Dec 31, 2017 column

“監督”で観るべき傑作が多かった2017年洋画、今年のベスト5&2018年の注目作は?

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『メッセージ』(DVD&ブルーレイ 発売中) © 2016 Xenolinguistics, LLC. All Rights Reserved.

数多くの映画が公開された2017年、映画ライターが選ぶ今年のベスト映画5本と、来年の期待作は?監督の作家性・個性と作品が調和を果たし、傑作・快作が多く生み出された“洋画編”をお届けする。

 

2017年、監督として最も話題に上ったのは、ドゥニ・ヴィルヌーヴかもしれない。かの伝説の作品を35年ぶりに復活させた『ブレードランナー 2049』で、前作の世界観をきちんと受け継ぎつつ、さらなる高みを達成した力量はもちろん、自身もアカデミー賞監督賞候補となった『メッセージ』が圧巻だった。地球外生命体とのコンタクトを描くSF作品ながら、原作の複雑な構造もキープしつつ、観客がすんなり感情移入できる作りにしたヴィルヌーヴ。現代版『2001年宇宙の旅』(68年)を完成させた……と言っては、やや大げさか。

 

『ベイビー・ドライバー』(DVD&ブルーレイ 2018年1月24日発売) © 2017 TriStar Pictures, Inc. and MRC II Distribution Company L.P. All Rights Reserved.

 

エドガー・ライト監督の『ベイビー・ドライバー』も、アクションと音楽の究極の融合に、監督の持ち味である映画マニアなテイストも加え、作家性+エンタメの大成功例。この作品と、アカデミー賞も賑わせた『ラ・ラ・ランド』は、まったく新しいミュージカルというスタイルが共通しており、2017年は他にも音楽やダンスが際立つ傑作が多かった。

音楽といえば、『ダンケルク』の音の使い方も、2017年、“聴覚の記憶”として最も印象に残っている。時計の秒針の音によって伝わってくる、戦場での得体の知れないスリル。映画全体が時限爆弾のような緊張感を生み出し、クリストファー・ノーラン監督は今作で戦争映画に革新をもたらした。『ダンケルク』も、劇中での時間の流れが独創的で、この時間へのアプローチは『メッセージ』とも共鳴する。

 

『ダンケルク』(DVD&ブルーレイ 発売中) © 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED.

 

2017年も多くのアクション大作が話題になったが、その中でも映画ファンに対して圧倒的な存在感を放ったのが『キングコング:髑髏島の巨神』ではないか。これまで何度も映画となったキングコングだが、次々と巨大生物を登場させ、モンスター映画としての醍醐味をストレートに追求した姿勢が爽快だった。今後のゴジラとの共作への期待も激しく高まる。今作のジョーダン・ボート=ロバーツもそうだが、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』のライアン・ジョンソンのように、“真性オタク”の監督がどんどん活躍している近年の現状は、嬉しい驚き。

『ラ・ラ・ランド』のデミアン・チャゼルも含め、2017年は、監督の作家性・個性が、作品と見事な調和を果たし、傑作・快作が生み出された年となった。ミニシアター系でも、『わたしは、ダニエル・ブレイク』のケン・ローチや『希望のかなた』のアキ・カウリスマキのように、長いキャリアを誇る名匠が、最高レベルの作品を届けてくれた。

 

『レディ・プレイヤー1』(2018年4月20日公開) ©2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED.

 

では来たる2018年は、その流れでどんな期待作が待機しているのか? 気になるのは、ハリウッドの御大、スティーヴン・スピルバーグの作品だ。社会派の『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』もあるが、大きな話題を集めそうなのが『レディ・プレイヤー1』。主人公たちがVRによって、ヴァーチャルな世界で冒険を繰り広げる物語だが、1980年代を中心にした懐かしの人気キャラクターやアイテムが多数登場。日本からは、あのガンダムや、まだ公式発表されていないが意外なキャラも参戦するので、ネタの宝庫として注目されること必至だ。

そしてほぼ同じ時期、4月27日(金)に公開されるのが、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』。マーベル・シネマティック・ユニバースのひとつの集大成として、過去最高の数のヒーローが集結する。スケール感がどこまで広がるのか、計り知れない。さらに2015年、日本で最大ヒットとなった『ジュラシック・ワールド』の続編『ジュラシック・ワールド/炎の王国』も、火山噴火寸前の島を舞台に“恐竜大戦争”といった展開になだれ込みそう。シリーズ作品の過激なバージョンアップが、2018年の映画のトピックとして楽しみだ。

文/斉藤博昭

 

作品紹介

 

『メッセージ』

Blu-ray:4743円(税抜)DVD:3800円(税抜)
発売中
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
© 2016 Xenolinguistics, LLC. All Rights Reserved.

 

『ベイビー・ドライバー』

Blu-ray(初回生産限定):4743円(税抜)DVD:3800円(税抜)
2018年1月24日(水)発売
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
© 2017 TriStar Pictures, Inc. and MRC II Distribution Company L.P. All Rights Reserved.

 

『ダンケルク』

ブルーレイ&DVDセット:3990円(税抜)
プレミアム・エディション ブルーレイ&DVDセット(初回限定生産):4990円(税抜)
発売中
発売・販売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
© 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED.

 

『レディ・プレイヤー1』

2018年4月20日(金)公開
配給:ワーナー・ブラザース映画
© 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED

 

関連書籍紹介

 

『ダンケルク』ジョシュア・レヴィーン、武藤陽生(訳)/ハーパーBOOKS

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『キングコング 髑髏島の巨神』ティム・レボン、有澤真庭(訳)/竹書房文庫

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