Dec 05, 2018 interview

2018年『カメ止め』旋風を巻き起こした張本人!上田慎一郎監督ロングインタビュー

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上田監督に影響を与えた人物たち

──『カメ止め』がバックステージ映画のバックステージものなら、『お米とおっぱい。』はオマージュ作のさらにオマージュ。上田監督にとって三谷幸喜さんの存在は大きい?

大きいですね。三谷さんの作品を観るようになったのは、テレビドラマ「振り返れば奴がいる」「王様のレストラン」「古畑任三郎」(フジテレビ系)からだったと思います。中学から映画にハマるようになったんですが、三谷さんの監督作ではデビュー作の『ラヂオの時間』(97年)が一番好きです。『ショウ・マスト・ゴー・オン』などの舞台も観ました。物づくりの舞台裏を描いたバックステージものが多いし、みんなで力を合わせて困難を乗り切るなど、僕の作風に大きな影響を与えたことは間違いありませんね。日本では珍しい、コメディをメインにしている点でも尊敬しています。

──20代のフリーター時代には、『毎日が冒険』(サンクチュアリ出版)などの著書で知られる高橋歩さんに出逢ったそうですね。高橋さんから受けた影響もある?

あると思います。あの前のめりの姿勢とか。僕は影響を受けやすいんです(笑)。高橋歩さんの本はいろいろ読んで、その中に「カフェを作ろうぜ」という主旨の本があって、「よし、俺もカフェを作ろう!」と思った時期があったんです。20代の前半、渋谷のハチ公前でオリジナルのポストカードを露天販売していたことがあったんですが、それで全国をヒッチハイクしながらポストカードを売り歩こうと思い立ち、沖縄でカフェを開いていた高橋さんのお店を折り返し地点にして、全国を回ったんです。そのとき偶然、高橋さんがお店にいたので、「ヒッチハイクしながら、ポストカードを売り歩いています」と伝えると、「そうか、ビールおごってやるよ!」とごちそうになりました。でも、僕はビールを呑めないのでこっそり捨てました(笑)。

──カフェ開業を目指して、借金を背負ったり、10~20代に紆余曲折な経験や失敗や苦労の数々があったと聞いてます。上田監督は『カメ止め』という作品の中でポジティブな笑いへと反転させたんですね。新作の予定はいかがでしょうか

松竹ブロードキャスティングでオリジナルの新作を2018年に撮ることが決まっています。脚本はこれからですが、まだまだカメラを回し続けることになりそうです(笑)。

取材・文/長野辰次 撮影/三橋優美子

プロフィール

上田慎一郎(うえだ・しんいちろう)

1984年生まれ、滋賀県出身。中学1年生の頃から自主映画やコント映像の制作を始め、高校卒業後に独学で映画製作を学ぶ。2009年、映画製作団体「PANPOKOPINA」を結成して代表を務める。2011年に初期唯一の長編作『お米とおっぱい。』を制作し、2015年にはオムニバス映画「4/猫(ねこぶんのよん)」の一編「猫まんま」の監督・脚本で商業映画デビュー。初の劇場用長編映画『カメラを止めるな!』(17年)は“ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2018”で「ゆうばりファンタランド大賞」などを受賞した。

作品紹介

『カメラを止めるな!』

とある自主映画の撮影隊が山奥の廃墟でゾンビ映画を撮影していた。本物を求める監督はなかなかOKを出さず、テイクは42テイクに達する。そんな中、撮影隊に本物のゾンビが襲いかかる。大喜びで撮影を続ける監督だったが、撮影隊の面々は次々とゾンビ化していき…。“37分ワンシーン・ワンカットで描くノンストップ・ゾンビサバイバル”を撮った人々の姿を、前後半の異なる構成と緻密な脚本、37分に渡る長回しなど、さまざまな挑戦と共に描く野心作で、劇場公開後には口コミやSNSで評判が広がって上映館数が340館以上へと拡大。低予算のインディーズ映画としては異例の大ヒットを記録し、社会現象を巻き起こした。

監督・脚本・編集:上田慎一郎 出演:濱津隆之、真魚、しゅはまはるみ、長屋和彰、細井学、市原洋、山﨑俊太郎、大沢真一郎、竹原芳子、浅森咲希奈、吉田美紀、合田純奈、秋山ゆずき Blu-ray:4800円(税抜) DVD:3800円(税抜) 発売中 発売元・販売元:バップ 特典:メイキング、オーディオコメンタリー2種ほか(Blu-ray&DVD共通)/未公開シーン、舞台挨拶集ほか(Blu-ray限定) ©ENBUゼミナール 公式サイト:http://vap.co.jp/kametome/#/boards/kametome-2

上田慎一郎監督が影響を受けたひとり・三谷幸喜の初監督作

『ラヂオの時間』監督:三谷幸喜

一本のラヂオドラマの生放送を舞台に、関係者がパニックに巻き込まれていく様をブラック・ユーモアと共に描くシチュエーション・コメディ。劇団・東京サンシャインボーイズによる舞台を三谷幸喜自身が映画用に脚色し、本作で三谷は映画監督デビューを飾った。1997年公開。

上田慎一郎監督が影響を受けたひとり・高橋歩の代表作

『毎日が冒険』高橋歩/サンクチュアリ出版

「自分の好きなことを極めたい」という想いだけを胸に、未経験、金なし、コネなしで「自分の店」を開き、「自分の本」を出版し、果ては「自分の会社」まで創った“自由人”高橋歩による自叙伝。