Sep 30, 2017

コラム

『ひよっこ』ロスなあなたに。脚本家・岡田惠和氏に、あの疑問、この疑問を聞いちゃいました!その1

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9月30日、全156話を駆け抜け、最終回を迎えた、朝ドラこと連続テレビ小説『ひよっこ』(2017年4〜9月)。高度成長期、お父さんの突然の失踪によって、茨城から東京に働きに出てきた女の子みね子(有村架純)が、たくさんに人たちとふれあった4年間の物語の最終回、みね子は結婚という幸せを獲得した。記憶喪失になったお父さん(沢村一樹)の記憶が戻るのかと思いきや、劇的な展開はなく、ほんのちょっとだけ前進しているくらいにとどまった。最終週で歌われた「365歩のマーチ」の「3歩進んで2歩下がる」くらいのささやかさだ。
「ひよっこ」は最初から一貫して、日々の暮らしを丁寧に描くというスタイルで、登場人物は、誰一人として特別な何かをもった人はいない。とりわけ、主人公は、大きな夢や目標もなく、日々を生きることにせいいっぱい。漫画家が、彼女を主人公のモデルにしたら、地味すぎて困ってしまうほどだが、彼女はマイペースだ。従来の朝ドラに多かった、主人公が大きなことを成し遂げるまでを描くものとは一線を画した『ひよっこ』。
なぜ、こういう物語を描いたのか。
朝ドラ論考本『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)で、『ひよっこ』がはじまる前にインタビューしたご縁で、脚本家・岡田惠和さんが最終回を終えての総括インタビューを受けてくださいました!3回にわたりお届けします。

 

第5回 『ひよっこ』脚本家・岡田惠和氏に聞く(その1)

 

インタビューに入る前の雑談で、岡田惠和の行きつけのコンビニで働くイラン人の方が、『ひよっこ』の実(沢村一樹)のような出稼ぎ労働者で、『ひよっこ』に自分を重ねて観ていると、家族写真を見せてくれたという話を聞いた。日本では昭和は遠くなりにけりだが、世界には日本の昭和のような暮らしをしているところがまだまだあるようだ。なんてことを思いながら、インタビューをはじめます。

 

視聴率がこんなに話題になるなんて

──半年間、おつかれさまでした。今日の回(記憶を失った実が妻・美代子に「美代子のことが好きだ。一緒に生きていってくれ。美代子と一緒に生きていきてえんだ」と言う146話)は、いい話でした。

今日の回は好きな回でした。いや、嫌いな回があるわけではありませんが。

──それでもやっぱり、ご自身の中で、これ! という回がありますか。

なんていうのかな、やっぱり局面のある回はどうしても強いですよね。

──何も起こらないことが『ひよっこ』の面白みでしたが、たしかに、ああいう軸があるものが強いと思わされました。

そうですよね。ただそればっかりでもなあっていうのもあるし。難しいですね。

 

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──岡田さんは、どのインタビューを読んでも、『ひよっこ』は非常に大変だったとおっしゃっています。

『ひよっこ』で一番感じたことは、こんなに毎朝視聴率、視聴率って言われるようになったのだという驚きでした。2001年『ちゅらさん』、2011年『おひさま』、2017年『ひよっこ』とやってきて、『ちゅらさん』のときも『おひさま』のときも、大きなものを任されている意識はあったけれど、結果(視聴率)に対するプレッシャーはあまりなかったです。実際は、あったかもしれないけれど、僕は感じていなくて(笑)。『ちゅらさん』では確か、初回が過去作のワースト2か3くらいではじまったので、やってしまったという感じはあったとはいえ、毎日の視聴率は知らされず、1週間の平均を教えてもらう程度でしたし、現場やプロデューサーと、視聴率が上がった、下がったという話をした記憶はあまりなくて。それは『おひさま』でもそうでした。

──『ちゅらさん』も初回は視聴率が低かったんですね。

とはいえ、初回は、前回の最終回から1、2%低いところからはじまると言われていたんですよ。それは、土曜日に終わると、すぐ翌月曜から新作がはじまるという、民放の連ドラのように前作と次回作との間に空白がない分、多少、視聴疲れっていうものがあるからだと。でも、内容が良ければ、だんだん観てくれるようになるよと言われていました。『おひさま』は、3.11東日本大震災の直後の4月はじまりだったので、視聴率のいいも悪いもない、そもそも放送できるの? という雰囲気でした。ところが、『ひよっこ』の序盤に「大台(20%)届かず」という記事がたくさん出て。朝ドラの世間的な注目度や立ち位置が、ずいぶん変わってきていることを感じました。そんなにハードルが上がっているんだとびっくりしたし、正直、気持ちが落ちました(笑)。

──そんなふうに思っていたんですね。

だからって、4月にはじまったときにはもうはるか先を書いていましたし、どうこうできないんですけど。それに、19.1%と201%って、誤差もあって、実はそれほど変わらないんですよ。だからこそ、あと1%上がれば、関わっているみんなの気持ちが楽になるのになあとは思いました。

──1%上げるために、後半の内容を変えたのですか?

変えてないです。結果に、みんなが納得してない感じがあったのと、下がっていく感じはなかったので。あくまで感覚でしかないんですけどね。

──信じて耐えた感じ?

そうですね(笑)。お話がスロースタートであるのは、この作品には必要な丁寧さだと思っていたから、そこは変えずに、結果は出てほしいと願っていました。最初のプロットからして、波乱万丈ではなく、ゆっくりした物語で、このところの朝ドラのリズムとは違うかもしれないけれど、徐々に浸透して欲しいとは思っていました。

木俣冬

文筆家。主な著書に「ケイゾク、SPEC、カイドク」(ヴィレッジブックス)、「SPEC全記録集」(KADOKAWA)、「挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ」(キネマ旬報社) 、共著「おら、あまちゃんが大好きだ! 1、2」(扶桑社)、「蜷川幸雄の稽古場から」、構成した書籍に「庵野秀明のフタリシバイ」、ノベライズ「マルモのおきて」「リッチマン、プアウーマン」「デート?恋とはどんなものかしら?」「恋仲」「IQ246~華麗なる事件簿」など。
初めて手がけた新書『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)が発売中! http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062884273

その他、エキレビ!で毎日朝ドラレビュー連載。ヤフーニュース個人https://news.yahoo.co.jp/byline/kimatafuyu/ でも執筆。 otoCotoでの執筆記事の一覧はこちら:https://otocoto.jp/ichiran/fuyu-kimata/

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