レジェンド声優インタビュー
柴田秀勝[声優前夜編]
arranged by レジェンド声優プロジェクト
アニメ黄金期の立役者である「レジェンド声優」と、自らもレジェンドである声優・古川登志夫さん、平野文さんが濃密トークを繰り広げるレジェンド声優インタビュー。今回は、声優業界のご意見番としても知られる声優・柴田秀勝さん。『タイガーマスク』のミスターXなど、数々のボスを演じてきた柴田さんが、その声優道をふり返ります。
十七代目中村勘三郎も認めた柴田秀勝少年の輝き
- 古川登志夫:
(以下、古川) -
レジェンド声優インタビュー、今回は「スーパープレミアムレジェンド声優」の柴田秀勝をお迎えしてお送りします!
- 柴田秀勝:
(以下、柴田) -
スーパープレミアムってなんだよ? ビールの名前かよ(笑)
- 古川:
-
この企画では、10代の声優はアイドル声優、20代は若手声優、30代は中堅声優、40代はベテラン声優、50代は大御所声優、60代はレジェンド声優、70代はスーパーレジェンド声優、80代以降は殿堂入りということで「スーパープレミアムレジェンド声優」と呼ぶことになっているんですよ。
- 柴田:
-
じゃあ俺はスーパープレミアムの新人ってことだな(編集部注:柴田さんは、今年3月、80歳になったばかり)。
- 古川:
-
あまりに恐れ多いので、僕は、いつもしてこない蝶ネクタイなんてしてきましたよ。
- 平野文:
(以下、平野) -
そんな柴田さんは、1937年生まれ。東京の浅草で育ったそうですね。
- 柴田:
-
今はもうなくなっちゃったんだけど、当時、浅草には国際劇場っていう劇場があってね。そこの通りを一本挟んだ向いの経師屋(きょうじや)の一人息子として生まれたんだ。……経師屋って知ってる?
- 平野:
-
ふすまとか屏風とかの張り替えをするお仕事ですよね。やっぱり、そういう職人さんの家に生まれたことが、演技の道を志すきっかけになったんですか?
- 柴田:
-
いや、それよりも浅草という町に生まれたことが大きかったんじゃないかな。当時は浅草と言えば劇場、映画館だからさ。4、5歳くらいの歳になると、毎日のように映画館に行って遊んでいたんだよ。シミキン(清水金一さん)とか、エノケン(榎本健一さん)とか見て大きくなった。
- 平野:
-
そうした名優の皆さんから刺激を受けて、日芸(日本大学芸術学部)に進学することになるんですね。
- 柴田:
-
いや、それがそこに至るにはかなり長い話があってさ……。
- 平野:
-
ぜひ、聞かせてください!
- 柴田:
-
俺はもともと吃音症でね。日常会話の中で、「た」行が出てこなかったの。「あ、あ、あ……」ってなっちゃう。そうしたら、小学校の先生が、とにかく友達と喋りなさいって。国語の時間も毎回のように朗読させられてね。だけど、当然、きちんと喋れないわけよ。俺は見栄っ張りなもんだから、それがすごく恥ずかしくてさ。何としても直してやろうってとにかくがんばったんだ。
- 古川:
-
うまく喋れないって、今の柴田さんからは想像もできないようなエピソードですね。
- 柴田:
-
先生もいろいろ調べてくれて、ある日、吃音症は歌うと、どもらないと云われているから試してみろって教えてくれてね。実際に試してみたら本当にどもらなくて、それで最初は歌手になろうなんて決意したんだよ。
- 古川:
-
えええ?