Oct 15, 2017 column

『わろてんか』制作統括の後藤プロデューサーに“ドラマのツボ”を教えてもらいました

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──“ラブコメ朝ドラ”というのもキャッチーですが、そういうわけではない?

そういうふうに観てもらうこともできるということですね、たぶん。ぱっと見は、いわゆる王道の朝ドラになっていると思います。ちょっと違うのは、 “ここは笑かそうとしているんだな”とか“ここは笑っていいんだな”、っていう部分があるところですかね。たぶん慣れてくると、そこが癖になるドラマだと思います。

──いわゆる関西風のコテコテではなく、シュールな笑いってことでしょうか?

いや、関西風のコテコテも入っています。1話では、通りを歩いている人が全員一斉にコケるという、いわゆる新喜劇的な場面もありました。なぜ、ここでそれをする? みたいなギャグも時々あります。ただ、それを朝ドラでやるのは、もしかしたらシュールなのかもしれません(笑)。逆に気になっているのは、当初、僕らが会見などで笑い笑いと言い過ぎたことがあったのと、寄席を経営する主人公の物語というのもあって、「よっぽど笑わせてくれるんだ」と視聴者の方の期待値が高くなりすぎている気がして。でも、人情ドラマとして、泣きのシーンもしっかり作っていますし、その上で、ほろっとしたあとに笑える場面もご用意してあります。藤山寛美さんの松竹新喜劇のような的な人情喜劇から、ギャグが連鎖する吉本新喜劇的な笑いまで、いわゆる大阪のお笑いを、いかに全国の方に楽しんでいただける形にできるかが、ある意味このドラマの重要な課題かもしれません。でも、ディレクターたちが優秀なので、そこは大丈夫だと思います。

 

 

──脚本家の吉田智子さんは東京のご出身でしたっけ?

そうですね、東京の方です。

──ラブストーリーのイメージが強い方ですから、お笑いに関しては、後藤さんのほうでフォローされているとか。

そうですね、僕も演出の本木も、とくに落語が好きで、昔からよく聞いていて。なので、笑わせる台詞なんかはアイデアを出させてもらってます。

──後藤さんは大阪出身だそうですね。

と言っても、25年ぶりに大阪に戻ってきたもので……。すっかり東京ナイズされて、大阪のノリが合わなくなってしまいました……というのは冗談で(笑)、子供の頃から、お笑いに慣れ親しんできた三つ子の魂は健在です。当時、土曜日、日曜日にはずっとお笑いの番組を放送していたんですね。それらを観て育ってきたので細胞レベルに何かが刻まれているような気がします。

──後藤さんのフェイバリット作品というか、笑いの原点を教えてください。

まさしく落語です。小学校のとき、寝る前に落語を聞いていました。その頃、好きだったのは桂枝雀さん、古今亭志ん朝さん、立川談志さん。落語って、たいてい、どこか抜けているんだけれど懸命に生きているみたいな人がたくさん出てきますよね。そういうところがものすごく好きなんです。だから、その後も、映画を観るときも、コメディ系を好んで観ていました。大学では、現代アメリカ演劇を専攻して、ニール・サイモンで卒論を書きました。だから、やっぱりずっと喜劇が好きで、いまに至っています。