ事態が起こり、夫婦がそれぞれに抱く息子の死への想いが露わになっていくのだった。

監督・脚本・編集:是枝裕和

主演:綾瀬はるか、大悟(千鳥)、桒木里夢、清野菜名、寛一郎、柊木陽太、角田晃広、野呂佳代、星野真里、中島歩、余貴美子、田中泯

配給:東宝・ギャガ

©2026フジテレビジョン・ギャガ・東宝・AOI Pro

公開中
  
公式サイト hakononakanohitsuji

映画『急に具合が悪くなる』

パリ郊外の介護施設「⾃由の庭」の施設長であるマリー=ルー・フォンテーヌは⼊居者を⼈間らしくケアすることを理想としつつ、人手不足やスタッフの無理解などに悩まされている。そんな中、マリー=ルーは森崎真理という日本人の演出家に出会う。がん闘病中の真理が演出するのは、自閉スペクトラム症の孫・智樹と行動を共にする俳優・清宮吾朗の一人芝居。真理の描く演劇に勇気をもらったマリー=ルー。同じ名前の響きを持つ偶然に導かれて、二人の交流が始まる。しかし、あるとき真理は「急に具合が悪くなる」。真理の病の進行とともに、二人の関係は劇的に深まり、互いの魂を通わせ合うようになる。

監督:濱口竜介

原作:宮野真生子・磯野真穂著『急に具合が悪くなる』(晶文社)

主演:ヴィルジニー・エフィラ、岡本多緒、長塚京三、黒崎煌代

© 2026 Cinéfrance Studios – Arte France Cinéma – Office Shirous – Bitters End – Heimatfilm – Tarantula – Gapbusters – Same Player – Soudain JPN Partners

2026年6月19日(金) 全国ロードショー

公式サイト soudain

映画『ナギダイアリー』

近くの山から切り出される木でひとり彫刻を作る寄子。ある日、東京と台湾で建築家として活躍してきた友梨は、 数日間の休暇をとって、別れた夫の姉・寄子のもとを訪れる。都会にはない「ナギ」での穏やかな生活。妻を亡くした寄子の幼なじみの好浩、そして息子の春樹とその親友の圭太──人々との出会いは、日常に小さな揺らぎをもたらしていく。やがて、彫刻のモデルを毎晩つとめるなかで寄子の知られざる喪失に触れ、友梨にも変化が起きていく。

監督・脚本:深田晃司

出演:松たか子、石橋静河、川口和空、藤原聖、藤間爽子、水間ロン、申瑞季、
松山ケンイチ

配給:スターサンズ

© 2026 ナギダイアリー・パートナーズ (スターサンズ/八朔ラボ/ワンダーストラック) / Survivance / Momo Film Co.

2026年9月25日(金) 新宿ピカデリー、ユーロスペース ほか全国公開

公式サイト

高松 美由紀

スイス特派員
1973年生まれ、兵庫県出身。アメリカの大学卒業後、(株)トライアルで映画宣伝に従事。その後、東京国際映画祭はじめ国内外の映画祭にて運営や広報を経験しながら、映画の宣伝などを続ける。1999年から(株)TBSテレビにて、映画専門の海外セールスチームに所属、「下妻物語」「NANA」「日本沈没」など日本映画を海外に販売、映画祭への出品などを経験、退社後の2013年に(株)Free Stone Productions(映画&アニメなどの国内外PRおよび海外展開を提供する会社)を立ち上げ、現在も継続しつつ、合同会社Wonder M(ワンダーエム)でスイスを拠点にエンタテインメントの魅力を発信中。