Sep 04, 2017 interview

天才ノーラン、すべては狙いである“主観のストーリーテリング”から生まれる―『ダンケルク』インタビューで明かす映画への情熱

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作品へのインスピレーション、一番の源は“音楽”?

 

──今回、実話の映画化にチャレンジしたということで、近い将来、たとえば愛読書の小説を映画化する野望などはありませんか?

もちろん希望はある。でも、ここで何か一冊のタイトルを出すと、そのアイデアが他のフィルムメーカーにインスピレーションを与えてしまうかもしれない。ハリウッドでは企画から完成まで長い歳月を必要とするから、その間にアイデアが盗まれる可能性もある。だからこうしたインタビューでは、タイトルを言わないことにしてる(笑)。

──映画化に着手する決め手は、どんな瞬間に訪れるのでしょう。

これまで私は、「バットマン」というコミックブックも映画化したし、いろいろなタイプのストーリーに興味がある。映画化への推進力は、いかに感情的につながりがあるかどうかだ。映画化を決めると、本当に長い時間、作品と関わることになる。だから、その情熱が相当なレベルまでいかないと、映画を撮りたくないんだよ。

 

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──アイデアを探すときにも、スマートフォンを使わないそうですね。

私はスマートフォンを持っていない。自分の時間は自分でしっかり管理したいからだ。インターネットで何かを調べると、ゴシップが出てきたりして、それはそれで楽しいかもしれないが、実生活にとって価値はない情報だよね? だいたい映画を作っているときは、忙しくて仕方ない状況になるので、ポケットからスマートフォンを出して使う時間も惜しくなる。無駄な時間は極力、避けたいんだ。

──では作品へのインスピレーションの源は何ですか?

読書も好きだし、テレビや映画も観るけれど、一番のインスピレーションは音楽かもしれない。常に音楽用のプレイヤーは持ち歩いてる。あとは、いろいろな文化の多様な側面にふれることかな。

 

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──最後に、『ダンケルク』が世界中の観客にアピールしている理由は何だと思いますか?

若い兵士たちに対し、四方八方から恐怖が襲いかかってくる。彼らは銃を撃つか、死を選ぶかという究極の状況にも陥る。そして困難を乗り越えて、故郷に帰ろうとする。その過程に、人間としての根源的な要素が多く含まれていると感じるね。『ダンケルク』が国や文化を超えて、ストレートに魂を揺さぶるポテンシャルがあることは、ずっと前から信じていたよ。

取材・文 / 斉藤博昭

 

プロフィール

 

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クリストファー・ノーラン

1970年生まれ、ロンドン出身。『フォロウイング』(98)で長編監督デビューし、続く『メメント』(00)でその才能が世界に知れ渡る。『インソムニア』(02)を経て、『バットマン ビギンズ』(05)、『ダークナイト』(08)、『ダークナイト ライジング』(12)の3部作で世界的巨匠の地位を確立。『インセプション』(10)、『インターステラー』(14)とオリジナルのアイデアで大ヒット作を連発してきた。『インソムニア』を除くすべての監督作で脚本の執筆にも参加。『マン・オブ・スティール』(13)では製作と原案、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(16)では製作総指揮を務めている。

 

作品紹介

 

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映画『ダンケルク』

第二次大戦中の1940年。フランスの海辺の町、ダンケルクで40万人の英仏連合国軍の兵士がドイツ軍に包囲される。若き兵士のトミーを中心に、彼らがどうやって撤退できたのかを、陸・海・空それぞれの視点で描く。民間人の船も加わった史上最大といわれる救出作戦を、クリストファー・ノーラン監督はIMAXカメラで撮影。スケール感満点の映像で、脱出する兵士たちの感覚を臨場体験させる。パイロット役のトム・ハーディー、オスカー俳優のマーク・ライランスら実力派とともに、若き兵士役に新鮮な顔ぶれが抜擢されたことも話題。

映画『ダンケルク』
監督・脚本・製作:クリストファー・ノーラン
出演:トム・ハーディ、マーク・ライランス、ケネス・ブラナー、キリアン・マーフィー、ハリー・スタイルズ ほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
© 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED.
2017年9月9日(土)公開
公式サイト:dunkirk.jp

 

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