Feb 01, 2017 interview

声優・井上真樹夫が語る『巨人の星』『ルパン三世』『機動戦士ガンダム』伝説のアニメ制作秘話

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平野

『ルパン三世』(1977年)の現場って、どんな感じだったんでしょう? 現場の雰囲気が、どんな感じだったのか、とても気になります!

井上

実はあんまり知られていないんだけど、ルパン一家の中で、俺だけ少し歳が離れているんだよね。山田康雄さん(ルパン役)、納谷悟朗さん(銭形警部役)、小林清志さん(次元大介役)、増山江威子さん(峰不二子役)、みんな、年上。だから、すごく気を遣ったな。気を遣ってないふりをして気を遣う。それを何十年もやってきたんだから、俺って偉いよな(笑)。

古川

僕も何度かゲストで出させていただいたんですが(『ルパン三世 Part III』など)、とにかく緊張感のある現場でしたね。

平野

私も2度、出演させていただきましたけど(『ルパン三世 Part III』『ルパン三世 バビロンの黄金伝説』)、すごくピリピリしてました。

井上

山田さんがすごい神経質で、怖い人だったからね。でも、彼の演技は本当に素晴らしかった。実にいいルパンだったよ。あれも、劇団テアトルエコーで悟朗さんたちと芝居を追求した結果の産物。キャラクターを演じる俳優によって作品が一段上のものになる好例だね。その逆もあるから。

平野

私が現場で驚いたのは、山田さんが収録の時に常に直立不動なこと。オーバーアクションしながら演技するということがないんです。「ふーじーこーちゃーーーん」っておどけている時も、ふだん通りの立ち姿で。

井上

スタジオの一番左のマイクが彼専用のマイクで、壁に手を突いて、台本片手にマイクを寄せながら喋るんだよね。

平野

そうそう、『ルパン三世』と言えば、今日、たまたま音響監督の加藤敏さん(『ルパン三世』第2シーズン以降、2010年の『ルパン三世 the Last Job』まで、全ての作品に音響監督として参加)からお電話をいただいたんですよ。敏さんというと、いつもニコニコしているというイメージなんですが、『ルパン三世』ではどんな感じだったんですか?

井上

あんまり駄目出しとかはしない人だよね。でもあの人は言わないから怖い。おどけて笑いながら、実はかなり厳しく見てますから。笑っているからってなめちゃいけない。何も言われないから、逆に新人にはすごく堪えたんじゃないかな。それでも常に笑っていたのは、スタジオの緊張感を少しでも和らげるためだったのかもしれないね。

平野

山田さんがすごく緊張感のある方でしたからね。

井上

人にも緊張を強いるところがあって、でも、だからみんなピリッとするんですよ。それが良い作品になった理由の1つだと思うよ。

そういえば、『ルパン三世』の収録時、映像がないなら俺は帰るぞって、本当に帰っちゃったこともあったな。アニメーターの人にはお気の毒だったんだけど、それで本当に役者全員で引き上げちゃった。伝説だよ、もう。

古川

似たようなことが、僕がご一緒したときにもありましたよ。『ルパン三世 Part III』(1984年)の最終回に出させていただいたんですけど、最後の最後、予告編の枠に流すお別れメッセージの収録を拒否して帰っちゃったんです。「これでお別れだ」なんて言っておいて、どうせまた新しいのをやるんだろ? そんな嘘はつきたくないって。残された現場はその時間をどうやって埋めようか大騒ぎでした。いや、役者の側から「俺やんないよ」って、そうそう言えないですよね。

井上

悟朗さんも厳しい人だったけど、それでもそこまではしなかったもんな(笑)。

平野

現場の「緊張感」というと、『ルパン三世』からちょっとさかのぼって、『巨人の星』(1968年)で、主演の古谷徹さん(星飛雄馬役)と意図的に距離をおくようにしたというエピソードが有名ですよね。やっぱり、ライバルである花形満役を演ずるに当たって、仲良くすべきではないと考えられたんですか?

井上

それは徹がどっかで言ったらしいね。でも、それはちょっと誤解が入ってる。俺の言い方が悪かったのかもしれないけど、実際は別にそんな避けていたわけじゃない。単に、あっちが中学生で話題がなかったんだよ。当時俺はもう29歳だったけど、アイツはスタジオで宿題とかやってるんだから(笑)。

その頃、俺は新宿でスナックをやっていてさ、収録が終わったらさっと帰って店に入らないといけないわけ。ハタチ超えていたら飲みに来いよとか言えるけど、中学生にそれはいえないでしょ? だから、決して距離を置いていたわけじゃないんだよ。

古川

まさかの新事実が発覚しましたね(笑)。

平野

さて、真樹夫さんと私たちが共演した作品って『ルパン三世』以外にも、『銀河英雄伝説』(1988年)がありますけど、こちらはキャラクターが3人ともバラバラの陣営に所属していたこともあって、一度も収録が一緒になったことはないんですよね。登志夫ちゃんは、それ以外に真樹夫さんと共演されたことはある?

古川

劇場版『機動戦士ガンダム』(1981年、1982年)でご一緒しましたね。僕がカイ・シデン役で、真樹夫さんがスレッガー中尉役(テレビ版は玄田哲章さんが担当)。でも、これも収録がバラバラなんで、ほとんど会いませんでしたよね。

井上

1度か2度会ったくらいだったっけ?

古川

『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』の冒頭に、カイが「スレッガーさんかい? 早い、早いよ!?」ってセリフがあるんですけど、それはファンの間で人気のシーンみたいですよ。

井上

でも、本当に一緒のシーンをやったのはそのときくらいだよね。なかなか一緒にやる機会がなかった。

平野

本当にそれは残念! だからね、ラジオドラマをやりましょうよ。オールナイトニッポンでやっているインターネットラジオ『レジェンドナイト』で毎回ラジオドラマをやっているので、ぜひそれに出てください!

古川

脚本家も真樹夫さんがやるなら書いてくれますよ。

平野

最近、真樹夫さんの声の演技を聞けていないので、すごく楽しみ。どんなのがいいかしら。

井上

コントでもシュールでもなんでも良いよ。それまで生きてたら、やりましょう。でも、最近はアルツハイマーのじじい役(2014年のドラマ『家族狩り』にて)とかしかやってないから、今さら二枚目の声をやれって言われても難しいかもしれないね(笑)。

構成・文 /山下達也  撮影 /江藤海彦

 

プロフィール

 

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井上真樹夫(いのうえまきお)

山梨県出身。青二プロダクション所属。芸歴:文学座草の会~劇団表現座~富士放送プロ。主な出演作は、アニメ『ルパン三世』(石川五エ門)、『宇宙海賊キャプテン・ハーロック 』(ハーロック)、『巨人の星』(花形 満)、『男ドアホウ甲子園』(藤村甲子園)、『キャンディ・キャンディ』(アルバート)ほか。

 

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古川登志夫(ふるかわとしお)

7月16日生まれ、栃木県出身。青二プロダクション所属。1970年代から活躍を続け、クールな二枚目から三枚目まで幅広い役を演じこなす。出演している主なアニメーション作品には、TVシリーズ「機動戦士ガンダム」(カイ・シデン役 1979~80年 テレビ朝日)、映画・TVシリーズ「うる星やつら」(諸星あたる役 1981~86年 フジテレビ)、映画・TV「ドラゴンボール」シリーズ(ピッコロ役 1986~97年 フジテレビ)、映画・OVA・TVシリーズ「機動警察パトレイバー」(篠原遊馬役 1989~90年 日本テレビ)、映画・TV「ONE PIECE」(ポートガス・D・エース役 1999年~)など多数ある。

 

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平野文(ひらのふみ)

1955年東京生まれ。子役から深夜放送『走れ!歌謡曲』のDJを経て、’82年テレビアニメ『うる星やつら』のラム役で声優デビュー。アニメや洋画の吹き替え、テレビ『平成教育委員会』の出題ナレーションやリポーター、ドキュメンタリー番組のナレーション等幅広く活躍。’89年築地魚河岸三代目の小川貢一と見合い結婚。著書『お見合い相手は魚河岸のプリンス』はドラマ『魚河岸のプリンセス』(NHK)の原作にも。