Jun 23, 2023 interview

『ザ・フラッシュ』造形美術監督ピエール・ボハナ インタビュー 俳優に信用されるマスクの作り方

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俳優に信頼されるマスクを目指して

エズラ・ミラー、マイケル・キートン、ベン・アフレック。『ザ・フラッシュ』でマスクをかぶる俳優たちは、マスク越しでさえ、表情の演技で多くを語る力をもつ演技巧者たちだ。しかしマスクをかぶることは、俳優の芝居の幅をどうしても制限することになりかねない。この大きな課題に、ボハナ氏はどのように取り組んだのか。

「マスクをかぶることは役者にとって必ずジレンマになる」というボハナ氏は、過去に手がけた映画の出演者たちが、皆、当初は「変なヘルメットをかぶるのを嫌がっていた」と笑う。しかし、ボハナ氏は常にそのハードルを乗り越えてきた。「大切なのは、俳優が自分のかぶるマスクを信頼できること。私たちが互いの表情からたくさんの情報を受け取っていることは確かですから」と言い切るのだ。

「衣裳であれ何であれ、私たちの制作物はすべて演技をサポートするためにあります。もちろんマスクをかぶらないときは繊細な表現ができますが、かぶっていても俳優をサポートできなくてはいけない。的確なメッセージのあるマスクなら、きちんと表現として俳優をサポートできます。ひそやかにですが、マスクはメッセージを発しているんです」

その具体例として、ボハナ氏が教えてくれたのは、『THE BATMAN ―ザ・バットマン―』でバットマンを演じたロバート・パティンソンが、“どうやってマスクを付けたまま演技をするか?”ということに葛藤していたというエピソードだ。しかし、後にパティンソンは、すでにマスク自体が多くの役目を果たしていることに気づいたとという。例えばバットマンの場合、マスクをかぶるだけで独特の威圧感が出る。ボハナ氏は「自分の顔を隠したまま、威圧感を出すための演技をする必要はないんです」と語った。

一方で『ザ・フラッシュ』の撮影現場では、マスクの有無に左右されない俳優の存在感を垣間見ることもあったようだ。ボハナ氏はキートンの撮影初日を振り返り、バットマンのマスクをかぶった姿を「最高だった」と称えつつ、「それでも彼は、常にマイケル・キートンその人なんです」と振り返る。

「最初の数ショットを撮った後、マイケルと話していたら、監督がやってきて『自撮りしてもいいですか?』と言うんです。カメラを構えたら、マイケルが『ビートルジュース』(1988)のような笑顔になったんですよ(笑)。マイケルのような俳優なら、たとえマスクをしていても、マイケルだと必ずわかる。そしてもちろん、彼はそんなふうに自分を出すこともできるし、逆に自分を出さないこともできる。つまり、マスクにもメッセージがあるし、また俳優にもメッセージがあるということなんです」

マスクの力を借りながら――もちろんマスクを脱いだときにも――俳優陣はどんな演技を見せてくれるのか。また、ボハナ氏の力説する“マスクのメッセージ”は、一体どのように映し出されているのか。フラッシュと2人のバットマンが見せる豊かな表情の数々を、ぜひ大スクリーンで細部まで確かめてほしい。

文 / 稲垣貴俊
撮影 / 岡本英理

プロフィール
ピエール・ボハナ(Pierre Bohanna)

造形美術監督

イギリス生まれ。
テレビコマーシャルと写真を専門とするモデル作成およびエフェクト会社からキャリアをスタート。その後、パインウッド、リーブスデン、シェパートンの主要スタジオで映画制作に取り組み始め、特殊な小道具、衣装、モデルを作成。『タイタニック』のタイタニック号の小道具を大量に依頼され注目される。その後『ハリー・ポッター』シリーズで、ほぼすべての小道具を制作。そのほか『ゼロ・グラビティ』、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』など、近年のハリウッド超大作で小道具制作に携わっている。DC作品では、『ダークナイト』、『ジャスティス・リーグ』、『ワンダーウーマン 1984』ほかを担当。

作品情報
映画『ザ・フラッシュ』

主人公は地上最速ヒーロー“フラッシュ”。母親を殺害した容疑を掛けられ服役中の父親の冤罪を証明したいというダークなバックボーンを抱えているが、お茶目で少し天然で愛される好青年だ。そんな彼は、亡くなった母親を救うため“過去”を変えてしまい、“現在”に歪みをもたらしてしまう。フラッシュは、もう一人の陽キャのフラッシュと共に、別人のバットマン、黒髪のスーパーガールらと世界を元に戻し人々を救おうとするが・・・・。

監督:アンディ・ムスキエティ

出演:エズラ・ミラー、ベン・アフレック、マイケル・キートン、サッシャ・カジェ、マイケル・シャノン

配給:ワーナー・ブラザース映画

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公開中

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