Mar 16, 2024 interview

イ・ソルヒ監督が語る 人に対するとめどない好奇心から生まれた映画『ビニールハウス』

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貧しさゆえに家もなくビニールハウスに暮らす女性、ムンジョンの夢は、少年院にいる息子と再び一緒に暮らすこと。引っ越し資金を稼ぐために盲目の老人と、重い認知症を患う彼の妻の訪問介護士として働いている。そんなある日、風呂場で突然暴れ出した妻が、ムンジョンとの揉み合いの最中に転倒。床に後頭部を打ちつけ、そのまま息絶えてしまう。ムンジョンは息子との未来を守るため、認知症の自分の母親を連れて来て、彼女の身代わりに据える。絶望の中で咄嗟に下したこの決断は、さらなる悲劇を招き寄せるのだった――。

監督・脚本・編集を手掛けるのは、ポン・ジュノ監督らを輩出した名門映画学校、韓国映画アカデミーで学んだ29歳のイ・ソルヒ監督。大ヒットドラマ等で活躍する名女優キム・ソヒョンは、新人監督のオリジナル脚本に魅了され、本作のムンジョン役で極限の感情表現を求められる新境地に挑戦し、多くの賞を獲得している。

予告編制作会社バカ・ザ・バッカ代表の池ノ辺直子が映画大好きな業界の人たちと語り合う『映画は愛よ!』、今回は、『ビニールハウス』のイ・ソルヒ監督に、本作品や映画への思いなどを伺いました。

韓国映画界を担う新しい才能

池ノ辺 日本へは何度かいらっしゃっているんですか?

ソルヒ 2回目ですが、前回は大阪だけだったので、東京は今回が初めてです。

池ノ辺 東京はいかがですか。

ソルヒ きれいですね。特に、陽射しの色や温かみなどがいいなと思って。それに空気も澄んでいる気がします。韓国はPM2.5などの影響もあって、空気がここまで澄んでいないんです。

池ノ辺 では、今度は日本でも撮影してください。

ソルヒ ぜひその機会をください(笑)。

池ノ辺 今回、監督にお会いできるのを楽しみにしてました。映画もドラマも素晴らしくて、私は韓国が大好きなんです。

ソルヒ 逆に、私を含め私の周りの映画を作っている同僚たちは、日本の映画の歴史、文化に対する憧れを持っています。本当にすごいなあと思って。もちろん韓国の映像文化が素晴らしいとおっしゃっていただいたのは、質的な、技術的なところについて評価してくださっていると思うのですが、確かに、今、技術的にずいぶんと発展してきているのは間違いないとは思います。それでも日本の映画の歴史に近づくには、まだまだなのではないかと思ってます。

池ノ辺 ソルヒ監督が、映画の道を選ばれたのは、身近に良い映画の環境があったからなんですか。

ソルヒ 私の場合は、いい環境にいなかったからこそ、今映画を作れているのではないかという気がします。

池ノ辺 韓国の映画アカデミーのご出身ですよね。ポン・ジュノ監督などもそこの出身とか。

ソルヒ そうです。国家の支援を受けて映画が作れる学校があるというのは、本当に恵まれていることだと思いますし、自分がそこに入学できたのは本当に運が良かったと思っています。普通は「アカデミー」というと「どんなことをするんですか」と、説明しにくい場合が多いと思うんですが、このアカデミーは、「ポン・ジュノ監督が出た学校です」というとすぐにわかってくれるので、説明が楽です(笑)。