島津ヒロインの根底に共通するのは「●●のヒロイン」?
- 古川:
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『うる星やつら』以降も、島津さんはいろいろな役を演じているけど、それらの中で、特に気に入っている役はある?
- 島津:
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私、その質問には答えないようにしているんです。どれかを挙げてしまうと、挙げられなかったキャラクターが可哀想じゃないですか。私、役に入り込んじゃうタイプなので、選ばれなかった子のことを考えると辛くなっちゃうんです。『戦闘メカ ザブングル』(1982年)のラグも、『ダーティペア』(1985年)のユリも、『らんま1/2』(1989年)の小太刀も、みんな大好きですよ。
- 古川:
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ごめん、質問が悪かった。確かに僕もやらせてもらった役はみんな大切だしね。じゃあ、質問を変えて、どれか「印象に残っている役」はある?
- 島津:
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それだと今は『さすがの猿飛』(1982年)かな。この作品ではヒロインの霧賀魔子ちゃんをやらせていただいたんですが、主人公の肉丸くんを三ツ矢雄二さんが、マスコットキャラの忍豚を田中真弓さんが演じるという、そのまんま当時やっていたラジオ番組『アニメトピア』チームな作品だったんです。で、今年、この作品の原作漫画の続編がスタートしたんですよ。(編集部注:月刊ヒーローズ誌上にて、今年7月より原作者・細野不二彦さん自らが手がける続編『さすがの猿飛G』が連載開始)ここに来て、急に盛り上がり始めています。また、アニメ化したら嬉しいわぁ(笑)。
- 平野:
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otoCotoスタッフから聞いてほしいって言われたんだけど、『機動戦士Zガンダム』(1985年)のフォウ・ムラサメはどうかしら?
- 島津:
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実はフォウは、この流れの中ではちょっと言いにくいんですけど、どちらかというと印象の薄い役だったんです。それは彼女の登場する話数がとても少なく、しかも途中からの登場だったから(編集部注:第17話「ホンコン・シティ」から第20話「灼熱の脱出」まで。その後、主人公・カミーユだけに見える幻として、最終話を含む数話に登場するが、それを含めても10話に満たない)。
- 古川:
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あれ、そんなもんだっけ?
- 島津:
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その上、当時はアフレコの時に絵が間に合ってなかったでしょ。だから、実際の放送を見るまで、フォウの髪の毛の色が何色か知らなかったくらいなんですよ(笑)。
- 平野:
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でも、たったそれだけしか登場しないのに、ファンの間では大人気なんでしょう? そのあたりは冴子ちゃんの役作りとかも貢献してるんじゃないかしら。
- 島津:
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いえいえ、先ほどもお話ししたように途中からの登場なので、作品の世界に入り込むのにすごく苦労しました。まず、世界観が分からない(笑)。しかも、レギュラーキャラではないので、物語の流れがわからないから、フォウがこの作品でどういう役どころなのか説明していただいても、しっくりこなくて。台本も当時は当日その場で渡されていましたしね。ただ、同時期に『機動戦士ガンダム』の主役を演じていらした古谷徹さん(アムロ・レイ役)が出ていらしたので、ご一緒させていただくことで、とても勉強になりました。
- 古川:
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僕(カイ・シデン役)も出てたんだけどね(笑)。
- 平野:
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古谷さんとのからみはどうだった?
- 島津:
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古谷さんは本当にすごい! アムロもフォウと同じく、中盤しか登場しないんですが、完全に若手出演者をリードしていらっしゃいました。全体を引っ張り上げる方。朝早くからの収録だったんですけれど、最初からハイテンションで、古谷さんがマイクの前に立たれるだけで緊張感が違いました。古谷さんは自分の演技で若手出演者を育てている。大事なことを全部やって見せてくださるんです。
- 古川:
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いわゆる「背中で語る」っていうヤツだね。富野監督はどうだった?
- 島津:
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最初に役柄についてうかがった説明で、フォウのキャラをつかみきれずに悩んでいたら、一言、「この子はね、悲劇のヒロインなんだよ」って言ってくだったんです。それでスッとフォウというキャラクターが私の中に入ってきた。実際はそんな単純に言い表せるものではないと思うんですが、富野さんは、当時の私に一番分かりやすい言葉を選んでくださったのだろうと思います。
- 古川:
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監督はその辺り、とても丁寧だよね。