- 柴田:
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そうそう、こんな美味い話はないぞって(笑)。最初のメンバーは11人だったかな。
- 古川:
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それが今や400人ですからね。
- 平野:
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でも、青二プロに移籍するということは、声優を本業にするということでしょう? その辺りに逡巡はなかったんですか?
- 柴田:
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そりゃもちろん悩んだよ。でも、当時の俺は「これ以上、役者(実写俳優)を続けるのは無理だ」って壁にぶち当たっていたんだよ。自分には理想とする演技ができないのではないか、って。
- 平野:
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どんな理想がおありだったんですか?
- 柴田:
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生活感が表現できる役者になりたかった。映画やテレビドラマで名脇役と言われている人たちって、ただ画面の端に立っているだけで生活感が匂い立ってくるだろう? あれは技術じゃできないんだよ。『熱血カクタス』では主役もやらせてもらったし、他にもいろいろな作品に出させてもらったんだけど、俺の演技には、全く生活感が感じられないんだよな。
- 古川:
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『熱血カクタス』ではギターぶら下げて馬に乗ってたりしていましたからね。舞台はメキシコだし(笑)。子供心に外人みたいな人だなぁって思ってましたよ。
- 平野:
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無国籍風のテレビスターだったんですよね。それはそれで得がたい個性だと思うんですが……。
- 柴田:
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でも、それは俺の理想ではなかったんだよ。ただ、生活感のある演技ができない反面、存在感だけはあるなってことにも気がついた。そして、それを活かす道を考えた時に、声優なら勝負できるんじゃないかって思い始めたんだな。
- 古川:
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そして、そこから『タイガーマスク』のミスターXが生まれるんですね!
構成・文 / 山下達也
撮影 / 田里弐裸衣
柴田秀勝(しばたひでかつ)
3月25日生まれ、東京都出身。青二プロダクション所属。主なアニメ出演は、「タイガーマスク」のミスターX役、「宇宙戦艦ヤマト」のガイデル役、「鋼の錬金術師」のキング・ブラッドレイ役、「NARUTO-ナルト-」の三代目火影役、「ジパング」のヴァンデクリフト役、「銀河旋風ブライガー」、「宇宙海賊キャプテンハーロック」のナレーション役など。TBS「大岡越前」、TBS「水戸黄門」ほか多くのテレビ番組でナレーションを務める。趣味はゴルフ、スキューバダイビング、旅行。特技は乗馬、歌舞伎。
古川登志夫(ふるかわとしお)
7月16日生まれ、栃木県出身。青二プロダクション所属。1970年代から活躍を続け、クールな二枚目から三枚目まで幅広い役を演じこなす。出演している主なアニメーション作品には、TVシリーズ「機動戦士ガンダム」(カイ・シデン役 1979~80年 テレビ朝日)、映画・TVシリーズ「うる星やつら」(諸星あたる役 1981~86年 フジテレビ)、映画・TV「ドラゴンボール」シリーズ(ピッコロ役 1986~ フジテレビ)、映画・OVA・TVシリーズ「機動警察パトレイバー」(篠原遊馬役 1989~90年 日本テレビ)、映画・TV「ONE PIECE」(ポートガス・D・エース役 1999年~)など多数ある。
平野文(ひらのふみ)
1955年東京生まれ。子役から深夜放送『走れ!歌謡曲』のDJを経て、’82年テレビアニメ『うる星やつら』のラム役で声優デビュー。アニメや洋画の吹き替え、テレビ『平成教育委員会』の出題ナレーションやリポーター、ドキュメンタリー番組のナレーション等幅広く活躍。’89年築地魚河岸三代目の小川貢一と見合い結婚。著書『お見合い相手は魚河岸のプリンス』はドラマ『魚河岸のプリンセス』(NHK)の原作にも。