Dec 05, 2018

インタビュー

2018年『カメ止め』旋風を巻き起こした張本人!上田慎一郎監督ロングインタビュー

 

カメラは人間の潜在能力を引き出す最強ツール!?

 

──ブルーレイ&DVDにはメイキング映像、2種類のオーディオコメンタリーなど多彩な特典が収録されています。バックステージ映画のさらにその舞台裏を覗くという、マトリョーシカ(入り子構造)的な面白さがありますね。

『カメ止め』のファンの方たちが、『カメ止め』の実際の舞台裏を撮ったメイキング映像をすごく楽しみにしていることは感じていました。それもあって、メイキング映像はドキュメンタリー作品をつくり上げるくらいの気合いで仕上げたんです。とはいえ、ギリギリの予算で完成させた『カメ止め』だったので、メイキング部を雇う余裕もなく、スタッフやキャストの手の空いている人がカメラを回すというスタイルでした。結果的にそれがよかった。外部からメイキング部を呼ぶと、どうしても本編のキャストやスタッフと距離が生じてしまいますから。その点、本編のスタッフやキャストがカメラを回したので、みんなの素の表情を撮ることができた。まだ配役の決まっていないワークショップの段階からメイキング映像は回していたんですが、大ヒットすることをまったく知らずにいる当時の様子を今から見ると、感慨深いものがありますね。

 

 

──ラストシーンの撮影は、かなりギリギリの危うい状況だったことがメイキング映像を見ることで確認できますね。人生には無駄なカット、無駄な出逢いはないんだなと思わせるラストシーンの感動がより深まります。

あのラストシーンは、リハーサルでは一度も成功しなかったんです。でも本番だけは成功して、あのラストカットを撮ることができたんです。火事場の馬鹿力って言うのか、本番になることで本気になれるんでしょうね。リハーサルから本気のはずなんだけど、人間ってつい余力を残しがちですから。失敗したときの代案も用意せずによく撮ったなと呆れられています(笑)。でも、本番ならきっとできると思ったし、できるかできないかのギリギリの感じも狙いたかった。あのラストシーンは日暮監督ではなく、濱津隆之というひとりの男として素で本気になっている。その虚実が行ったり来たりするライブ感をカメラに収められれば最高だなと思っていたんですが、最高以上のものになりました(笑)。

──カメラが回ることで、キャストもスタッフも普段以上の力を発揮してしまう?

だと思います。「本番」という声を聞くと力が発揮できるんでしょうね。リハーサルでは細胞レベルで無意識にブレーキを踏んでいるのが、カメラが回ることでそのブレーキを外し、全力を出してしまうんじゃないかと思います。

 

 

幻の長編デビュー作に込められた熱情

 

──上田監督が2011年に自主製作した初めての長編映画『お米とおっぱい。』も同時DVDリリースされます。5人の男たちが「お米とおっぱいのどちらを残すべきか」という空論を102分間にわたって繰り広げるワンシチュエーションドラマ。上田監督の秘めた狂気を感じました(笑)。

最初は短編として企画したんですが、あれよあれよと長編として撮ることになった作品です(笑)。『カメ止め』とはまったく違った方向性のものですね。でも『お米とおっぱい。』も『カメ止め』も、自分にしか撮れなかったものだと思います。

 

 

──お米は食べること、おっぱいは男のロマン。お米とおっぱいのどちらが大切かという議論は、生活することと夢を追うことのどちらを選ぶかという問い掛けのようにも感じられます。

なるほど(笑)。まったく異なる土俵のものを闘わせて、拮抗するのは何だろうと考えて思いついたのが“お米”対“おっぱい”というベストカードだったんです。“お米”と“パン”だと、日本人なら“お米”が圧倒的勝利になりますからね。“お米”と“おっぱい”、これ以上に大切なものってありませんよね? お米と対等に闘えるのはおっぱいしかないし、おっぱいと五分に闘えるのもお米しかありえない。そんなふうなことを友達と討論しあったことがあって、そこから生まれたアイデアだったです。

──『お米とおっぱい。』は、三谷幸喜脚本作『12人の優しい日本人』(91年)のオマージュ作でもありますね。

そうです。もともと『12人の優しい日本人』がシドニー・ルメット監督の『十二人の怒れる男』(57年)へのオマージュ作なんです。