レジェンド声優インタビュー
井上真樹夫[声優道編]
arranged by レジェンド声優プロジェクト
今回のレジェンド声優インタビューは、『巨人の星』花形満、『ルパン三世』石川五エ門、『宇宙海賊キャプテンハーロック』ハーロックなど、アニメ史に残る伝説的イケメンを演じ続けてきた井上真樹夫さんが登場! ホスト役・古川登志夫さん、平野文さんをして「スーパープレミアムレジェンド」と言わせる井上さんにその役者道、そして声優道を語っていただきました!!
- 平野文:
(以下、平野) -
さて、今回はアニメ声優としてのご活躍についてお話をきかせてください。でも、真樹夫さんの代表作というとどれになるんでしょうね。すごいキャラクターが多すぎて、どれを挙げればいいのやら……。
- 井上真樹夫:
(以下、井上) -
いやいや、特別多くはないよ。お二人の方が多いでしょう。でも、改めて調べてみると、いろいろやってはいるんだよね。
- 古川登志夫:
(以下、古川) -
僕にとっての真樹夫さんというと、何と言ってもやっぱりキャプテンハーロック(『宇宙海賊キャプテンハーロック』)と、石川五ェ門(『ルパン三世』シリーズ)ですね。
- 平野:
-
ハーロックと五ェ門と言えば、誰もが一度は憧れる二枚目。しかもハーロックは宇宙海賊、五ェ門は和装の侍と、全く違うキャラを演じ分けていらっしゃいました。
- 古川:
-
真樹夫さんの声はね、クリスタルな声なんですよ。高音がすごく響くんです。僕ら、憧れて真似したもんです。
- 平野:
-
確かに「クリスタル」って表現がぴったり! 透明感があって、かつ凛としていて。二枚目って、絶対にそういう気品のある声じゃないと駄目ですよね。
- 井上:
-
それは、松本零士先生の絵が良かったからですよ。絵が二枚目だったから、それに引っ張られるんです。
- 平野:
-
確かにハーロックには松本零士先生の、五ェ門にはモンキーパンチ先生の絵がありました。でもそれだけじゃないですよね。それに声を当てる際のご苦労みたいなものがありましたら聞かせていただけますか?
- 井上:
-
まずね、当時、もう神谷明(1973年に『バビル2世』で初主演、以降、多くの作品でヒーローを担当)なんかが出てきていたわけだけど、ああいう大きな声を張り上げるようなのはできねぇなって思った。ハーロックをああいうふうにやったら駄目だ、と。
- 古川:
-
僕もいくつかやりましたけど、巨大ロボットアニメはとにかくかけ声が大事でしたからね(笑)。
- 井上:
-
そういうのがどうもハーロック的ではないよなぁ、と思ったんだ。もっと屈折した男じゃないといけない。だから、極力、口をマイクに近づけて、なるべく声を張り上げないようにして、ささやくように演じたんだ。
- 平野:
-
そういう演じ方のイメージって、どのようにして閃かれるんですか?
- 井上:
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やっぱり絵から来るインスピレーションが大事。ファーストインプレッションが核になってくるのかな。
- 平野:
-
二枚目になりきるときに、参考にするものとかはおありになるんですか?
- 井上:
-
ありません。それがアニメだろうが、洋画だろうが、そのキャラクターの内面を想像して、その中に自分を入れ込む作業だから、何かを持ってきて参考にして、というのはやらない。もし、それをやってしまったらどこか物まね的になってしまう。とことん自分が考え、思い詰めていく中で何かが出てくる、それが役者の仕事なんだよ。
- 平野:
-
五ェ門の時も、そんな感じだったんですか?
- 井上:
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五ェ門には大塚周夫さんっていう前任者がいるからね。(編集部注:1971年放送の『ルパン三世』第1シリーズでは、大塚周夫さんが石川五エ門役を担当)。ちなみにそのオーディションには納谷悟朗さん(銭形警部役)や、広川太一郎(『名探偵ホームズ』ホームズ役)なんかも参加したらしいね。そうした中から選ばれた周夫さんが、すごく良い感じにやっていた役だったんだよ。
- 古川:
-
出てくるお名前が全てスーパーレジェンドでびっくりですよ(笑)。
- 平野:
-
でも、それがどういう経緯で真樹夫さんに引き継がれることになったんですか?
- 井上:
-
それが実はよく分からない。ただ、第2シーズンが始まるに際して、作品の路線変更があって、五ェ門のキャラも大きく変わっちゃったんだよね。
第1シーズンではものすごい剣豪的な、危険な男的な描かれ方をしていたんだけど、第2シーズンではちょっと優男的というか、二枚目キャラ的な傾向になった。それで、声も変えようということになったのかもしれないな。