日本映画のネクスト・ジェネシス (=次創世) 期とは?
今年のニッポン・シネマ賞は、本映画祭でのオープニングも飾った『FUJIKO』(木村太一監督) に授与された。本作はシングルマザーである主人公の富士子が生き抜く激動の日々を楽観的な視点と不条理なユーモアを織り交ぜながら、テンポ良くポジティブに描いている。本作は、MEGUMIがプロデュースということでも話題になっているが、それ以上に木村監督のキャリアが大変興味深い。10代の頃からイギリスに住み始め、ミュージックビデオやCMなどを手がけており、今回は自らの母親の実体験をモチーフにオリジナルの物語を描いている。リリー・フランキー、YOU、岸本佳代子、そしてイッセー尾形らの豪華なキャストとともに、長編実写映画に挑戦し、先般開催されたウディネ・ファーイースト映画祭でも観客賞をダブルで受賞したりと、次々と映画祭をホッピングしている。舞台挨拶などでもイギリス訛りの英語を流暢に話す木村監督は、日本と海外の垣根なく“映画”という共通言語で堂々と独自の世界観を見せつけていた。
また、今回で12回目となるニッポン・ヴィジョンズ観客賞および審査員賞は、山内ケンジ監督の『アジアのユニークな国』にダブル授与された。本作の公式サイトでは「ひとつ屋根の下で、妻は1階では介護を、2階では違法風俗を行なっている。そんなとある一家を覗いてみると見えてくる、とある国の姿とは。 純粋社会派深刻喜劇の新作」と明記されているように、Barbara Wurm (ベルリン国際映画祭フォーラム部門ディレクター)、Hayley Scanlon (映画批評家)、石川慶 (映画監督) からなる今年の映画祭での国際審査員が「ユーモアを用いながら、日本社会におけるジェンダー規範、政治的な問題、そしてさまざまなタブーに鋭く切り込む、知的で大胆な語り口を高く評価」と作品の意図を汲んだコメントを発表している。山内ケンジ監督もまた、映画畑一本からのキャリア構築ではなく、演劇界では「城山羊の会」を主宰しており、数々の演劇賞も受賞、CMディレクターとしても活躍しながら、本作の監督に至っている。
木村太一監督にしても、山内ケンジ監督にしても、今年のニッポン・コネクションで一際注目されていた作品たちは、あくまでも自分が作りたいと思ったオリジナル映画で勝負していたことである。今までは、原作や漫画を元にした映画というものが、海外の観客にもてはやされた時代もあったが、今年は日本映画に対する初心者の参加が多いと言われている本映画祭でも、新人監督のオリジナル映画など、より挑戦的な映画に注目が集まっていた。まるで、日本に観光に来た海外の旅行者たちが、寿司やトンカツのような定番の日本食以外にも挑戦しようという流れと似ている気がするのは筆者だけだろうか。
この他にも、今年初めて創設されたニッポン・アニメーション・ショート部門などもあり、世界が求めている“日本からの映画”というものが如実に反映された招待作品群とその受賞結果であった。まさに、今年はオリジナルの個性とアニメのポテンシャルがフィーチャーされたネクスト・ジェネシス (=次創世) 期への突入の始まりだと言える。
