Dec 19, 2020 column

耳で楽しむ音楽アニメ 新たな扉が開かれ始めている?

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2020年秋期のTVアニメはもともとのスタート予定だった作品に加え、コロナの影響で遅れてのスタートとなった放送延期や途中休止となっていた春アニメがどっとなんとかの放送開始・再開にこぎつけたこともあり、とにもかくにも放送作品数が多いような気がする。

困ったことに、ただ“多いだけ”なら取捨選択も楽だが、今期はかなり注目作や人気シリーズの続編も多い上、よくわからないまま見てみたら面白かった作品も多い。「今期は豊作」と言うアニメファンもいたほどだ。

もはや定番の異世界物をはじめジャンルも多彩だが、その中で僕がちょっと「へえ」と思わされたのが音楽アニメだ。別段そのジャンル自体は今さら珍しくもない。『ラブライブ!』や『うたの☆プリンスさまっ♪』と言ったアイドル物。広義では『マクロス』シリーズや『けいおん!』や『Angel Beats!』なども音楽が作品の中心にある。もはや定番のジャンルだ。ほぼ毎期、なんらかしらの音楽アニメが放送されているし、そこからオリコンランキングに入る楽曲が生まれることももはや珍しくない。

ただ、ものすごく大雑把な書き方をすれば、これまでその音楽題材アニメにしてもメインストリームは(本当にざっくりした括り方になるが)「アイドルアニメ」だった。吹奏楽部を舞台とした『響け!ユーフォニアム』、ジャズを題材とした『坂道のアポロン』のような作品、ロックに特化した『NANA』や『BECK』などのアニメ化がむしろ特殊で、ダイレクトにアイドルグループが主人公の作品はもちろん、その他においても楽曲の中心はJ-POPで、設定の差異はあれど音楽ジャンル的に括ったときには多くが「アイドル」「ポップス」アニメだった。

もっともスタンダードな音楽ジャンルなのだからあたりまえだし、そのポップスにしたってそれだけ多いとかえって楽曲制作者のあの手この手の手管の違いも聴き所・楽しみどころとなる。幅広いアーティストを起用した『キャロル&チューズデイ』などはその最たる作品と言える。

その中にあって今期アニメの何に「へえ」だったのかと言うと、その題材としている音楽ジャンルのバラエティの富み方だ。
とにかく多いのだがその中から、ジャンルの異なるいくつかの作品を挙げたい。
(あらかじめ書いてしまうと僕は音楽方面にはかなり疎いので、どれも熱烈なファンからは「違うよ!」「わかってない!」などと思われるかも知れないのだけど、それでも「そんな疎い僕でも面白く感じている」と温かい目をもってください)

『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』公式サイト:
http://www.lovelive-anime.jp/nijigasaki/

『ラブライブ!』シリーズはもはや鉄板の大ヒットアイドルアニメで、本年は開始10周年となる。本作は新シリーズだ。
新たなキャラクターたちによる高校のスクールアイドル同好会を舞台としている。本シリーズはこれまでのアニメ版とは異なるスタッフ編成となっていて、そのためかドラマパートの見せ方などにも違いがあり、従来作とはちょっと異なる温度感のドラマの見せ方となっている。

個人的な印象となるが、これまでのシリーズでキャラクターは(ややこしい書き方だが)「ファンが思い描く理想的なアイドル像を演じているアイドル」という感じだったのが、『虹ヶ咲学園』では「ファンが思い描く理想的なアイドル像」の段階で止めている感じがする。従来シリーズのような部ではなく同好会になっていることもそういった彼女たちの“未満”である心象を示したのかもしれない。スクールアイドルというものに挑むにあたっての葛藤や決意や悩みなど、そのアイドル像たる彼女たちの描写が従来作にはなかったちょっとした生々しさが感じられる物となっていて、例えるならキャラクター個々の短編ドラマを見ているような印象だ。もちろん毎回エピソードの中心となったキャラクターごとの楽曲が披露される見せ場も健在で、そのへんは『ラブライブ!』のままだ。

ちなみに『ラブライブ!』は1作目同様の監督・京極尚彦、シリーズ構成・花田十輝らによる別の新シリーズ『ラブライブ!スーパースター!!』もアニメ化が発表されている。

『ラブライブ!スーパースター!!』公式サイト:
http://www.lovelive-anime.jp/yuigaoka/