Nov 14, 2015

特集2

第3回:自分の30年後を意識した“自分らしさ”を引き出して

レジェンド声優:平野文
インタビュアー:藤井青銅(放送作家
/作家/脚本家)

 

 

藤井青銅
(以下 藤井)

平野さんが若い声優さんたちを見ていて感じることってありますか?

 

平野文
(以下 平野)

そう感じるのは私だけかもしれないのですが、若い声優さんの中に「可愛い女の子の声ってこういうものなのよ」って型にはまった演技をする人が多い印象を受けることがあります。「私じゃなければこのキャラはできない」「私はこういうふうに演じる」というふうにやっていないんですね。

私が『うる星やつら』をやらせていただいた時は、古川登志夫さんや杉山佳寿子さん方が、その人たちだけの演技をなさっていらっしゃいました。だからこそ、それから30年、40年経っても、皆さんかわらず声優でいられるんだと思うんです。

ですから今の若い人たちが自分たちの30年後をどう考えているのかがちょっと見えない。自分らしさがないままで、この先どうなるのかなぁって不安になります。

 

藤井

それは声優に限らず、全ての業界に当てはまることですよね。

 

平野

以前、この話を別の某事務所のマネージャーさんとしたことがあるんですが、彼は今、自分で強く押し出したい声優はいないってはっきり言っていましたね。だって皆同じだから。

そして、その上で「結局センスだよねって片付けられちゃうと身も蓋もない」とも。

 

 

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藤井

少なからず先天的なものもあるんでしょうけど、それだけではないと思いたいですよね。あと、これは想像ですが、若い声優の中には“自分らしさ”を出さない方がいいと考えている人もいるんじゃないでしょうか。

 

平野

それは有能なプロデューサーに出会って引き出して頂けると良いわね。でも、何かしら自分らしさが引き出されてくると、今度はナレーターとかの仕事で、自分の演技やしゃべり方に合わせた脚本を書いて頂けるようになってくるんですよ。

例えば『平成教育委員会』の理科コーナーのナレーションがそれ。あまりに上手くはまりすぎていて、一番最初のテストで終わっちゃうなんてことも多いですね。「今、録っていたのでこれでOKです」って(笑)。

 

藤井

もちろん、だからといって楽な仕事というわけではないですよね。ちゃんと期待された演技ができていないといけない。

 

平野

台本には無駄なセリフは一つもありません。「これ取ってくれる」というセリフがあったとき、「これ」が大事なのか、「取ってくれる」が大事なのかは前後を読めばわかるんです。それを掴んでさえいれば大きく間違えることはない。

ただ、それを分かっていない人がけっこう多いんですよね。収録していて「何で、そこを流して演技するの!」ってイライラしちゃうこともあったり。

演技を学ぶことで、それが分かるはずなので、基本をおろそかにしないでほしいですね。

 

藤井

そういうことが分かっていた人たちが後に“レジェンド”と呼ばれるようになるんでしょうね。

 

(構成:山下達也 / 撮影:田里弐裸衣)

 

 

 

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平野 文(ひらのふみ)

 

1955年東京生まれ。子役から深夜放送『走れ!歌謡曲』のDJを経て、’82年テレビアニメ『うる星やつら』のラム役で声優デビュー。アニメや洋画の吹き替え、テレビ『平成教育委員会』の出題ナレーションやリポーター、ドキュメンタリー番組のナレーション等幅広く活躍。’89年築地魚河岸三代目の小川貢一(現『魚河岸三代目 千秋』店主)と見合い結婚。著書『お見合い相手は魚河岸のプリンス』はドラマ『魚河岸のプリンセス』(NHK)の原作にも。

 

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藤井青銅(ふじいせいどう)

 

23歳の時「第一回・星新一ショートショートコンテスト」入賞。これを機に作家・脚本家・放送作家となる。書いたラジオドラマは数百本。腹話術師・いっこく堂の脚本・演出・プロデュースを行い、衝撃的デビューを飾る。最近は、落語家・柳家花緑に47都道府県のご当地新作落語を提供中。 著書「ラジオな日々」「ラジオにもほどがある」「誰もいそがない町」「笑う20世紀」…など多数。

現在、otoCotoでコラム『新・この話、したかな?』を連載中。