Oct 24, 2024 interview

『ソウ X』殺人鬼の深淵をのぞく人間ドラマに目を背けるな! ケヴィン・グルタート監督インタビュー

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2004年、猟奇殺人鬼・ジグソウが仕掛ける生死を賭けた戦慄のゲーム、そして予想のつかないストーリー展開で世界を魅了した『ソウ』。

逃げ場のない状況下における人間の極限状態を思わず目を背けたくなるゴア表現を交え、スリリングに描いた『ソウ』は、ソリッド・シチュエーション・スリラーの最高峰と称賛され、瞬く間に誰もが知る人気シリーズとなった。そんな『ソウ』シリーズの最新作『ソウX』が10月18日に公開された。

本作でメガホンを取ったケヴィン・グルタート監督のコメントを交え、これまでの『ソウ』とは違う最新作の魅力に迫りたい。

play the game‥‥誰も観たことがなかったゲームの続き

ケヴィン・グルタート監督は、『ソウ』シリーズの第1作から第5作まで編集者として関わり、第6作と第7作、そして今作で再び監督を務めた。

「確かに自分のキャリアの中でも大きな位置を占めている作品で、『ソウ』が代表作であることを自負しているよ。シリーズのチームには本当に感謝しています」

こう語るグルタート監督は本作をどう描いたのか。
本作で描かれるのは『ソウ』と『ソウ2』の間にあった出来事。そう、これは『ソウ3』で死を遂げた天才殺人鬼ジグソウこと、ジョン・クレイマーがまだ生きていたころの物語だ。

「本作では第1作目と第2作目の間を舞台にすることで、人間としてのジョンの人生をエモーショナルに深掘りしていったんだ」

ジョン死後、彼の意志を継ぐものがゲームを続けシリーズが紡がれてきた。しかしながらその後のシリーズにもジョンは回想でたびたび登場した。『ソウ』という映画シリーズを成立させるためには、やはりジョン・クレイマーは欠かせない存在なのだ。

ジョン・クレイマーは末期ガン患者だ。麻薬中毒者に妊娠中の妻が暴行されお腹の子は流産。そして自分のように、生きたいにも関わらず余命いくばくもない者がいる一方、自らの命を粗末にしたり、他人の命を蔑ろにしたりする者たちに対して、生きる意味を見出させるために、ジョンは命をかけたゲームを課す。こうして始まった命の尊さを文字どおり自らの肉体に刻み込む戦慄のゲームが『ソウ』である。

本作『ソウX』は、この直後に巻き起こるジョン・クレイマーの知られざるゲームだ。

末期がんで余命わずかと宣告されたジョン・クレイマーは、藁にもすがる思いで、危険な実験医療処置を受けるためメキシコに向かう。しかし、この手術は弱い立場の人々から金をだまし取る詐欺であることが判明する。ジョンは復讐のため、自分をだました詐欺師たちに死のゲームを仕掛けていく。

『ソウ2』でジョンは肉体的に弱った状態でゲームを仕掛けていたが、そこに至る壮絶な物語が明かされる。ここを描くことでシリーズの謎が解かれていくので、シリーズファンは見逃せない内容となっている。

『ソウ2』といえば、前作でゲームの被験者で生き残り、ジョンに心酔したアマンダが協力者となり、ジグソウの後継者となろうとする。今作も彼女が登場。ゲーム被験者を誘拐する際、シリーズお馴染みの豚のマスクをした人物がスクリーンに映し出されたとき、ファンならば「来た!」と小躍りするだろう。

「もちろん、ファンサービスは心得てるよ」

そう微笑んでくれたグルタート監督は、過去シリーズ作品の秘話も語ってくれた。

「アマンダが『ソウ3』で受け取ったジョンからの手紙について、実は当時、内容について誰も考えてなかったんだ。『ソウ6』で監督をしたときに”あの手紙が使えるんじゃないか?”ということで、ストーリーに盛り込んだんだ」

『ソウ3』でアマンダは、この手紙をきっかけに激情に駆られ被験者を殺す。『ソウ6』で、この手紙はジョンのもうひとりの後継者、ホフマン刑事の脅迫だということが明かされた。

つまり『ソウ3』に至るまで、アマンダはジョンの信頼を勝ち得ていない。今作でもアマンダはゲームのルールに厳格ではない。かつての自分と同じ薬物中毒者に情けをかけようとする。この筋の通し方は、いままでシリーズに多く関わってきたグルタート監督ならではだろう。もちろん、監督のいう”ファンサービス”はこれだけに留まらない。シリーズファンなら「そういうことか!」と膝を打つ仕掛けが目に止まることだろう。

仕掛けといえば、ジョンの準備した恐怖のトラップだ。あの観客を震え上がらせる残酷なゴア表現がなければ、『ソウ』が『ソウ』たる所以がない。今作でも強烈なトラップがいくつも仕掛けられている。そこでグルタート監督にお気に入りのトラップについてを聞くと、「どれも好きなんだけどね」と前置きした上で、こう答えてくれた。

「僕にとってはヴァレンティーナ(ポーレット・エルナンデス)が足を切る場面。スタッフ陣が『これは無理』と断言した衝撃シーンで、『こんな場面をリアルに演じられる女優はいない』って思ったんだ。でも、オーディションで第一候補になったポーレットは圧倒的なポテンシャルを持っていた。『ソウ』シリーズのダントツだった。役柄に没入しすぎて本当に切っちゃうんじゃないかと、心配になったよ」と称賛の声を送った。

全米初登場1位、ロッテン・トマト90%フレッシュを獲得した『ソウX』。
シリーズファンが楽しめることはもちろんのこと、殺人鬼が凶行に至る流れがわかりやすいドラマになっているため、シリーズ未見の方にもおすすめだといえる。

グルタート監督こだわりのホラーらしからぬラストシーンまで、是非目を背けず観ていただきたい。

取材・文 / 小倉靖史

作品情報
映画『ソウX』

末期がんで余命わずかと宣告されたジョン・クレイマーは、藁にもすがる思いで、危険な実験医療処置を受けるためメキシコに向かう。しかし、この手術は弱い立場の人々から金を騙し取る詐欺であることが判明する。ジョンは復讐のため、自分を騙した詐欺師たちに死のゲームを仕掛けていく。

監督・脚本:ケヴィン・グルタート

出演:トビン・ベル、ショウニー・スミス、スティーヴン・ブランド、シヌーヴ・マコディ・ルンド、マイケル・ビーチ、レナータ・ヴァカ、オクタビオ・イノホサ

配給:リージェンツ

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公開中

公式サイト saw-x.jp/index.html