Feb 15, 2021 interview

ミカ・カウリスマキが贈るラップランドの美景で包むささやかなグローバリゼーション『世界で一番しあわせな食堂』

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ジョニー・デップとヴィンセント・ギャロが共演したシニカルラブコメディ『GO!GO!L.A.』で一躍日本でも名を知られることとなったフィンランドの巨匠ミカ・カウリスマキ監督。彼の最新作『世界で一番しあわせな食堂』が今週2月19日(金)に公開される。

本作はフィンランド、ラップランドの風光明媚な景色を目に映しながら、異文化の調和がもたらすささやかな幸せを示してくれる。様々な国で暮らした経験を持ち、母国と世界を、そして人間を愛しているミカ・カウリスマキだからこそ、創ることができた映画だろう。人の表情、民族特有の風習、そして異文化との優しい衝突と健やかな融合、これらが贅沢なロケーションを背景にスクリーンから暖かく流れてくる。
古くは八百万の神を祀り、食は人の天なりと悟り、経済成長の一端で美しい自然を失ってきた我々日本人にとっては、“ハマる“映画なのは間違いない。監督いわく「シンプルなプロットの中でディテールにこだわった」作品であり、そのこだわりを如何にかたちにしていったのかオンラインインタビューで聞くことができた。

ミカ・カウリスマキ監督
オンラインインタビューに答えるミカ・カウリスマキ監督

展開で魅せる映画ではなく「雰囲気」を大切にした映画

──まず感想をお伝えしたいのですが、人間を改めて好きになる映画でした。多分この作品は日本人好みの映画だと思います。私も日本の多くの人に観て頂けることを願ってます。

サンキュー。(日本語で)ありがとうございます。

──どういうきっかけでこの作品は生まれたのでしょう?

アイディアは突然浮かんで、プランニングもそんなに長くしたっていうわけでもないんです。私はフィンランド北方の美しい自然を持つラップランド地方が大好きで、夏も冬も訪れているんですが、あるとき中国からのたくさんの旅行客を見かけることがありました。経済的には良いことと感じながら、ラップランドの美しい自然の在り方を考えると少し不安もあったり、ちょっとアンビバレントな心情になっていたんですね。
そんなタイミングでこの作品の脚本家(ハンヌ・オラヴィスト)とバーで話をしているときに、彼が中国の伝統、特に食や漢方に興味があってリサーチ中だってことを話してくれたんです。それを聞いて、私は自分の経験と彼の興味を合わせて物語をつくろうと思いました。

──経験から生まれた自然発生的なアイディアだったんですね。

小さなかたちのグローバリゼーションというものを見せようと思いました。異なる文化の人同士が、ラップランドという場所で出会い、そしてひとつになっていく、それが大きなアイディアでした。
展開で魅せる映画ではなく、「雰囲気」を大切にした映画。この作品の中で唯一のアクションは、異文化同士の優しい衝突のみなんです。

慣れない異国人にとまどいを見せるポホヤンヨキ(舞台となる架空の田舎町)の人々
『世界で一番しあわせな食堂』©Marianna Films

──まるでフィンランドで自分自身が物語を歩んでいるようでした。観客を惹き込むのに工夫した点があれば教えて下さい。

雰囲気を大切にした映画、それだけであるからこそ役者の感情そのものがしっかりと伝わる作品にしなければと思いました。
プロットには頼らない作品でしたので、その瞬間の雰囲気やムードというもの信頼しなければならず、それがとてもむずかしいところでもありました。

世界で一番しあわせな食堂
美しいラップランドの景色を堪能できるのも本作のみどころ
『世界で一番しあわせな食堂』©Marianna Films