Jun 23, 2023 interview

『ザ・フラッシュ』造形美術監督ピエール・ボハナ インタビュー 俳優に信用されるマスクの作り方

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「DC映画最高傑作」、いや「スーパーヒーロー映画史上最高傑作」。トム・クルーズやジェームズ・ガンも絶賛したという空前の前評判のもと、DC映画最新作『ザ・フラッシュ』がついに公開された。

主人公は“地上最速のヒーロー”フラッシュ/バリー・アレン。幼い頃に母親を亡くしたバリーは、持ち前の速さによって時間を遡り、過去を変えて母を救おうとする。ところがその結果、現在に大きな影響が生じ、世界に滅亡の危機が訪れてしまう。

「タイムループ・アドベンチャー」と称された本作には、エズラ・ミラー演じるフラッシュだけでなく、ティム・バートン監督『バットマン』(1989)『バットマン リターンズ』(1992)のマイケル・キートンがバットマン/ブルース・ウェイン役を再演。さらに若きスーパーガールもDCユニバースに参戦し、スーパーヒーローたちが異色の初共演を果たす。

この顔合わせをビジュアル面から支えたのが、『ジャスティス・リーグ』(2017)をはじめ、クリストファー・ノーラン監督『ダークナイト』(2008)やロバート・パティンソン主演『THE BATMAN ―ザ・バットマン―』(2022)にも参加してきた造形美術監督のピエール・ボハナ氏だ。

本作の公開にあわせて来日したボハナ氏に、スーパーヒーローのビジュアル造形や、俳優と衣裳のコラボレーションの秘密を聞いた。

フラッシュのスーツ、新たなこだわり

取材場所のテーブルに置かれているのは、『ザ・フラッシュ』のために作られたフラッシュのマスクと、マイケル・キートン&ベン・アフレックそれぞれのバットカウル。そのシンプルだが精巧な作り込みに、自分のすぐ目の前にあるなんて夢のようだ と伝えると、ボハナ氏は「私も同じ気持ちでした。フラッシュのマスク、マイケル・キートンのカウルを作れるなんて」と穏やかに微笑んだ。

ミラー演じるフラッシュは、DC映画には『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)および『ジャスティス・リーグ』の2作品に登場。本作が初の単独映画となる。ボハナ氏によると、新たなスーツを開発するにあたり、「監督のアンディ(・ムスキエティ)と衣裳デザイナー(アレクサンドラ・バーン)は、本作ならではのコンセプトを確立しようと考えていた」という。

「フラッシュは超高速で移動するとき、すさまじいエネルギーが肉体を駆けめぐります。そのエネルギーに耐えられるスーツであることを視覚的に表現しよう、きちんと作り込もうと監督は考えていました。そこで(スーツやマスクに)ゼラチンを使用し、全身に流れる電流やエネルギーを表現することにしたのです。電流やエネルギーが広がり、燃え上がるようなイメージですね」

フラッシュのスーツやマスクには、エズラ・ミラー版だけでなく、コミックや、グラント・ガスティン演じるドラマ版「THE FLASH/フラッシュ」(2014~)などの歴史がある。ボハナ氏も「フラッシュはビジュアルのイメージが非常に強いキャラクター。そこから逸脱することはできません」と述べた。

もっとも『ザ・フラッシュ』でバリーが着ているスーツは、バットマン/ブルース・ウェイン率いるウェイン産業によって作られているのがポイントのひとつ。ボハナ氏は「従来よりも現実的な、物理学的なスーツになりました」と説明し、「スーツが指輪から飛び出してくるなんて最高の収納方法ですよね。僕も自分の荷物を指輪に詰めておけたらいいのに」と笑った。