レジェンド声優インタビュー 田中秀幸[声優前夜編]
arranged by レジェンド声優プロジェクト
アニメ黄金期の立役者である「レジェンド声優」と、自らもレジェンドである声優・古川登志夫さん、平野文さんによる濃密トークをお送りするレジェンド声優インタビュー。今回、お越しいただいたのは、70年代『ドカベン』『白バイ野郎ジョン&パンチ』での主演を経て、80年代には、数々の傑作アニメで重要なサブキャラクターを演じた名優・田中秀幸さん。さわやかで、誠実さを感じさせる、田中秀幸さんのジェントリーボイスの秘密に迫ります。
自分が演技の道に進めたのは『アッちゃん』のおかげ
- 古川登志夫: (以下、古川)
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古川登志夫と平野文の二人で、伝説的声優の皆さんに貴重なお話をおうかがいしているレジェンド声優インタビュー。今回は田中秀幸さんにお越しいただきました。よろしくお願いいたします。
- 田中秀幸: (以下、田中)
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よろしくお願いします。今日は素敵なお二人とお話ができて光栄です。
- 古川:
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でも、最近はよく会ってるよね。会っては健康の話ばっかりしてる(笑)。今日はそういう話じゃなくて、声優としての話を聞かせてほしいな。
- 平野文: (以下、平野)
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ではまず、秀幸さんが声優になるまでのお話を聞かせてください。私が記憶に残っているのは、ラジオドラマ『アッちゃん』(1956年~1970年/田中さんは1962年まで主人公・アッちゃん役を担当)でデビューなさったというお話。まずはそのあたりのいきさつから教えていただけますか?
- 古川:
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奇遇なことに『アッちゃん』は、今、我々がいるニッポン放送で放送していたんだよね。
- 田中:
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そうですね。ただ、ニッポン放送には建て替え後、初めて来ました(編集部注:ニッポン放送は創業時の社屋の建て替えのため、1997年から2004年の間、一時的にお台場に移転していました)。懐かしいやら、あまりの変わりっぷりに驚いたりやら、という感じです(笑)。
そして『アッちゃん』ですか……。この作品がなかったら私はきっと演技の世界に入っていなかったんでしょうね。『アッちゃん』は僕が5歳の時に始まったんですが、当時はまだテレビもほとんど普及してなくて、ラジオ全盛という時代でした。
- 平野:
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ラジオが娯楽の全てという感じでしたよね。
- 田中:
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当時の番組表を見ると、各局、午前中に「ホームドラマ」と呼ばれるラジオドラマがずらーっと並んでいて、『アッちゃん』もその1つとして始まりました。で、僕がどうして アッちゃん役をやることになったかというと、この作品の主役が公開オーディション……当時はそんな言葉はなかったんですが……で選ばれることになって、それにかつて作家・映画監督志望だった父親がどうしても行ってみたかったから、なんです(笑)。
- 古川:
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そんな理由だったの!?
- 田中:
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オーディションにはラジオ全盛期だったこともあって、400人くらい集まったのかな。ほとんどが児童劇団に所属していた子でしたね。僕みたいな素人がくるような場所じゃなかった(笑)。