Jan 07, 2023 interview

友近が語る 『嘘八百 なにわ夢の陣』の笑いの底にある真面目な芝居

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お笑いと芝居の狭間で

池ノ辺 私はお笑い芸人としての友近さんが大好きなんですが、先ほどコントと似ているという話もされてましたけど、お笑いと映画って、役づくりなどで通じるものはあるんですか。

友近 実は私自身は、そこはあまり考えたことがないんです。台本をもらった時には、「この人はどんな声でしゃべるんだろう」とまず考えます。そこから声を出してみて、しっくりきたら「これでいこか」と、そんな感じです。

ですからコントが生かされてるとか、コントに生かされているというのはあまり考えたことがないですね。ただ、自分で気づかないところで生かされているのかもしれないですけど。

池ノ辺 『嘘八百』は、これからもシリーズが続きそうですね。寅さんシリーズみたいに、お正月はこれだ! となるといいですね。

友近 そうなんです。こういう昭和の色の残った、人情味溢れるコメディで、でもちょっと歴史や文化も感じられるような映画って少ないじゃないですか。ですからお正月にはピッタリじゃないかと思いますね。そのうち私の地元の愛媛でもやりましょうと言ってるんです。

池ノ辺 それは実現できるといいですよね。では、最後の質問になりますが、友近さんにとって演じるとはどういうことですか。

友近 これはコントの話になりますが、例えば、私は歌手の「水谷千重子」とかピザ屋のおっさんの「西尾一男」とか、やらしてもらってますけど、水谷千重子や西尾一男に変身すると、私からは出ないフレーズが自然に出てくるんです。歩き方からクセまで全然違ってくる。これは自分でも驚いています。

女優としてお芝居をしているときは、周りにどう映っているのか私にもまだわからないんですけど、成り切ると、本当にその人の人格が一人歩きするんですね。本当に存在する感じになる。これはめちゃくちゃゾクゾクするし楽しいです。このままいって、私が死んだら彼らはどうなるんだろう、水谷の遺影や西尾一男の遺影も作らなきゃならないかなとか(笑)、思ってしまいますもん。

池ノ辺 それは確かに楽しいですね。

友近 女性の方から、西尾一男と結婚したいとかお手紙いただいたりもするんですよ(笑)。これは、やはり生の舞台だからこそ伝わるということもあると思います。ですからディナーショーとかライブは、これからも続けていきたいですね。女優も、難しいですけれど、いろんな役、いろんな作品にチャレンジしてみたいとは思っています。

池ノ辺 また違った友近さんにお会いできるのを楽しみにしています。

インタビュー / 池ノ辺直子
文・構成 / 佐々木尚絵
写真 / 藤本礼奈

プロフィール
友近(ともちか)

芸人 / 俳優

1973年8月2日生まれ。愛媛県出身。2000年デビュー。03年にNHK新人演芸大賞で大賞、NHK上方漫才コンテストで優秀賞、04年にABCお笑い新人グランプリで優秀新人賞を受賞。お笑い芸人として活動する一方、女優として舞台、テレビドラマ、映画などに多数出演。2019年、『嘘八百』(18)で第28回日本映画批評家大賞助演女優賞を受賞。代表作は、NHK連続テレビ小説「あさが来た」(15~16)、「プロミス・シンデレラ」(21/TBS)、「全裸監督(シーズン2)」(21/Netflix)、映画『老後の資金がありません!』(21)、『暴れる、女』(21)など。歌手「水谷千重子」やプロアルバイター「西尾一男」としても活躍中。21年には明治座・博多座で水谷千重子座長公演を開催。

作品情報
映画『嘘八百 なにわ夢の陣』

詐欺師まがいの古美術商・小池則夫と、うだつの上がらない陶芸家・野田佐輔のコンビがまたもや復活。これまで千利休、古田織部の茶器をめぐり大騒動をおこしてきた2人が今回目をつけたのは、かつて豊臣秀吉の出世を後押ししたと言われる七つの縁起物「秀吉七品(しちしな)」。舞台は大阪。今年天守閣復興90周年となる大阪城での撮影も敢行し、骨董ファンのみならず、歴史ファンの興味もそそる豊臣秀吉の1億円級のお宝“鳳凰”をめぐり、三たび抱腹絶倒の騙し合いが繰り広げられる。

監督:武正晴

出演:中井貴一、佐々木蔵之介、安田章大、友近、森川葵、前野朋哉、宇野祥平、塚地武雅、吹越満、桂雀々、山田雅人、芦屋小雁、中村ゆり、酒井敏也、土平ドンペイ、松尾諭、高田聖子、麿赤兒、升毅、笹野高史

配給:ギャガ

©2023「嘘八百 なにわ夢の陣」製作委員会

公開中

公式サイト gaga.ne.jp/uso800-3/

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、『ボディーガード』『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ』『マディソン郡の橋』『トップガン』『羊たちの沈黙』『博士と彼女のセオリー』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ノマドランド』『ザ・メニュー』『哀れなるものたち』ほか1100本以上。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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