また、中国企業の手先役で中国語を操る酒向芳の怪優っぷり、NPO 職員役で事件の謎を追う多部未華子の凛々しさ、彼女の同僚を演じる最近注目の若手俳優・森優作。ミュージカルで活躍する柿澤勇人は政界の貴公子とも呼ばれる二世議員・桐野役を好演している。さらには、諜報会社の同僚に市原隼人、元AN通信エージェントで鷹野と深いかかわりのある人物に安藤政信が扮するという豪華さ。主役級の俳優がずらり勢揃いして、どの場面も緊張感にみなぎっている。
藤原竜也ファンなら、お、と思うのが、心臓に仕掛けられた爆弾。藤原の出世作である「バトル・ロワイアル」(00年 深作欣二監督)は爆弾が仕掛けられた首輪をはめられた中学生たちがサバイバルするストーリーであった。生き残るためにはクラスメイトを殺さないといけないという究極の状況に置かれた藤原演じる主人公は殺さずに逃げようとするが、対して安藤政信演じる人物はヒトを殺しまくっていく。安藤は一言も言葉を発さず、それが恐怖を高めた。
「バトル・ロワイアル」で注目された藤原と安藤が心臓に爆弾を埋め込まれるという宿命を背負って生きる「太陽は動かない」での共演にはすこし胸が熱くなる。ちなみに安藤の役はドラマのオリジナルキャラクターである。
「太陽は動かないーTHE ECLIPSE―」は原作をもとに作られたオリジナルストーリー。原作の「森は知っている」で鷹野がスパイになる前野少年時代は描かれているが、ドラマは、鷹野が産業スパイになえうなったばかりの頃を描くエピソード1.5的な部分がある。 映画もドラマも監督は「海猿」「MOZU」などスケールの大きなエンタメ作品を撮ったら右に出る者なしの羽住英一郎。冒頭の爆破現場はブルガリアで撮影された。これは、映画と同時制作だからこそ実現したものであろう。凝った装置や無国籍感が漂うカラフルな照明などで見た目にも工夫がされている。コインロッカーのシーンなども印象的である。
映画は本来、藤原竜也の誕生日でもある5月15日に公開される予定だったが、コロナ禍による緊急事態宣言によって公開が延期になり(近日公開予定)、映画公開の後放送される予定だったドラマ版が先行して放送される形になった。
映画の延期は残念で、公開が待たれるが、先にドラマを見て準備しておくのも悪くなかった気がする。エピソード1.5的な部分によって「太陽は動かない」の世界観に入りやすくなっているのである。しかも副題の「ーTHE ECLIPSE ー 」(触)に合うように、第5回放送日の6月21日(日)には日蝕があったという狙ったようなタイミング。5話は、政界の中尊寺、永島、桐野たち政治家たちの思惑が明確になってきてそれぞれのシーンには派手なアクションに負けない心理戦の面白さがあった。そして、いよいよ最終回。それぞれの人物が抱えたいろいろな問題がすべて解決するのか、気になる。
6月28日(日)には最終回の放送を前に「まだ間に合う! 1〜5話一挙放送」があるので、せっかちさんならここで一気に全6話見ることも可能である。また7月11日まで第1話が無料配信されている。
文・木俣冬
ストーリー原案:吉田修一
監督:羽住英一郎
脚本:林民夫
音楽:菅野祐悟
出演:藤原竜也 竹内涼真 佐藤浩市
製作著作:WOWOW
©2020 WOWOW INC.
【Final Episode】
6月28日(日)夜10:00
【1〜5話一挙放送】WOWOWプライム
6月28日(日)午後5:30~
【第1話まるごと無料配信】公式サイト
7/11(土)よる7:00まで
『連続ドラマW 太陽は動かない -THE ECLIPSE-』公式サイト:
https://www.wowow.co.jp/drama/original/taiyodrama/