Mar 16, 2025 news

押井守 監督の『攻殻機動隊3』が実現!? プロダクションI.G代表取締役会長の石川光久氏と井上伸一郎氏による『イノセンス』トークセッション

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世界で初の長編アニメーション中心の映画祭として、また多岐にわたるプログラムとアジア最大のアニメーション映画祭として、漫画・アニメのクリエイターを数多く輩出してきた“アニメーション首都”新潟にて行われる新潟国際アニメーション映画祭。今年が開催3回目となる本映画祭が3月15日に開催された。オープニングイベントに続けてオープニング作品『イノセンス』(2004)の上映前に、フェスティバル・ディレクターの井上伸一郎氏とともに、プロダクションI.G代表取締役会長の石川光久氏が登壇し、今なお根強い人気を誇る『イノセンス』の秘話について語った。トークの前には押井守監督からのビデオメッセージも届けられた。

「『攻殻機動隊』もそうですが、10年20年たっても残っていく作品になるんじゃないか、そうしようという意思のもとに作った作品」と語る押井監督。「一つの世界観をどれだけの密度で表現することができるか。デジタル的な意味での”技術”にとどまらず、当代のアニメーターが持っている”技”、描く技術ですね。そう言ったものを含めたところで可能な限りの表現を目指していこうというテーマが現場にはあった。作画、背景、あらゆるパートでその時できることの限界までやってみようということができた珍しい作品だった」と回想。「そのことが時間が経っても『イノセンス』という作品を見てもらえる、見ようという動機になるんじゃないかと思っています」と語った。

「もちろんテーマ自体も、この作品で扱ったテーマというのは古びてないと思う。人間の在り方、これからどう変わっていくのかということを射程に入れた作品なので、今でもテーマ自体も通用する作品になっていると自負しています。つくづくアニメーションというのは人間の手が作り出す仕事。デジタルの技術がいくら上がっても、各パートが持っている”技”の世界。”手の技”これは継承されていかないんです。正直僕自身もこれと同じような仕事をもう一回やるということは多分不可能だと思う」と、『イノセンス』という作品がいかに特別なものであったかを振り返る。メッセージを求められた押井監督は「とにかく楽しんでください。難しいこと考えると疲れる映画になると思います。何も考えずに世界を堪能していただければ素晴らしい時間になるかなと。色々難しいこと言ってますけど、どうでもいいので、映像と音響を楽しんでください」と押井節で締めくくると会場も沸いていた。

その押井監督とともに、プロデューサーとして製作に関わったのが石川氏。押井監督と同じく「10年、20年経っても色褪せない作品を作るんだ」という強い思いがあったという。20億という巨額の製作費について「製作委員会の人たちにも言いましたね。この作品は相当なお金がかかるし、短期で回収はできないかもしれないけど、10年かかって必ずお金は返します、と。それから20年経って、この場で全部リクープ(回収)できました!と言いたいんですけど‥‥まだしてない」とプロデューサーとしての苦しい心持ちを吐露。鈴木敏夫氏との共同プロデュースについて、ドリームワークスとの交渉の際に押井監督の脚本が哲学的すぎるとされ、「IQが高すぎるからゴーストライターを立てさせて欲しい」という条件をつけられたことなどを赤裸々に語ると、客席も息を呑む。

48時間前に押井監督と話したという石川氏は、なんと『攻殻機動隊3』の可能性について言及した。押井監督が『イノセンス 4Kリマスター版』として20周年記念の上映会の際に舞台挨拶で話したこの噂については「リップサービスじゃなかったですね。『イノセンス』を見たら、そこにヒントがある。この続きを作れば全部それは回収できるだけの作りになるという話にはなったので、本当に次の”3”は僕も見てみたいなと思いました。繰り返したいのは‥‥『イノセンス』20億リクープを達成しないと世に出ないので、ぜひみなさんのお力を!」とユーモアを交えて語っていた。第3回 新潟国際アニメーション映画祭は3月20日まで開催。

イベント情報
「第3回新潟国際アニメーション映画祭」

アニメーションやマンガ関連に従事する人々を約3,000名以上排出している、日本有数のアニメ都市、新潟。世界に向けてアニメーションやマンガという日本特有の文化を発信していく拠点となる新潟が、世界のアニメーション作品が交差する文化と産業のハブとして発展していくことを目指す、アジア最大規模のアニメーション映画祭。

主催:新潟国際アニメーション映画祭実行委員会

会期:2025年3月15日(土)~20日(木・祝)
     
公式サイト niaff