ワーナーの「ローカライズ」にこだわった宣伝戦略
池ノ辺 ワーナーの邦画はいろいろ試行錯誤しながら進めていったということでしたが、邦画、洋画問わず、私はワーナーの日本での宣伝戦略がどんどんカッコよくなっていって、それが大ヒットにつながっていったんじゃないかと思っていました。つまり洋画に関してもインターナショナルというよりは日本独自の宣伝をしていこうという動きだったので、それはすごく面白いと思っていました。
山田 確かに当時は、邦画と洋画の売り方には圧倒的な違いがあって、洋画に関していえば、本社からクリエイティブが届けられ、それをベースに日本流にアレンジしていくわけです。でもすべて本社にお伺いを立てて、フィルムメーカーの承認をとって進めていかなければいけないので、100%日本のやりたいことはできなかった。それでも可能な限り、日本流に変えていくということをやっていきました。
池ノ辺 それってものすごくエネルギーが必要じゃないですか。
山田 そうです。でも欧米と日本って映画を観るポイントが違うんですよ。やっぱり日本人に合ったコピーだとか、ビジュアルを日本流に作っていかないと、なかなかヒットしない。アメリカだとコメディ路線で売っているものでも、日本だと「この作品はコメディ推しが難しいかな。じゃあ、ちょっと感動的なところで売ろう」となる。

池ノ辺 確かに日本の予告編は、感動的なものとかエモーショナルなドラマが最高に素晴らしいとワーナー本社から言われたことがあります。ただ、アクションものなんかは向こうのほうが上手いということでしたけどね (笑)。他の国は、予告編にしても、アメリカから来たものにそのまま母国語の字幕や吹き替えをつけただけで出したりしていますよね。わざわざ作り直したりはしない。
山田 ヨーロッパなんかは特にそうですよね。韓国は変わってきました。日本がそういうふうにやっているんだったら韓国も自分たちでやろうとか、あるいは日本の予告編が良ければそれを利用する場合もありました。だから日本の予告編をはじめとするクリエイティブ作りは非常に本社からの評価も高かった。本社がこれを認めてやらせてくれたというのも非常に大きかったと思いますね。日本側からのこうした意見を汲み上げてくれたんです。
池ノ辺 そんなことしちゃダメだよじゃなくてね。
山田 日本からはこれまでもずっと、本社へローカライズの必要性を伝え続けてきています。ただ、ローカライズは本社側にとっても負担が大きく、近年はだいぶ減ってきたように感じます。また、日本公開がアメリカ公開より遅れる場合、本社としてはアメリカ公開が終わった時点で次の作品に向かうので、感覚的には「もう終わった作品」と言う認識になっている部分もあると思います。
池ノ辺 時代なんですかね。
山田 時代なのかな。SNSやデジタルのマーケティングが変わってきたということで、昔みたいに日本流のクリエイティブを作ってそれを出すという形が変わったのは事実ですね。
池ノ辺 確かに、アメリカで公開されてしまうと、すぐにSNSでみんな知っている。
山田 だから全世界的にほぼ公開日を合わせてきているというのが現状ですよね。
池ノ辺 そうすると、日本用のクリエイティブがなかなかできない。
山田 そうなんです。素材がデジタルになってきたこともあって、アメリカから届くのがアメリカの公開日に近かったり、あまり早くから出すと間延びしてしまうということで、公開の間近に盛り上がりのピークを持ってくるために、素材が届くのもより公開に近く、ギリギリになっているんです。そうすると日本で独自のアレンジをするというのはますます難しくなってきていました。
池ノ辺 映画の宣伝も、変わらざるを得ないということなんですね。