養子がたくさん出てくるわけ
──岡田さんの作風は、上品ですよね。お話も登場人物もぐいぐいしてない(笑)。
基本的にぐいぐいした人は苦手かもしれない。特に男の役にはそういう人が多いかもしれないです。どちかっていうと女の人のほうが、ぐいぐいしていますよね(笑)。
──今回、面白かったのが、島谷も三男も、みね子と時子を諦めて、身を引いています。とくに三男は切なかった。
三男には勝算がありました。三男役の泉澤祐希くんとさおり役の伊藤沙莉ちゃんには、オーディションのときから、このふたりをコンビにしたら、まとまった面白い話が作れると思ったんですよ。だから、みね子のメインステージに近づいてくるのではなくて、米屋は米屋で切り離すことにしました。現代から見たら、きつい状況かもしれないけれど、面白くなった自信があります(笑)。
──なし崩しに婿養子に取り込まれていくという、なんとも言えない状況をあんなに面白くするのは、才能ですよね。三男が婿養子で、柏木堂と福翠楼とふたつの家が養子をもらっていて、養子だらけなのですが、あの頃はそうでしたか?
もちろん、みんながみんなそうではないですが、ある種、そんなにすごいことではなくありましたね。僕の子供の頃、近所の子供もいない夫婦が親戚の子をもらってくるみたいなことがありました。今、ドラマでそれをやると、ものすごく悲惨な別れを経て来る感じですが、当時の映画を観ると、わりとあっさり送り出すシーンがあるんですよ。
──今だと、遊川和彦さんが、シビアに書いていますが(2016年、テレビ朝日『はじめまして、愛しています』)岡田さんの手にかかるとこんなにあっさり何組も養子が(笑)。
そうそう、ワンクールかけて書く話ですよね(笑)。もちろん、もらわれてきたことの切なさがあっただろうけれど、社会がそれをそんなに珍しいことと思ってなかったから、婿養子も含め、そんなに悲惨な選択ではなかったと僕は考えます。
撮影 / 江藤海彦
岡田惠和(Yoshikazu Okada)
1959年2月11日、東京都生まれ。脚本家。90年にデビュー、94年『若者のすべて』で、連続ドラマで初のオリジナル作品執筆、以後、人気ドラマ、映画の脚本を数多く手がける。主な作品に、連続テレビ小説『ちゅらさん』『おひさま』、『ビーチボーイズ』『彼女たちの時代』『銭ゲバ』『最後から二番目の恋』『泣くな、はらちゃん』『スターマン・この星の恋』『さよなら私』『ど根性ガエル』『奇跡の人』、映画『いま、会いにゆきます』『阪急電車 片道15分の恋』『県庁おもてなし課』『世界から猫が消えたなら』、舞台『スタンド・バイ・ユー〜家庭内再婚〜』『ミッドナイト・イン・バリ』など多数がある。向田邦子賞、橋田壽賀子賞などを受賞。NHK—FMで『岡田惠和の今宵、ロックバーで、〜ドラマな人々の音楽談義』のパーソナリティーをつとめている。『奇跡の人』は平成28年度、文化庁芸術祭賞大賞を受賞した。
10月からは『ユニバーサル広告社~あなたの人生、売り込みます!~』(テレビ東京)が放送、12月、映画『8年越しの花嫁 奇跡の実話』が公開予定。
連続テレビ小説『ひよっこ』
連続テレビ小説『ひよっこ』(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
脚本:岡田惠和 出演:有村架純ほか 全156回
最終回は、9月30日(土)