Jun 23, 2023 interview

『ザ・フラッシュ』造形美術監督ピエール・ボハナ インタビュー 俳優に信用されるマスクの作り方

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マイケル・キートンのバットマンを刷新する

名優マイケル・キートンが約30年ぶりにバットマン役を再演することには、監督のムスキエティはもちろん、ボハナ氏やスタッフも大いに興奮したという。2000年代以降、数々のDC映画に携わり、クリスチャン・ベールやベン・アフレック、ロバート・パティンソンのバットマンと仕事をしてきたボハナ氏だが、本作ではマイケル・キートンとティム・バートンが80~90年代に創造したバットマン像の再現に力を尽くした。

「(キートン演じる)バットマンのスーツは、マイケル・キートンとティム・バートンの映画にだけ関連しているものです。劇中ではいくつもの時間が流れており、パラレルワールドを横断するように複数の世界を行き来しますが、(フラッシュを除く)登場人物たちが、自分が存在する現実以外から影響を受けることはないでしょうから」

『ザ・フラッシュ』では、キートン演じる年老いたブルース・ウェインの邸宅にバットマンのスーツが7着飾られているのを見ることができる。ボハナ氏は「我ながら良い仕事ができたと思います」と再び笑顔を浮かべ、「今回はあのスーツのシリーズの最新作なのです」と語った。

「ティム・バートンが手がけた『バットマン』と『バットマン リターンズ』の間にも、バットマンのスーツには明らかな変化があります。それから現在まで発展を重ねてきたのだと考え、当時のエッセンスを失わないよう改良したいと思いました。たとえばオリジナルのスーツはとにかく巨大で、頭を動かせないので(笑)、そこは改善したかった。マイケルによりフィットするよう、現実的な範囲でイメージを膨らませていったんです」

ちなみにボハナ氏いわく、フラッシュ役のミラーは顔に合ったマスクを作るのが難しいのだそう。「『ジャスティス・リーグ』のときもそうでしたが、エズラの顔立ちは特徴的で、頬骨が高いので、マスクがどんどん前に押し出されてしまうんです」。逆に、キートンのマスクはまさに本人にぴったりの仕上がりとなったようで、「きちんと顔にフィットして、表情も見えやすい。フラッシュのマスクもなるべくそれに近づけたかったんです」とボハナ氏は言う。