Jun 27, 2026 interview

岸井ゆきの&ツェン・ジンホア インタビュー 台湾で生まれた繊細な感情の往復――吉本ばなな原作『シンシン アンド ザ マウス』

A A
SHARE

吉本ばななさんの短編小説「ミトンとふびん」に収められた一篇を『ボクは坊さん。』の真壁幸紀監督が映画化した『シンシン アンド ザ マウス/SINSIN AND THE MOUSE』。喪失感を抱え台湾を訪れた日本人女性を岸井ゆきのさん、そこで出逢う台湾人の母と日本人の父を持つ青年を、出演作をヒットに導き「億万の幸運星 (スター)」と呼ばれるツェン・ジンホアさんが演じ、台湾の街を歩きながら心を通わせていきます。主人公とともに、ゆっくりとした時間の中で台湾を旅している気分を味わえる、繊細な心の動きを捉えた本作。今回は主演の岸井ゆきのさんと来日したツェン・ジンホアさんにお話を伺いました。

――まずは、お二人が本作に「出演したい」と思った理由を教えていただけますか。

岸井 やはり素敵なオファーだったということと、吉本ばななさんの原作であること、台北で台湾の俳優さんと一緒に作品作りをすることが“楽しみだ”と思ったことが一番です。新しい挑戦だと思いました。

ツェン 今まで自分が母国語以外でお仕事をするという挑戦をしたことがなかったので、それに挑戦したかったんです。これまで演じて来た役は、重たい役や気持ちが凄く複雑な役が多かったので、ちょうどその時、自分もリラックスしながら【シンシン】と同じように短い時間に起こった出来事の登場人物を演じてみたいと思っていました。そういうタイミングの時に頂いたお話でした。

――吉本ばななさんの世界観が、みっちりと映画の中に描かれていて、心地良い空気感がスクリーンに流れていて素晴らしい作品でした。お二人が会う前の印象と実際に会ってから見つけた意外な一面を教えてください。

岸井 インターネットの検索で出てくる写真はクールな感じの写真が多かったんです。けれど、撮影前のお祓いで初めてお会いした時、「こんにちは」と爽やかに挨拶しに来てくれて、印象が違ったのでびっくりしました。お会いする前は親しみやすさより孤高のスタイルのイメージを持っていたのですが、実際にお会いすると、接しやすいというか親しみのある爽やかな方でした。作品に対しても、お芝居に対しても、日本語の台詞に対してもとても誠実なのがすぐに伝わってきました。共通の言語がない中でのお芝居というのが、より楽しく、共演するのが、日々、楽しみになる方でした。

ツェン お会いする前は凄く静かで、上品な方という感じのイメージでした。実際にお会いして一緒にお仕事をしてからは、違う面も色々と見て、“凄く繊細な人なんだ”と思いました。感情の豊かさだけでなく、活発な面も感じていました。そしてお芝居に対してもしっかりと自分の考え方を持っている人だとも感じていて、凄く独特な魅力、オリジナルの魅力がある方だと思いました。だからこそ、こんなにも様々な役柄を演じていらっしゃるのだと思いました。

――映画の中でお二人が台湾の街を歩いていると、雨が降ってきてしまうシーンがありますよね。その時、ツェンさんが岸井さんの顔に雨が当たらないように、自分の手でカバーします。あれは脚本に書かれていたのですか。

岸井 そうなんですよ! あれは脚本に書かれていないんです! 本当に彼は優しいんです。しかも台湾の文化的にも、男性は女性にとても優しいらしいんですよ。傘を持っていないのにずっと手を傘のようにして、私に雨がかからないようにしてくれていたんです。それを「そのまま使おう」ということになりました。あの行動は彼のオリジナルです。